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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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何を優先すべきか

 賢者が残した資料については、割とあっさりと見つかった。賢者の血筋……つまりソフィアが近づけば反応するようになっており、書斎の奥にひっそりと置かれているのを発見した。


「木の葉を隠すのは森の中、だな」

「うむ、まさしく」


 俺の言葉にフォルナは深々と頷く。そんな様子を見てこちらは、


「……書斎に何が置いてあるかとか、把握していないのか?」

「さすがに全部は。何か一つ二つ増えていてもさすがに気付かないな」

「そうか……ま、仕方のないことだけど」


 訪れた書斎は、広くさらに本棚には資料が押し込まれている。これが全て星神に関連する資料だというのは、領主フォルナの研究がどれほど深いものだったのか物語っている。


「これらの資料に興味はあるけど……まずは賢者の残した資料を精査だな」

「うむ、私はまだ目を通さない方が良いだろう」

「ああ。誰が読む?」


 目線は総じて俺へ。ソフィアでも良さそうだが、彼女は首を左右に振った。


「今回の旅路は、ルオン様が主体なので」

「そうか? まあ、ソフィアがそれでいいなら俺が調べるよ。とはいえ」


 俺はソフィアから資料を渡される。結構な量があって、一通り目を通すだけで一日費やしそうな勢いだ。

 例えばこれが小説とかならスムーズに読めそうだが、情報の内容について吟味だってする必要性があるので、かなり大変そうだ。俺はフォルナへ視線を移し、


「時間が必要だな」

「寝泊まりしてもらって構わないと先ほど言ったからな。私としても興味があるし、ゆっくりやってくれればいい」


 ……少なくとも半年以上は猶予がある状況だが、対策を講じるにはさっさと資料を読む必要がある。俺はひとまずすぐにでも始めるとして、フォルナへ客室へ案内するように告げた。






 そこからは――ひたすら資料とにらめっこを開始する。最初、俺一人で読んでいたのだが、専門的な部分も出始めたので、結局カティやソフィアと手分けして調べることになった。ただ役割を持たせ、俺は今後エメナ王女に何が起こるのか……つまり、物語がどのように推移していくのかを調べる。一方でカティは星神について。ソフィアはそれの補助といった感じだ。

 俺がエメナ王女のことを調べることになったのは、ひとえに経験からだ。俺は前世の記憶……ゲーム知識によりこの世界と向かい合った。その経験により、今回の戦いも立ち回れるように段取りを組める……そういう風に仲間は認識したようだ。


 俺としてはどこまでやれるのかわからないけれど、とにかく全力は尽くす……というわけで資料を読み進める。


「カティ、ソフィア。そっちはどうだ?」


 紙に情報をとりまとめている時、ふいに尋ねてみた。すると、


「かなり大変ね。とはいえ、星神のかなり詳しい部分まで記載されている……私達が求めていた情報であるのは間違いないわ」

「この情報を、素早くバールクス王国へ伝えなければいけませんね」


 ソフィアの言葉。俺は頷き、


「通信するか? ガルクと」

「まだ待って欲しいわね。物質を転送させるなんて無茶は無理でしょう? この資料は早急に送るとしても、時間差が生じる。だから重要な情報を選別して、神霊様に伝えるとするわ」


 彼女なら、何が必要なのかわかるから、問題はなさそうだな。


「わかった。頼むよ」

「ルオン様はどうですか?」

「んー、そうだな……現時点でエメナ王女の動向を観察しているシルヴィとラディから異変の連絡はない。ひとまず旅は順調だな」


 現状、賢者が見た未来通り……つまり物語通りに事が進んでいるのかは、賢者からもらった資料で逐次確認することができる。もし差違が生じたら、警戒してどう動くか考慮すればいいな。


「これから王女には苦難が待っている……が、彼女を助ける面子も中々だし、問題はないさ」


 そう言いながら、俺は資料をひたすら読み込んでいく……と、


「へえ、これは……」

「どうしましたか?」


 ソフィアからの言葉に、俺は答えようとして、


「……いや、こちらもまとまったら話をするってことにしよう」

「わかりました……今回はルオン様だけでなく、私達も協力して既知の未来とどう関わっていくかを考えるわけですね」

「そういうことになるな」


 今まで俺の情報を活用して、旅は続けていた。ロミルダのこととか、あるいはデヴァルスとのこととか。ただ、何もかもシナリオ通りの状況下であーだこーだするというのは、魔王との戦い以来かもしれない。

 以前は頼れる人間が誰にもいなかったし、そもそも誰かに話すのはまずい状況だった。とはいえ今は仲間もいる。何かあったとしてもカバーはできる……と思う。まあ政治的な要素が絡んでしまったら大層面倒なことになるので、注意すべきことはそこだな。


「ソフィア、一つ確認だが」

「はい」

「会談によって、バールクス王国とリーベイト聖王国は良好な関係を築くことになりそうだ。でも、俺達がここにいると露見すれば、下手するとそれが瓦解する。資料を読む限り、首謀者はかなり厄介な相手だ。俺達の存在を認識した瞬間、色々と面倒なことになるのは間違いない」

「はい、仰る通りですね」

「その上であえて質問する……もし、俺達が出る必要性があった場合……どうする?」

「難しいですね。どういう状況下で私達が表舞台に上がる必要性があるのか……」


 ソフィアとしても判断に迷うか。政治的な要素が関わってくる現状は、魔王との戦いになかった部分だ。なおかつ、俺達が暴れて事件を解決すれば、星神の降臨が早まるかもしれない。しかし、このまま放置しておけば、王子二人が失墜するという悲しい結末になる。

 この全てを一挙に解決する手立てというのは、さすがにないだろう。俺達は選ばなければならない。何を優先すべきか……もちろん一番は星神のことだが――


「ルオン」

 ここで、カティが呼び掛けた。

「焦らないの。資料を読んで、頭の中でこねくり回して、後は眠って一日置きましょ? それで頭の中も整理されて、案だって浮かぶわよ」

「……そうかもしれないな」


 頭をかきつつ、俺は資料を向き合う。まずは今日中に内容を全て把握する。その上で仲間と相談し、どう動くかを決める。

 俺はこの物語を、上手く解決に導くことができるのか……厳しい表情を伴いながら、ひたすら資料を読み進めていった――


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