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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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自由都市

 情報収集のために町を一泊して、そこから先はひたすら移動に邁進することとなった……その結果、強引に森の中を突っ切るようなこともあった。

 その道中で魔物にも遭遇したのだが……今の俺達ならば相手にならないレベル。さすがにこの場所で俺達を苦戦させるような存在が現われるとは思えないし……戦闘面については問題ないと言って良いだろう。


 そんな風にかなり強引に移動を重ねた結果、予定よりも数日早く自由都市トルバスへと辿り着いた。まだエメナ王女は霊峰に辿り着いておらず、物語が始まるより前に目的地へ赴いたことになる。

 その外観だが……一言で表すと、城塞都市といったところか。まず町そのものが小高い山の上にでも建設されたのか、街道から坂を結構上がることで門が存在する。城壁に囲まれていることはリーベイト聖王国の王都と同じではあるのだが、こちらはより城壁が高く、侵略者からの攻撃を防ぐために、より強固なものとなっている。


 山の上かつ、巨大な城壁……この二つによって、町というよりは要塞に見えるくらいだ。威圧感は相当なもので、この場所が自分達の手で自治を守ってきたという証と、また同時にこれからも守っていくという強い自負を感じることができた。


「壮観ね」


 俺と同じような感想を抱いたか、カティが小さく呟いた。


「ああいう砦のような外観の町はシェルジア大陸にも存在はしているけれど……ここはそうした場所と遜色のないくらい、力強いわね」

「覚悟みたいなものを感じないか?」


 俺の言葉にカティは即座に頷き、


「そうね……町を自分達の手で守っていくという決意は、なんとなく察することができるわね」

「いまだに聖王国から侵略されるなどと、考えているのでしょうか」


 フィリからの言葉。口を突いて出たという感じの質問だった。


「……トルバスの上層部がどんな風に考えているのかはわからない」


 と、俺はフィリへと返答する。


「ただまあ、常に警戒はしているんだろ。平和がすぐに脅かされるなんてことはないだろうけど……それは戦争で、という決着方法だけではないかもしれないな」

「政治的に、ってことですか」

「そういうこと……そんなやり方だったら城壁なんて意味を成さないかもしれないが、あの佇まいは自分達の考えを何も言わずに主張しているというのは間違いないだろうな」

「……もし、トルバスの政治部分と関わるようなら、厄介な話になるでしょうね」


 リーゼはやれやれといった様子で城塞を眺める。


「けれど今回はあくまで情報を集めること……そういう展開にならなそうなのが幸いね」

「さすがに連続で交渉はキツイか?」

「時間が掛かるし、何より常に集中しなければならないからね……私はどちらかというと脇役の立ち位置だったから、まだいいけれど……ソフィアなんかはよく根を上げなかったわね」

「これから必要なことなのだと、考えていましたし……覚悟を決めていたのが良かったのかもしれません」


 俺の目には見えない部分で、かなり心労が重なったというわけだ。政治的な領域に俺はまだ足を踏み入れてはいないけれど……今後、それに関わることだってあるだろう。ソフィアと共にいるのであれば、それは必定だ。

 星神との戦いが続く限り、そういったことはまだないかもしれないけれど……今のうちに、しっかりと覚悟をしていた方がいいだろうな。


「で、だ」


 俺は話を戻すべく、ソフィア達へ声を掛ける。


「エメナ王女が霊峰に足を踏み入れていない段階で辿り着いたのは良かった。ここまで頑張って進んできた甲斐があったというところだが……さすがに今日から本格的に調査はきつい、かな」

「そうですね」


 苦笑しながらソフィアが応じる。疲労も溜まっているし、今日から調査開始……というのは、さすがに辛い。


「ただ、明日から即座に情報を得るため動けるよう準備はしておかないと」


 資料はたぶん図書館とかにあるんだろうけど、すぐに調べられるような形にしておきたい。図書館の場所という基本的なところから、資料がどこにあるのかとか、当たりをつけるくらいはやっておきたいところ。


「よし、俺とソフィア、カティ……その三人で資料のありかを探しておく。リーゼとフィリの二人は、宿の方を頼むよ」

「わかりました」

「滞在期間を考慮して、選ぶべきよね?」

「正直どの程度滞在するのかわからないし、その辺りは深く考えなくてもいいさ……長い間ここにいるとなれば、仕事の一つや二つくらいはしなければいけないだろうけど、その時はその時だな」


 ――ここへ来るまでに冒険者ギルドなどの登録はしておいた。役割はシェルジア大陸の組織とほぼ同じで、魔物退治などを始めとした仕事の斡旋を行っている。

 森の中を突っ切る際に討伐した魔物の中には、ギルド側が指名手配していた個体も存在していた。そうした魔物を討伐したことによって得られる報奨金なども、滞在費の足しにできる……とりあえず、宿を追い出されるようなことにならないための方策はあるので、生活面の心配はいらない、と思う。


 俺達はゆっくりと歩き始める。それなりに勾配のある坂を進み続けて城門へと到達。多数の商人などが通行証を掲示して入って行く。

 俺達はというと――手配していた魔物を討伐したということで、あっさりとギルドから通行証が発行されている。もしそれがなくとも手続きさえすれば入れるので、煩雑さがなくなるくらいなのだが……余計な時間を使うのは良くないからな。入口を簡単に抜けることができるのは良い。


 俺が代表して通行証を提示。旅の目的などを簡単に説明すると、あっさりと兵士は通してくれた。フレンドリーな対応であり、あの調子だと怪しんでいる雰囲気もなさそう。

 都市の佇まいは重厚だけど、平和だし戦争なんてないのがわかっているから、働く門番なんかも警戒心がないのだろう……ここでふと、俺はエメナ王女の旅路でここを訪れる可能性があるのか考慮してみる。霊峰から王都へ直線的に進む場合はまったくここへ立ち寄る必要がないのだが、紆余曲折あって何かを求めてここを訪れる……あり得なくはない、かな。


 その辺りのことも考えながら活動していくべきかな、などと胸中で思いながら、俺達は自由都市トルバスへと足を踏み入れた。


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