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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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主との会話

 指定された宿屋は高級な立地と佇まいであり、滞在費はかなりのものになるだろうとかなんとなく考えつつ、中へ入った。受付でエイミの名を出すと、すぐに応対してくれた。事前に俺達のことは言ってあったのだろう。

 五分ほどして、エイミはラウンジへとやって来た。俺達を見て彼女は笑みを浮かべ、


「話を聞いてはくれるようね」

「結論としては……けど、問題が色々あります」

「ああ、それなら予想がつくわ。ここで調べ物をする時間を奪われる、でしょう?」


 さすがに推測はできるか。


「ただ、こちらとしては首を傾げるのだけれど……私の主から話を聞いてここへ舞い戻る、では駄目なの?」

「事情があって、ある程度期限が存在するので」

「期限、ねえ……調査そのものが誰かからの依頼で、期限を設けられているとか?」

「詳しく語ることはできないですが……込み入った話になるので。あまり部外者に話したくはないのもあります」

「なるほど……こちらは詮索するつもりはないから安心して」

「で、そういう事情があるため、確認を。ここへどの程度の日数で戻ることができるのか」

「うーん……片道、十日ほどなのよねえ」


 十日。それが長いのか短いのかは微妙なラインではあるのだが……決して、俺達にとって余裕というわけでもない。

 間違いなくエメナ王女の物語は始まっている。往復で二十日もすればかなり事態は進展していることだろう。目の前の女性の主から得られる情報が欲しているものでなければ、俺達は相当な時間ロスという形になる。


 楽観的な見方をすれば、エメナ王女が霊峰へと訪れる旅路は結構時間を要していた。帰りもまた同じ日数必要だとすれば、それなりに時間が掛かる……かもしれない。問題はエメナ王女の旅路の目的地が王都へ舞い戻ることなのかどうか。もしそういうことではなく、リヴィナ王子との決戦がまったく違うところで行われるとしたら……この日数は致命的になるかもしれない。


「私としては、かなり長いように思えます」


 ソフィアからの提言。俺はそれに頷き、


「エイミさん、俺達は是非とも話を聞きたいが、さすがにそれを行うには時間が少ない」

「なるほど……切羽詰まっているということかしら。具体的にどれくらいまでに調査を終えなければならないのかしら?」

「具体的な日時も不明だけど……そうだな、たとえ話になってしまうけれど、俺達の依頼主はよく不在で、もし俺達が訪ねたときにいなかったら、期日は先延ばしになる。けど、予定の日数には到達しているから、町で待機するほかなくなる……そんな感じだ」

「ふむ、難しいわね……あ、それなら主と直接連絡をしてみる? 主のお眼鏡に適った相手であるなら、魔法による通話越しにでも情報が得られるかもしれないわ」


 それが一番よさそうだな……俺は承諾し、エイミはそこで俺達を部屋へと案内する。

 階段を数度上って辿り着いた一室は、高級感溢れるところだった。ずいぶんと贅沢だなと思っていると、エイミはベッドの傍らに置いてある水晶球のようなものを手に取る。


「……客人が現われました。そして」


 どうやら話を始めているらしい。後はこれが上手くいくことを祈るしかない。

 三分ほど経過した後、エイミは俺達へ振り向いた。


「話をすると。ただ、一つ条件が……私が見つけたルオンさん以外は、私を含め退席して欲しいと」


 ……警戒しているな。どういう理由があるのかわからないけど、まあ会話をするくらいならば問題はないだろう。

 ソフィア達へ目配せすると、彼女は頷き仲間と一緒に退室する。エイミも俺へ水晶球を渡し、


「これをかざせば会話できるわ」


 そう言い残して部屋の外へ。唯一の俺だけが部屋の中に。

 俺は一度深呼吸をして、水晶球へ話し掛ける。


「……どうも」

『ああ、よろしく。君がエイミの見つけた他大陸からの来訪者か』


 ――声は、男性とも女性とも判別がつかない。中性的であり、相手のイメージとかも想像しにくい。


『まず、人払いをしたのは一応警戒してのことだ。事情を知らない人間が聞けば荒唐無稽であるため……エイミが見定めた相手ならば、これから話す内容も理解はしているだろうから、良いと判断した』

「そうですか……」

『ああ、口調は普段のもので構わないよ。あ、それと自己紹介をしなければならないか。私の名はフォルナ。フォルナ=ジェーレイだ』

「フォルナさんか……いきなり核心を突く質問で悪いが、エイミさんが語った内容……今ここで具体的に話せるのか?」

『できることなら、私の屋敷に招いてしかるべき形で、というのがいい。というより、そうしなければ理解できない部分も多いだろうからな』

「……もしエイミさんが語った内容で情報を持っているとしたら、俺達が望むものをあなたが所持している可能性は高い。けれど百パーセントじゃない。よってトルバスで調査は継続したいが……」

『人員はそう多くないのか?』

「専門的な知識を有する人間は、俺を含めて三人だ」

『それではトルバスで調べるにも大変だろう……確かにそのくらいの人数で、というのなら私と調査両方とるではなく、二者択一になるのも理解できる』

「あなたの話についても専門的な分野になるだろう。なら三人全員そちらで話をすることが必要だと思うが……かといって、調査は継続しないと間に合わない可能性が高い」

『間に合わない、か……』


 沈黙が生じる。もし可能であればここで喋ってくれるとありがたいけど、さすがにそういう感じではなさそうだ。

 相手の屋敷へ行かなければならない、ということはあっちに何かがあるということなのか? それが星神に関する資料とかならありがたいけど、もしそういうのがあればいの一番にフォルナは告げているだろう。さて、どういう反応をするのか。


『……ふむ、そうだな。確認だが、そちらが欲する情報の詳細は教えてもらえるのか?』

「悪いがそれも……あなたを疑っているわけじゃないが、下手するとあなたに伝えることでまずい状況になり得るかもしれない」

『警戒を要するということか……わかった、いいだろう』


 そんな風に答えたフォルナ。俺に対しどう意見するのか……沈黙していると、相手の声が水晶球から聞こえた。


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