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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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その物語の名前

 船上でソフィアや仲間と色々話をしながら船旅を続け……やがてリズファナ大陸へと到達する。

 ひとまず船の上では何も問題は起きなかった……いや、起きても困るんだけど。これがゲームなら例えば海上で魔物が出現して、みたいな流れになってもおかしくはない……現実ではさすがにそんなことはなく、船から下りることができた。


「ふー……」


 小さく呟いてから周囲を見回す。港町として規模は結構大きい。都近くで他国との玄関口らしいので、これは至極当然と言えるか。

 ここから都まではさらに馬車で移動するらしいのだが……と、俺達のことを見つけて近づいてくる一団が。白銀の鎧に三日月の紋章……この三日月というのがリーベイト聖王国所属であることを示すものであり、国旗にもあしらわれている。


「お待ちしておりました」


 出迎え早々に告げたのは先頭にいた騎士。金髪の男性で、彫りの深い……年齢は二十後半といったところだろうか?


「リーベイト聖王国騎士団、副団長ジュファ=ドラングと申します。今回皆様を案内させていただきます」


 副団長か……二人の王女を伴っている以上、結構上の人がこんな所まで出張ってきたというわけか。

 さて、ここからが重要だ。俺が知るゲーム上の知識では、このジュファという人物に聞き覚えはない。そもそもゲームに登場するのかも不明。だからこそ、ゲーム六作目の主人公にとって敵なのか味方なのかわからない。


 で、俺としては騎士団における副団長を引っ張ってきたことにより、どの程度の影響があるのかを見極めなければならない。仮にゲームに関与していたというのなら、この時点で本来あるべきシナリオから外れてしまっている。まあ今回はゲーム知識があまり有効活用できず、色々考慮しても検証ができないので意味がないと言えばないのだが……ともあれ、俺達にとって――星神と戦う俺達にとって敵か味方かの判別くらいはしっかりとつけなければならない。


 思考する間に俺達は自己紹介を行う。そこでジュファは町並みへと視線を移し、


「馬車を用意しております。移動はそちらで」

「護衛全員、ですか?」


 エイナが問う。護衛の役目である彼女達としては、できることなら騎乗して警護したいところか。

 確か事前にその辺りの手配はリーベイト側へやっていたと聞いているが……ジュファは小さく笑みを浮かべ、


「連絡は来ております。必要人数に合わせて馬も用意しておりますが」

「わかりました。王女達の護衛を行うための最低限で構いませんので」

「はい。では、ご案内致します」


 ――そこから俺達は港町の入口まで進み、馬車に乗り込む。王女や政府高官が来るということで一台だけVIP用の豪華な内装の馬車が一つ。大きめのサイズではあるけどさすがに十人とか大人数が入る乗合馬車ではない。俺とソフィアとリーゼ、さらにエイナの四人が乗り込み、組織のメンバーとか、騎乗しない騎士とかは別の馬車へ乗り込むことに。

 エイナがこの中で護衛という形になんだろうけど、面子的に何か騒動があってもあっさり解決できそうだよな……全員が全員、強いし。


「ここまでは順調だけど」


 リーゼがふいに話し始める。そこで俺は、


「海上で事件なんてあってたまるか」

「そういうことじゃないわよ……ここからは普通に歓待を受けてお話しをする、でいいのよね?」

「最初から変に動き回っていたら何をしているのかと警戒されるだろ? それに、俺達はこの国について基本的な知識は頭に入れているけど、現状どのようなことになっているのかわからない。とにかくその辺りの情報を、怪しまれないように集めていく必要がある」


 ――ゲームでこの国の王女が狙われていた。それが星神と関与するのかは不明なのだが、少なくとも面倒な騒動が起きているのは事実。

 さすがにそこへ首を突っ込もうとしても国側から「部外者は黙っていてくれ」と言われて終わりだ。事件に関わって怪我でもされたら一大事だからな。よって、何かあったとしても国側はそれを表面に出さないように動くだろう。


 ここで問題なのは、果たして騒動の首謀者がどのレベルの人物なのか。例えば一介の兵士が仕組んだことであれば、そいつを捕まえて終わりというだけだが、さすがにそうじゃないだろう。王女が狙われる……確か彼女自身が王位継承者第一位とかではなかったので、お家騒動という感じではおそらくない……と思うけど、決めつけるのは良くないか。

 町の中で話を聞いてもし、彼女に国を治めて欲しいという人が多かったら、継承権を持つ誰かが仕組んだ、という見方もできる。あるいは、王女の弟とかが上の兄や姉を殺め、自分が王に……? まあそもそも兄弟がどれくらいいるのかわからないんだけど。


 可能性はいくらでもあるけれど、王女を狙うような事態だ。俺達が来訪して穏便に済ませようと動くにしても、必ず歪みは存在しているだろう。それをきっちり観測し、情報を得る……国側への対応はこのくらいがベストだろうか。

 残る問題は、星神に関する情報……この大陸のどこかに、それが眠っている。遺跡にあるのか、それとも誰かが知っているのか……ともあれそれは間違いなくゲーム上においても核心的な話。そうであれば、大陸の端とかにあってもおかしくはない。


「ひとまず私やソフィアが政治的な話。そしてルオンは星神について調べる、でいいのよね?」


 確認するリーゼ。俺は首肯し、


「ああ、それが無難だ……どこまで調べられるのかわからないが、国同士で顔を合わせて、とやる以上は相応の情報を絶対に手に入れるぞ」

「そうね……あ、そうだルオン。今更だけど、重要なことを訊いていなかった」

「重要なこと?」

「あなたが知っている物語……六作目の副題とかあるのかしら?」


 ――言われてみれば、口にしていなかった。


「あるよ。名前は……『ディスオーダー・クラウン』だ」


 直訳すれば、秩序を失った王冠、といったところか……この物語を通じてリーベイト聖王国が無茶苦茶になるのを暗示している。

 だからこそ星神が関係している……星神によってなのか、星神に触れたことによってなのか……それで意味合いは大きく違うけど。


 この仕事、難儀なものになりそうだ……確信しつつ、馬車に揺られ続けた。


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