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賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

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彼女の成長

 俺とシルヴィ。さらにイーレイとラディが見守る中、ソフィアとネストルは対峙する。

 双方の武器は木剣でネストルは盾を所持していない。両者は双方とも構え、相手の出方を窺っている。


 上背など体格面だけを見ればソフィアは圧倒的に不利なわけだが、果たしてどう戦うのか。

 俺はイーレイを見る。どういう結末を迎えるのか大層興味深そうな感じであり……考える間に、彼女が「始め」と宣言。戦いが始まった。


 先手はネストル。体格もあって歩幅も大きく、さらにリーチの長さからソフィアの間合いの外から攻撃することができる。

 だが彼女は一切動じず、僅かに身を傾けて攻撃を避け、すぐさま懐へ飛び込もうと動いた。直後ネストルは――半歩後退しソフィアの攻撃に備えようとした。


 だがソフィアは構わず突き進む。同時に彼女の魂胆が理解できた。これは間違いなく『清流一閃』を放とうとしている。

 訓練の成果なのか、ネストルへ仕掛ける動きが以前よりも鋭く見えた。それに加え、おそらくシルヴィとの訓練でこの技自体の練度を高めたのだろう――攻撃の結果、ネストルが防御を行う前に剣戟が決まった。


「っ……!」


 模擬戦闘であるためか、ネストルは攻撃を受けはしたがダメージはほとんどない様子。とはいえその顔は驚愕に染まり、その実力が相当なものだと認識したに違いない。

 『清流一閃』の効果によって、ソフィアはネストルの背後に回る。即座に反転し追撃の構えを見せたが――さすがにネストルも動き、反撃に転じようとする。


 双方の剣戟が激突。木刀特有の甲高い音が耳に入り……ネストルが打ち払うと、素早く攻撃を行った。

 その動きはおそらく『ブラストカウンター』だ……相手が魔物であれば確実に命中していた攻撃だったが、ソフィアはそれを紙一重のところで防いだ。


「へえ……」


 感嘆の声がラディから漏れる。今のを防ぐとは――そういう声が聞こえてきそうだ。

 ソフィアは一度距離を置き、剣を構え直す。一方のネストルは足を前に踏み出そうとしたが、何を思ったか中断した。


「……ネストル、勝つには二つ決めないとな」


 そこでイーレイが発言。ソフィアが『清流一閃』を綺麗に決めたことにより一本、と言いたいのだろう。だから勝つには二回攻撃を当てないと――


 ネストルは小さく息をついた後、ソフィアに尋ねた。


「……あんた、この町の戦士じゃないよな?」


 ソフィアは頷く。するとネストルはなおも質問を続ける。


「動きがなんとなく騎士のそれに近いような気がするんだが……正解か?」

「はい、そうですね」

「打ち合ってわかったと思うが、相当手強いだろ?」


 シルヴィが我が事のように語り出した。


「訓練を開始して数日だが、ボクの動きにも十二分に対応できるようになった」

「そうか……戦士としても結構な位置にいるのかもしれねえな」


 どこか称賛するような雰囲気……すると彼はソフィアに対し、前傾姿勢となった。

 突撃を仕掛けるか――考えた矢先、彼が動く。一歩で間合いを詰め、体重を乗せた強力な一撃を見舞う。


 それに、ソフィアは立ち止まりながらも魔力を発し対抗する。それと共に放ったのは横薙ぎ――これは間違いなく『ベリアルスラッシュ』だ。訓練前習得していなかったはずだが、シルヴィと共に訓練を行った結果、習得したというわけか。


 またも双方の剣がぶつかり合う。突撃を行うネストルに対し、ソフィアが中級技で押し返そうとする形だが……結果、ソフィアの剣はネストルを弾き飛ばすようなことにはならなかったが、勢いを殺すことに成功し、彼の進撃が止まった。


「なるほど、今のを押し留めるか」


 イーレイが呟くのを耳にする。それと同時にネストルは後退を選択。俺はソフィアが追撃するかなと一瞬考えたが、さすがにそこまではしなかった。

 現状、ソフィアがネストルの攻撃を全て防いでいる……ラディと共にいたネストルだってレベルは決して低くないはずだ。それにもかかわらずソフィアが対抗できているのは、訓練により魔力制御が相当良くなったからだろうか。


 考える間に今度はソフィアが仕掛ける。しかしネストルも彼女の剣戟を受け流し、反撃の糸口を見つけようとする。ゲーム上で防御面に優れていた事実があるためなのか、守勢に回るとソフィアも攻撃を当てられない。

 だが、彼女は一度攻撃を決めているため、ネストルとしては仕掛けたいはずだが……彼はさらに後退。結果、双方が相手の出方を窺うような状況となり――


「――ここまでにしておこうか」


 イーレイが口を開き、ソフィア達は肩の力を抜いた。


「ふむ、ネストル。町にいた時と比べてずいぶんと強くなっているな」

「だが、ソフィアには負けたな」


 シルヴィが追撃の言葉。それにネストルは肩をすくめつつ、


「俺もまだまだ精進が足らんようだな」

「ボクもうかうかしていられないだろうな」


 と、シルヴィは語ると、ニヤつきながら彼に言う。


「今のところ、ボクはソフィアよりも剣技は上なんだが……とすると、ソフィアに勝てないネストルは、ボクよりも下ってことかな?」

「言ってろよ……イーレイさん、急に訪ねて申し訳なかった」

「構わないさ。いつでも来るといい……それと、ソフィア」


 イーレイは名を呼び話し始める。


「訓練前と比べても、ずいぶんよくなっているのは間違いない」

「ボクとしては、この短期間でここまで成長するとは思わなかったよ」


 シルヴィが感想を漏らす……彼女が驚くほどのものなので、ゲームのようにステータスが少々上昇する以上の成果を得たのは間違いなさそうだ。


「私がやったのは、あくまできっかけだよ」


 イーレイがシルヴィの言葉に応じる風に言う。


「ソフィアさんは元々、剣術の基礎がしっかりできていた。私はその上手い使い方をアドバイスしただけさ……で、ルオン」

「はい」

「訓練は七日と言ったはずだな」

「それが短縮されますか?」

「いや、変更はなしだ。元々予定していたことよりもさらに色々と教えることもできそうだ」

「なら、お願いします」


 今後五大魔族と戦う以上、少しでも強くなった方がいいからな……考える間に、イーレイはさらに言う。


「ただここで、一度実戦をこなしてもらいたいと思っている」

「実戦?」

「ルオン達の目的は魔物や悪魔だろう? 訓練の成果がそうした存在を相手にしてどういう結果をもたらすのかは、実際に戦ってみないとわからない。一度実戦を通し、反省点や改善点を洗い出し、そこから対悪魔や対魔物に有効な戦い方に修正していく」


 なるほど……しかし、ガーナイゼ周辺に今のソフィアに応じれる魔物がいる場所というのはあっただろうか。


「あ、それなら一つ話があるんだけど」


 と、ここで唐突にラディが俺へ話し掛けてきた。


「……どこか心当たりがあるのか?」

「まあね。実はガーナイゼを訪れたのは、魔物が住むと言われているとある場所へ行こうとする意味合いもあるんだ」

「率先して行くということは、お宝でも眠っているのか?」

「あくまで俺にとって価値のある場所だけど」


 ラディにとって……首を傾げると、彼はさらに述べる。


「そこは魔法使いが暮らす場所……だったんだけど、半年以上前から姿が見えず、さらに魔物が住みついた。魔法使いは死んだのか、それとも魔族なんかが奪い取ったのか……どちらにせよ、元々の魔法使いがいない以上、その場所は立派なダンジョンだ。もしかすると魔法使いとして強化できる物があるんじゃないか……そんな風に思ったんだよ」


 ――ここで俺は思う。ネストルやラディとかかわった……そしてこの提案。きっと二人とはしばらくの間、共に行動することになるのではないか、と。


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[一言] うわっ!ぉぅι“ょつええ〜
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