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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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天使の提案

「まとめると、俺達が取れる選択肢は大きく分けて三つ……一つ目はリーベイト聖王国の事件にこれ以上干渉するのを避け、賢者の未来通りに事を進めていく」


 俺は仲間達とフォルナへ語り出す……これ以上と言及したのは、現時点でエメナ王女とも親交を深めた以上、完全に関係性をゼロにはできないためである。


「このまま俺達が何もしなければ、おそらく資料で読んだ展開通りに進む……ただし、その場合は当然ながらリヴィナ王子のことを含め、王族達のことは放置することになる」

「私個人としては、あまりよろしくない選択肢だな」


 と、領主フォルナが呟く。こちらが視線を移すと彼女は手を小さく振り、


「もっとも、私が選択を示す立場にはない……王子達のことは残念ではあるが、星神との戦いに必要ならばやむなしというやつだな。実際、ルオン殿は魔王との戦いでそういった選択を幾度も行った」

「そうだな……理想としては、王子のことも救って星神のことも救う……のが、もっとも望ましい。けれど、何もかもハッピーエンドというのは、おそらく無理だ」


 情報があり、仲間達もいるわけだが……全て理想的な展開に、というのはやはり厳しいのが実情。


「これについて、何か意見はあるか?」

「一つ疑問なのだけれど」


 ここでリーゼが手を上げ、俺へ尋ねてくる。


「リヴィナ王子のことは、救えるのかしら? そもそも、救うという定義は何?」

「……現在時点で王子はエメナ王女に干渉してしまっている。そもそも実の妹に危害を加えようとするという時点で、それが露見すれば何かしらの沙汰があるだろう。よって救うというのは、可能な限り悲惨な末路を迎えないように……といったところかな」

「難しいわね」

「リーゼの言う通り、定義については一考の余地がある。そもそも定義が曖昧だからな……どう頑張っても王子の罪を拭い去ることはできない以上、俺達が可能な限りフォローしたとしても……良い結末にはしがたい、かな」


 今から罪を犯すというのならまだしも、現時点で王子は行動に移してしまっているからな……その部分を解決しない限り、どうしてもモヤモヤしたものが残る。


「そもそも、リヴィナ王子はどの程度殺意があるのかしら」


 リーゼがさらに言及。ふむ、そこについては――


「心情的なものについては、賢者の予知でもわかっていないんだよな……俺が把握している物語なんかではその辺りが克明になっていた部分もあるんだけど、今回はそういうわけじゃない」


 たぶん、心理的な描写が少ない……というより、王子なんかは本心をあまり語らず行動に移しているといった感じだろうか?


「真意を質してみるのも一つ効果的かもしれないけど、その場合は俺達が詰問するっていうのはいくらなんでも無茶だから、エメナ王女に頼ることになるぞ」

「その場合、エメナ王女に私達のことも説明する必要性がある、というわけですね」


 ソフィアの言及。俺はそれに小さく頷いた。


「それは、二つ目の選択肢だな。王女に全てを話し、協力してもらう。その流れでリヴィナ王子のことも……というのはさすがに無茶かな」

「でも、王子のことも考えるのならば、それが一番ベターな選択肢かもしれないわね」


 リーゼはそう述べると口元に手を当てる。


「ここに王女が来るのであれば、全てを話して行動する……ただ、こうなってしまう場合、王子のことはなんとかなるにしても、星神がどういう風になるのかわからなくなるわね」

「そうだな。半年という猶予が短くなるかもしれない……現段階で情報を得て急ピッチで作業を進めてはいるけれど、間に合うのかどうか……とにかく時間は可能な限り欲しい。星神のことを考えれば、リスクのある選択だ」

「三つ目は何?」


 カティが尋ねる。俺はそこで小さく肩をすくめ、


「三つ目は、俺達が出て全ての事件に対処する」

「私達の力を用いて、ということかしら」

「ああ、そうだ。エメナ王女が王子を糾弾する証拠を手に入れるのであれば、それを利用する。王女と共に王都へと入り込み、国王と直接話をする。全ての事情を説明し、対処をお願いする……ただ、リヴィナ王子の行動は王族に反旗を翻すものだ。よって、王子にとって良い選択かどうかと言われると微妙だな」

「国王としても、妹を狙った咎から継承権を剥奪する可能性があるわね」


 カティの言葉にソフィアやリーゼは頷いた。うん、これでは何もしない時と変わらないのでは。


「現状、王族か星神か……二者択一のような形になっているな。これは仕方がないわけだが……俺達が干渉すれば、十中八九星神の動き方も変わるからな。今はまだ最小限の動きだからなんとかなっているけど、今以上に行動すればどうなるかわからない」

「ルオン様、現状でも危ないのでしょうか?」

「どうだろうな……影響はあるとは思う。他大陸のVIPが会談を行ったんだからな。とはいえ、それは現時点で星神とは何の関係性もない……少なくとも今回の事件首謀者はそんな風に思っている。よって、影響そのものは軽微だと思うけど、これ以上の干渉はその限りじゃない」


 全員が唸り始める。この場にいる面々で頭を悩ませているわけだが、良い解答というのはやっぱり思いつかないか。

 こればっかりは、悩みに悩むしかないな……幸いながら余裕はある。星神への対抗策はバールクス王国側に任せればいいし、エメナ王女がここへ来るまでにはまだ時間を要する。よって、俺達はここに王女が来るまでに結論を出さなければならない。


「ねえルオン」


 ここで、周囲を漂っていたユノーが言及する。


「あたし達はひとまずこの大陸からは出ないの?」

「……王女王子の戦いの結末くらいは見ないといけないだろ。それに、最終決戦の地がここであるなら、現地入りしている俺達で何かしら準備の必要性があるかもしれないし」

「そっか」

「何か浮かんだのか?」

「いや、浮かんだってわけじゃないけど……どうするか迷ってしまうのはわかるよ。でも、シンプルで良いと思うんだよね」

「シンプルで? どういうことだ?」


 問い掛けに対しユノーは小さく笑みを浮かべ、


「つまりさ、全てを解決するために……都合の良いやり方が一つだけ存在するってことだよ――」


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