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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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救うに足る人物

 ――作戦会議を行った夜、俺は屋敷の上階から空を見上げた。周囲が真っ暗であるためかずいぶんと星が綺麗であり、見続けても飽きることがなかった。

 俺は頭の中で会議の内容を思い返していると、ノックの音がした。返事をしながら扉へ近づき開けると、ソフィアの姿があった。


「どうした?」

「今後のことで少し、お話が」


 俺は彼女を中へ通す。そこでソフィアは窓が開いていることを察し、


「外の景色を?」

「より正確に言えば、夜空を見ていた。今後どうするべきか……それを再検討する前に、一度頭の中をリフレッシュしようと思ってさ」


 ――会議については、文字通り紛糾した。ユノーが提示した案は、俺達にとって良い案……いや、光明を見出すことができるものであることは間違いなかった。

 だが、非常にリスクが大きいものでもある……事が上手く進めば、間違いなく有効な手段。半年という時間を稼ぐことはできるし、なおかつこの国の問題を完全とはいかないが、解決することができる。だが、もし失敗すれば――


「ルオン様は、どうお考えですか?」


 ソフィアが尋ねてくる。そこで俺は、


「ユノーが提示した策は、確かにシンプルでなおかつ効果的なものだと思う……が、それは今まで試してこなかったものだ。正直、ちゃんと最後まで策が成り立つのか……それは気掛かりだし、大変なことだとは思う」


 ソフィアは頷く。彼女もまた困難な道であることは把握しているようだ。

 ユノーの提案は、王族の問題を解決するためのもの。とはいえそれをやる以上、俺達が色々と介入をすることになる。その仮定で失敗すれば、半年という時間を失う可能性があるし、なおかつ根本的に王族の問題が解決するかどうかもわからない。


「大きな賭けではあるよな」

「はい、間違いなく」

「その上で、ソフィアは可能な限り介入したい……と、会議では語っていた」


 彼女は頷く――会議において、その策を用いるか否か。賛同したのはソフィアと領主フォルナ。さらにリーゼという面々。つまり王族と少なからず関わりのあった人物だ。

 今後のことを考えるのであれば、ソフィア達が賛成するのは頷ける……逆に難色を示したのはカティとフィリ。特にカティは反対とまではいかないが、


「やろうとするならかなり大変よ。確かに半年という期間については保証されるかもしれない。でも、この策に注力する必要性が出てくるかもしれない」


 王族と関わるのであれば、当然そちらへ意識を向ける必要性が出てくる。よって、時間が保証されても俺達が星神に対抗するために技術を練るための時間が出てくるのか……カティはそう主張したいようだった。

 これは俺も同じ事を思った。もし王族の問題を放置した場合、俺達はすぐさまバールクス王国へ戻ってその期間様々な技術を生み出すことができるだろう。あるいは、この大陸に留まって星神について有益な情報を得たり、あるいはここでしか得られない技術を入手することができるかもしれない。


 けれどユノーの提案を採用した場合、その時間がとれない可能性が出てくる。ちなみにガルクへどうかと尋ねてところ、


『微妙なところではあるな。無論、星神のことを思えば王族同士の戦いは放置するに限る』


 そう前置きをしたのだが、


『とはいえ、だ。厳密に言えばルオン殿達が関わっている以上、このまま放置でも未来が変わってしまう可能性がある。そうであればむしろ、天使ユノーの提案は効果的かもしれん』


 否定しないんだなと内心思っていると、ガルクはそんな心の内を読んだのか、さらに言及した。


『どのような選択をしたとしても、我らはそれに従うだけの話だ。期間が短くなることを念頭に入れて……そもそも我らは、半年という期限など考慮に入れず、可能な限り早く星神との決戦に挑むために準備を進めていた。情報も得て、ある程度目処も立っている。そこから考えれば、仮に短くなったとしても、決戦の準備ができる可能性はある』


 心強いガルクの言葉……とはいえ、決戦準備を確固たるものとするためには、やはり時間は必要だろう。

 どのような選択を取るにしても、ガルク達は従うつもりでいることは間違いない。だから残る問題は俺達が踏ん切りつくかどうかだ。


「……そもそも」


 と、ソフィアは俺へ口を開く。


「この国にとって望ましいのはどの選択肢でしょうか?」

「……リヴィナ王子が王様になることは、良くないと?」

「何かしら思惑があり、親族に危害を加えようとする……殺めようとしているのかはわかりませんが、害を及ぼそうとしているのは確かである以上、リヴィナ王子は良くないものを抱えているのは事実です」


 まあそうだな……仮に王子を助けるにしても、そこについては引っ掛かってしまう。


「こういう言い方はあまり好きではありませんが……リヴィナ王子が、救うに足る人物なのか」

「そこについては、仮にユノーの策を採用した場合はある程度明確になる……いや、そうだな。もし王子を助けることができたのなら、更生の余地もある」


 とは言うものの、妹のエメナ王女と和解できるのかは不明だけど……悩んでいると、ソフィアは俺へ尋ねた。


「ルオン様は、どのようにお考えですか?」


 再度の問い掛け――会議の際、俺は中立の立場を取った。というか、最終的判断は俺に委ねられた。

 賢者の知識を得ていることもそうだし、何より魔王との戦いで経験もあるから……加え、ソフィア達では親交があったことで肩入れしてしまう。組織の長というのもあるし、俺がどうすべきなのかを決断しなければならない。


 時間があるにはある。明日決断せずとも、少なくともここにエメナ王女が来る時までに、結論を出しても遅くはない……のだが、星神との決戦に際し、半年という期間が短くなるのを考慮すれば、決めるのは早い方がいい。それこそ、明日にでも。


「……一晩、考えてみるよ」


 俺の言葉にソフィアは黙って頷いた。その顔は、どのような決断であっても受け入れるという、従士としての面が確かに覗いていた。


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