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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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陰のある王女

 明かりが煌々と照らす町の大通りの端……俺達は城門へと辿り着いた。といっても、さすがに外に出るというわけにもいかず、俺達は城門付近で明かりのない場所へ足を踏み入れた感じだ。

 城門付近には当然ながら門番はいるのだが、それに見つからないよう明かりを避けて進む。少し遠目から町の明かりを眺めていると、


「……そういえば」


 ふいに、エメナが声を上げる。


「もう少し先に行けば、公園がありますよ。そこにも明かりが存在しています」

「路地にも少しは明かりが存在しているし、暗い場所が少ないわね」


 リーゼが続いて述べる。確かに脇道にも前世で言うところの電灯が存在している。さすがにその明かりで道の全てをカバーしているわけではないのだが……歩くには不自由ない。


「公園に行ってもいいかしら?」

「はい、構いませんよ。ただ、大通りを歩く間に少し時間が経ってしまいましたから、さほど余裕はないかもしれませんが」


 エイナ達とかに誤魔化し続けてもらうのも悪いしなあ……それに、エメナ王女の方も、あまり長時間外に出ていれば不都合が出るだろう。その辺り言及すると本人は「大丈夫です」と答えるけど……ま、あまり長居してもまずい。

 そろそろ、決めに掛からないといけないわけだが……エメナが先導する形で公園に辿り着く。木々が植えられており、その中で熱を持たない魔法の明かりが公園内を照らしていた。


 さすがに遊具の類いはないけれど、遊歩道のようなものが整備されている。周囲に人の気配はなく、繁華街が賑わっていても、こんな所に来るのは俺達だけみたいだ。


「……さて」


 リーゼは明かりを見据え、


「夜の公園というのは、結構不気味ねえ……エナ、ありがとう。こうして体験できたことは、何より価値があったわ」

「そう言ってくだされば、こうして案内した甲斐がありました」

「ええ……それで、もう一つだけ、尋ねたいことがあるの」

「私に、ですか?」

「ええ」


 いよいよか……エメナの態度としては、それほど硬いわけではない。よって、深く踏み込んでも大丈夫な可能性はあるが――


「そうね、あなたと接していて……少しだけ、違和感を覚えた」


 その言葉に、エメナの体がピクンと跳ねる。


「あ、勘違いしないで。案内してもらったことは感謝しているし、何よりあなたが私達を気に掛けていてくれたことは伝わっている……あなたのエスコートが悪かったとか、そういうことではないの。こうして城を脱けだし案内してもらったことは、とても感謝している」

「では……何を?」

「そうね、私達と一件とは異なる何か……もしかすると、あなたは厄介事を抱えているのかな、と思って」


 エメナは沈黙する。対するリーゼはさらに言葉により歩を進める。


「正直なところ、こうして城を抜け出すという提案自体、駄目で元々だった。それでもあなたは快く引き受けてくれた……のはいいのだけれど、その過程でどうにもあなたには陰があった。もしかすると私達をこうして案内したのは、あなたなりに何か思うところがあって、ということではないのか……と思ったのよ」

「それは……」

「別に話してくれなくともいいの。ただ、なんというか……こうして色々とお話しできたから、悩み事があれば相談してくれてもいいかなと思ったのよ。出会ってまだ一日も経っていないけれど、少なくとも互いの心情に踏み込むくらいの親交を深めることができた、と私達は思っている。王女という立場上、身内や臣下に話せないようなこともあるでしょう。同じ王女として、色々と話してくれると嬉しいかな、と私は考えた」


 と、そこでリーゼは俺のことを見た。


「ただ、ルオンの方は少し違う考え方みたいだけれど」


 ここで俺の方に向けてくるのか……ま、リーゼからよりも、後ろ暗い話をするのなら俺が適任かもしれないな。

 どうなるか……不安もあったがリーゼから振られた以上は、やるしかないな。


「そうだな……これは俺の推測も混ざっているし、間違っていると言うのなら、否定してくれ。単に俺が深読みしているだけかもしれないから」


 口調を普通に戻しながら前置きして、


「最初に出会って以降、どこか雰囲気に陰があった……その中で特にそれを強く感じたのは、あなたが城を出る一件について話をした時だ」


 エメナは俺へ視線を合わせると、少しばかり緊張した様子を見せる。


「だからまあ、安直ではあるんだが……その旅の道中で、何かが起きると危惧しているのではないか。それが危険なものなのかわからないが……あなたにとっては、良くないことであるのは間違いない」

「それは……」

「この国は平和だし、技術発展により王家に対する支持も厚い。だからまあ、あなたに危害を加える人間がいるとは思えない……のだが、王女の雰囲気を見て、なんとなくそう思ってしまった。それはもしかすると、魔王などとの戦いを経て、人に対する負の感情を機敏に察することができるようになった結果かもしれない」


 実際はシナリオで知っていただけだが……ここで未来の出来事を知っていると聞かされても、彼女としては困惑するしかないからな。

 予言云々ということで話を向ける方法もなくはなかったけど……なぜそうした予言をしていたのか、とか疑問に思われる点が多々ある。よって、少しばかり婉曲的ではあるが、口にしたような表現を用いた。


 エメナとしては、こちらの言動に対し反応はある……なおかつ、こちらの指摘が正解であるかのような様子を持っている。

 ふむ、ゲームでは誘拐されるとわかった上で、旅を始めたということか……だとするなら、ゲーム上でもシナリオが進むことで彼女の自身の口から真相が語られたのかもしれないな。


 そして、目の前の状況なのだが……果たして喋ってくれるのかどうか。正直分の悪い話ではあると思うし、ここまで踏み込んで話をした以上、失敗したとしたらこちらにもそれなりにダメージがある……かもしれない。

 ただ、エメナ王女の様子を見る限りでは……緊張の一瞬。俺やリーゼ、ソフィアが沈黙を守る中で、エメナは一度目を伏せる。それは俺達に話すかどうか……その答えを決めている様子。


 果たして――静寂が公園の中を包む中、それを破ったのは……エメナ王女の発言だった。


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