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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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説得と承諾

「無茶を承知で言っているのは事実よ」


 と、リーゼは笑いながらエメナへ続ける。


「お城を抜け出したいから手伝ってくれ、と言っているわけで。しかも今日顔を合わせたばかりだし、いくら他国の王女様や英雄が相手とはいえ、不信感をもたれるのは仕方がない」

「……いえ、言いたいこと、というより目的は理解できます」


 エメナはソフィアやリーゼに対し、言及する。


「技術を取り入れる以上、それをしっかりと見極めることは大切です。お二方が生の情報を得たい、というのも理解はできます」

「けれど、返答は厳しそうね」

「……もし、私が断ったら?」

「別の方法で技術に触れる機会を探すから安心して。あなたが断ったから独断で行動する、なんてことは絶対にしない。そもそも、そんな怪しまれる行動をするのは、不利益になるからね」


 エメナはコクコクと頷く。ひとまず俺達が無茶しないことはわかってくれたようだ。


「正直、これは駄目元でお願いしているの。当然ながらあなたのお父様……王様は首を縦に振ってくれないだろうし、王子二人も同意してはくれないでしょう。けれど、立場的に少し私やソフィアに近しい存在……あなたなら、可能性があると私とソフィアは考えた」

「無理強いするつもりはありません」


 ここで、ソフィアが優しくエメナへ告げる。


「私達としても、強引なお願いをしているのはわかっています。ただ、こうした話を振ることができそうなあなたが、どうやら数日以内にこの城を離れる……それを聞いて、ならばすぐにでも行動したい、と思ったのが今日唐突に提案した理由になります」

「私達の安全面について懸念するかもしれないけれど、そこはまったく心配ないわ」


 さらに続ける形でリーゼが述べる。


「私やソフィアの実力は、話を聞いた以上は知っているはず。加え、英雄ルオンの存在……町中は別に危険というわけではないでしょう? あなたのことも、私達がきちんと守ってみせるから」

「……確かに、安全面の考慮は必要なさそうですね」

「ええ。強引なお願いになっているけれど、どうか話を聞いてくれないかしら」


 そこで、沈黙が生じる。後は成功を祈るのみ、か。

 俺達は無言で返答を待つ。エメナとしてはどうすべきか……これから国のことを考慮するのなら、同意した方が利益になるか。


 話の向け方としては、かなり良い部類だとは思う。いきなり夜の町へ繰り出すというのは、確かに無茶かもしれないが……そういう所でしか、おそらくエメナの内面に踏み込むことはできない。

 さて、どうなるか……やがて、エメナが口を開く。


「まず、そうですね……人に気付かれずに行動する事は可能だと思います。懇親会が終わった後ですし、皆様に誰かが話を向けることもないでしょう。お疲れなのはわかっていますし、部屋を訪れるようなこともないとは思います」

「そうね。王様からもゆっくり休んで欲しいと言われているし、人が来ることはないでしょうね」


 絶対とは言い切れないけど……ここは、エイナとかに上手くやってもらうよう言伝をしておけば済む話かな?

 ま、この辺りについてはどうにでもなりそう……そしてエメナは結論を述べる。


「わかりました。それが我が国のためになるのなら」


 決まりだな……ただ、そう語る彼女の姿はやっぱりどこか、陰があるように思える。

 もしかすると、俺達にはわからない別の要因があって、こちらの要求を受け入れたのかもしれない……それはもしかすると――


「では、早速行動開始といきましょうか」


 エメナは踏ん切りが付いたのか、段取りを説明し始める。それから程なくして俺達は客室を出た。


「ひとまず、成功か」

「これで失敗したら頭を抱えるところだったわ」


 リーゼが肩をすくめながら話す。そうは言うもののダメで元々というくらいの気持ちだったのだ。失敗しても……俺達とエメナ王女との間に縁が結ばれたということで、まったく無駄だったというわけでもない。

 俺達は一度部屋へと戻り、そこから支度を開始する。表向きは就寝の準備。実際は外に出るための準備なわけだが……エイナとかフィリ達にも説明を行い、俺達が留守にする間は城の方を任せることにする。


 危惧すべき点としては、城内にエメナを誘拐する計画を立てている首謀者がいる場合……彼女の事を監視しているか、あるいは俺達の動きに注意を向けているか。ただ魔法か何かでそういった観察をしている風には見えないし、少なくとも分析できる範囲ではそういう視線は感じなかった。念のためカティとかにその辺りのことを尋ねてみるが、


「この城内に魔法が掛けられている、みたいなことはなさそうね。警備については魔法を使わず」

「……こちらのことはあまり警戒していないのかな」

「というよりこの国は政治も安定しているし、国同士で争いがあるわけでもない……敵がいない国だったら、このくらいが普通じゃない?」


 そういう見方もある……というか、俺達が変に警戒していただけかもしれない。

 ともかく、王女誘拐を企てる首謀者に動きはない。ならば今のうちに、行動させてもらおう。


 そこから俺とソフィア、そしてリーゼの三人はエメナの段取り通りに行動する。それにより、俺達は兵士とかに見つかることなくエメナと合流することに成功。そして、城を出る。

 町へ行くためにはどうするのかだが……地下通路を使うらしい。目立たないよう、城と町とを繋ぐために作られたもので、常日頃というわけではないがそれなりに使われているらしく、彼女は慣れた足取りで通路へと案内する。


 いざとなれば避難路にも使える感じだな……やがて町へと到達。暗がりで、俺達が地下通路から出てきたとわかる者は誰もいなかった。

 ここで俺は夜ながらソフィア達の格好を確認。それぞれ旅装姿であり、エメナについても目立たない色合いのローブを身にまとっている。


「……王女の存在が認知される可能性はありますか? 変に騒動を起こすべきではないと思いますが」


 こちらの言葉にエメナは、


「大丈夫ですよ。まだ私は公の場には出ていませんし、貴族達と遭遇しなければ……町中で彼らと会う可能性は低いですし、格好も変えていますから。そうでなければ、こうして案内はしませんよ」


 ま、それもそうか……俺達は明るい場所を目指して歩き始める。眠らない町……俺達が向かっているのは繁華街ような場所らしく、辿り着く手前から、ずいぶんと人の声と雑踏が耳に入っていた。


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[一言] 誘拐されに行っているようにしか見えない……
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