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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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英雄の決断

 夜、俺はベッドの中で天井を見上げ、ゆっくりと考えた。ユノーの策。それは果たして全てを解決するものなのか。

 疑問は尽きなかったが、場合によっては最高の形で物語を終わらせることができるかもしれない……悩み続け、空が少しずつ白くなりつつある中で、俺はようやく眠りについた。


 で、あくびをかみ殺しつつ朝食をとる。まあ一日くらい寝なくても問題ない体だし、これから何をやるというわけでもないため、支障があるわけではないのだが……俺の様子を見てソフィアは一つ言及する。


「眠れませんでしたか?」

「あんまりな。考え事に熱中していたけど、こうまで寝れなかったのは初めてだな」

「それだけ、検討の余地があるってことね」


 リーゼはサラダを口に運びながら告げる。まあその通りなのだが――


「一日経過したけど、そちらの意見は変わったか?」

「私は変わらないわよ。とはいえユノーの策が、非常に難しいのは私にもわかるから、存分に悩んでくれていいし、私も色々と考えるけれど」

「策を用いたら、もう後戻りはできないからな……魔王との戦いでは、軌道修正はできた。けれど今回の場合、それができない可能性がある……」


 俺は飛び回っているユノーへ視線を移す。


「まさかユノーの提案でここまで悩まされることになるとは」

「あたしだって色々と考えているんだよー」

「そうだな……」

「一両日中に解決せねばならない問題というわけでもあるまい」


 と、領主フォルナが俺へ話し掛けてきた。


「エメナ王女がこの屋敷へ近づいてくる間にも、情勢は変化するはず……それを見て動き方を変える、でいいのではないのか?」

「臨機応変に、というわけだけど……確かにそれでも構わないと思う。でも、ユノーの案を採用する場合、やらなければいけないことも増えるし、可能な限り早期に決定した方がいいとは思う」

「なるほど……最終判断はそちらに任せる。仮に王族を無視する方向性であっても、私はそれに従うから、そのつもりで頼む」

「わかった。ありがとう」


 やがて朝食を終える。自室へ戻り、椅子に座った後腕を組んで考える。

 テーブルの上にはいくつもの資料。最終的に賢者が残した資料はここに集約されており、俺はそれを改めて目を通し始める。特にこれから起こる出来事について……丹念に読み込む。


 幾度か読み返したことで、今後の展開がどういうものなのかは頭の中に叩き込んだ。それをシミュレートして、俺達がどう立ち回るかを検討する……ユノーの提示した策は、エメナ王女の旅路に大きく踏み込むものだ。吉と出るか凶と出るか……そしてソフィア達の発言。さらに星神との戦い……どの選択が良いものなのか、ひたすら思考し続ける。

 それはまさしく、魔王との戦いをどう乗り切るか悩んでいた時のようだった……決定的な違いは、俺自身経験を積んだこと。そして、仲間がいることだ。


「……リスクはある。それに、物語をそのまま進めるわけじゃない」


 呟きながらも、俺の頭は一つの結論に辿り着こうとしていた。小さく息を漏らした後、俺は静かに部屋を出て廊下を歩く。

 その道中でリーゼを発見したので、仲間や領主フォルナを食堂に集めるよう指示を出した。


「決まったのかしら?」

「一応、な」


 返答でリーゼは駆け足となって仲間を呼びに行く。俺は一足先に食堂へ赴き、待つことにする。

 数分もすれば全員が食堂へ集まる。領主フォルナが来た段階で俺はユノーに呼び掛けてガルクとも通信を行い、口を開く。


「……まず、結論から言わせてもらう。俺が最終的に辿り着いたのは……ユノーの案だ」


 その言葉で全員が沈黙し、顔を引き締める。


「このプランは、提示された当初は色々と議論の余地もあったし、問題点も浮かび上がるが……この国のことを思えば、十分に可能性のある案だ。とはいえ、ユノーの考えにそのまま乗っかるというわけじゃない。臨機応変に動けるような形にするべく、色々な場所を駆けずり回る必要性がある」

「星神に関する情報を集めるだけではない、と?」


 ソフィアの疑問に俺は小さく頷いた。


「このプランそのものは、この場にいる全員でやる必要性はない。策が明瞭になるのはエメナ王女がここに辿り着いてから……それまでの間に準備を済ませたいところだ。なおかつ、エメナ王女の反応次第で動き方を変える」

「それまでにやるべきこと、というのは何かしら?」


 疑問はリーゼから。俺は頭の中で言葉を整理した後、


「大まかに二つある。一つ目は王族について。特にリヴィナ王子のことについて。ただ、下手に突っ込むと俺達の存在が露見する危険性があるし、できる限りでいい」

「そこは私に任せてくれ」


 と、フォルナが俺へ告げた。


「王族関係……それについては領主である私が調べられるだろう」

「注意してくれよ。王子一派にマークされたら終わりだぞ」

「わかっている。そこについては慎重にやるさ」

「もし問題が生じたらすぐに連絡をくれ……まあ、これについては必須というわけじゃない。厳しいと判断したら即座に撤退も視野に入れてくれ」

「わかった……そして二つ目は?」

「これは俺達がやらなければならないこと……星神に関する研究だ。バールクス王国でやっている研究内容に加え、こちらでも可能な限り情報を集める。賢者の情報を手に入れたため、必要性は薄いと感じる人はいるかもしれないが……星神を打倒する上で、情報は少しでも多く持っておいた方がいい」

『そこは我も賛成だ』


 ガルクが述べる。うん、それなら――


「二つのことを、エメナ王女がこの屋敷を訪れるまでに可能な限り進める。カティなんかはこの屋敷で星神の調査を。カティが頭に叩き込んでいる情報を用いれば、ここに眠る星神の情報についても価値を持つかもしれない」

「ええ、わかったわ」

「そして残るメンバーは、外に出て調査だな……遺跡内を調査するとか、あるいは王子のことを調べるとか、とにかく足で稼ぐ。覚悟はしておいてくれ」


 ソフィアやリーゼ、そしてフィリも重々しく頷いた。やる気は十分といったところ。

 正直、どうなるかわからない……だが、それでも――様々な思惑を胸に秘める中、俺は仲間達に号令を掛け、一斉に行動を開始した。


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