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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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平和と繁栄

 馬車の移動により、夕刻前に宿泊する予定の町まで辿り着いた。そこで各自情報収集を行う。俺だけは地図などと照らし合わせてより詳細な旅の計画を立てる。明日から街道を進めば自由都市トルバスへ到着とほぼ同時にエメナ王女が霊峰へと辿り着くくらいか……可能な限り、移動速度を上げるべきだろうか?


 ただまあ、さすがに物語が始まって一日二日で決戦なんてことにはならないだろうし、余裕があると考えても……そう一度は思ったのだが、悠長にしていてはまずいというのも確か。有力な情報を得られる遺跡などが見つかるにしても、そこに行く前に大きく事態が進展してしまったら、まずいことになる。よって、迅速に星神に関する情報を手に入れなければならない。

 そうして思考を続けやがて日は沈み、夕食時に酒場でテーブルを囲んで仲間達が集めた情報を聞くことに。


「政治は安定していて、特に問題などはなさそうですね」


 ソフィアが先んじて述べた。それに彼女と同行したリーゼが補足を行う。


「王子王女の支持も十二分にある……魔法技術の大きな発展により、王族に対する信頼はより強固になったみたいね」

「景気も良いという話ですね」


 と、フィリがさらにリーゼに続く。


「商人達の間でも商売がしやすいと。なおかつ魔法技術発展によって思わぬ物が売れるようになっている……興味があるのは新たな魔法技術……それに使われる資材です」

「もしそれを独占することができたら、大もうけできるってことか」

「はい」

「商人同士で苛烈な争いがあるみたいだけど……平和の範疇か。血なまぐさい話があるわけでもないからな」

「戦争とか、そういう話は一向に出てこないわね」


 これはカティの言。


「周辺諸国も魔法技術の恩恵を受けているみたいだし、友好関係を築いている」

「盤石ってことだな……そもそも魔法技術による発展により、便利な世の中になっているんだ。不満がある人は少ないだろう」

「少なくとも、王家に関して悪く言う人はいませんでしたね」


 ソフィアはそう言及すると、周囲を見回す。酒場は活気づいており、多数の商人を始め様々な人が酒を飲み笑いながら語り合っている。


「この店内の様相を見ても、非常に良い雰囲気であることは察することができます。本来ならば私やリーゼ姉さんは見習うべき点なのですが……」

「人々のために魔法技術を使うというのは間違っていないし、良いと思う。けれど、その中で余計な……竜の尻尾を踏み抜いているような状況はまずいよな」


 俺の言葉にソフィアは同意するように頷きはしたが……言いたいことはわかる。

 これからこの大陸では、王子と王女の争いが始まる。秘密裏に行われるものであるのは確定的なのだが……それは間違いなく、技術発展を止める行為であることは間違いない。


 つまり、今得ている恩恵を何かしらの形で得られなくなってしまう危険性だって孕んでいるわけだ……これを放置していて星神が降臨してしまったら技術云々の話ではなくなるのだが……ソフィアとしてはこの大陸で暮らす人々の日常を壊すということであると認識しており、だからこそ顔が曇っているのだろう。


「……魔法技術に関しては、この国がどういう決断をするのか……それを注視していくしかない」


 と、俺はソフィアへ補足するように告げた。


「現国王やエメナ王女だって、発展している現状を止めようとは思っていない。星神に関する研究と思しきものは止めるべきだと考えているだけ……騒動が収束し、混乱が生まれるのであれば、俺達が改めて事情を説明すればいい。それで星神以外の魔法技術について、放棄するようなことはないだろ」

「そうですね……ただやはり、持続的な発展が必要である以上、難しい話ではありますよね」

「俺の前世でも同じだったな。資源というのはそういうものだし……ここはまあ、ゆっくりと議論するしかないな」


 資源がいずれ枯渇するからといって今ある生活を止めることなんてできないし、そんなことをすれば反発が生まれるからな……考えられることとしては、例えば魔石を利用しているのであれば、それを代替品……例えば植物とか、そういうもので補えないかとか研究していくとかだろうか。実現できるのかどうかはわからないけど。


「ま、全ては戦いが終わってからだな……とりあえず、王子がバレないように動くだろうから、今回の騒動が表立って行われる可能性は低い……一般の人に被害が及ばないと予想できるのは良いことだ」

「これで戦争まがいのことが起きたら、さすがに私達だけで対応しきれないからね」


 カティが水を飲みながら呟く。うん、俺達は自分達のことだけに集中できる……これは幸いだ。


「情報をまとめると、政治は安定していて俺達が知る王子王女の争い以外で混乱するようなことはおそらくない……王家に支持がある以上、政治的にまずい展開にはならないだろうから、そこは良い……肝心の王城内は嵐が吹き荒れているけど」

「私達には関係のない話ね」


 肩をすくめながらリーゼが述べる。会談を終えているし、国内政治の話に関わるようなこともないからそうなのだが……なんだか突き放した物言いである。

 俺達が立ち入るべき話でもないからな……状況はわかったので、俺はまとめに入る。


「明日以降は全力で自由都市トルバスへ突き進む。予定は立てているけど、可能な限りそれよりも早く進みたい。全員、明日から強行軍になるけど、覚悟してくれ」


 全員が頷き、解散。俺は一足先に部屋へと戻り、ユノーを介してガルクと連絡をとった。


「異常はないか?」

『特にない。精霊達のすみかに現われた魔物も掃討に成功した。被害もなしだ』

「それは良かった。俺達は明日以降、ひたすら移動に時間を費やす。足を動かしながらでも会話はできるから、星神に変化があったり、あるいは何か有益な情報があればすぐに連絡を頼む」

『わかった……ルオン殿は、星神が攻撃を仕掛けてくると思うか?』

「どうだろうな。ただあいつは基本、自分の欲望に従って動く存在とは違う……言ってみれば人の願いによって動く存在だ。それをきっかけにして、破壊と荒廃をもたらす。だから呼び掛けることさえなければ、世界を滅するような真似はしない」


 だが、誰かが呼び覚ます……その連鎖に終止符を打たなければと、心の中で強く誓った。


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