鎧の天使
首謀者が武具の力を発揮した直後、周囲に魔力が拡散。直後、天使達が反応した。
どうやら武具を使用すると動きが変わるらしい……途端、魔族はさらに険しい顔をした。
なるほど、武具を行使しようとしていたら天使達が暴走し始めた、というわけか。もし俺達が武具を所有していたら、狙われていたかもしれない。そういう意味合いでも良かったと言えるか。
そして肝心の短剣についてだが……発動した瞬間、魔族の周囲に障壁が生まれた。どうやら防御的な効果をもたらすようで、俺達の攻撃を逸らすためのものらしい。
とはいえ、単に防御するだけでは……俺は斬撃を放った。障壁に剣戟が入り、勢いよく振り抜く。結果、あっさりと障壁は砕けた。
魔族は悲鳴を上げながらどうにか俺の剣を躱す。障壁がわずかに抵抗したため、そのわずかな時間で避けることができたようだ。
しかし、今度は追撃が――と思った矢先、天使が魔族の背後に現われる。加え、その手には大剣が。
これは……俺が手を下す暇もなく、魔族の背に剣が突き刺さった。
「が、あ……!」
声を発し、魔族は倒れ伏す。あまりにもあっけない終わりだが――
「おい、待て。お前は魔王の配下か!?」
最後に確認しなければ……と思ったが、さすがに魔族が答えることはなく、その体が塵となった。
直後、周囲にいる魔物達の動きが鈍くなる。司令塔である魔族が滅んだことによって、統制が執れなくなり始める。
ならば、魔物を倒さなければ……と思っていると、周囲にいた天使達が魔物を駆逐し始めた。元々戦力差があった中で指揮官も消えた。それは間違いなく、一方的な蹂躙だった。
「……味方、じゃないわよね」
天使達を見据えながらカティが呟く。それに俺は、
「たぶん天使の武具……そのレプリカに反応しているんだろ。天使が武具を所持していないとして、盗みに入った輩……そんな認識をしているのかもしれない」
「なるほど、ね。私達は武具を持っていないため、狙われていないと」
「そうだな……こうなると魔物を殲滅したら、天使はどうするのか」
現在、武具についてはガルクが保管しているのだが……やがて、天使達が魔物を始末した。武具のレプリカも消滅し、辺りに天使の魔力はなくなる。
ならば天使達は……沈黙していると、天使達はガチャリと鎧の音を立てながら歩き始めた。
「帰るのかしら?」
「天使の遺跡に? そうであれば良いんだが……」
ただ、その進行方向は俺達が来た道だ。しかも天使達は理路整然と、何か命令を受けて進んでいるようにも見える。
それはまさしく、行軍という言葉が似合うものなのだが……俺達は互いに顔を見合わせる。天使達について、どうすべきか。
「ガルク、どう思う?」
『……何か、魔力を探っているようにも感じられる』
「魔力を?」
『うむ。もしかすると天使の武具……それを持ち出した数などを把握していて、それを取り戻そうとしているのかもしれん』
「でも、ガルクの方へ全部渡したぞ?」
『この霊峰周辺に持ち出された天使の武具は存在していない……のだが、天使の武具が発した魔力を辿っているという可能性もある』
「そうすると……どうなる?」
『場合によっては村へ来るかもしれないな』
その場合、面倒なことになるか? 正直、魔族よりもそちらの方が大変なことになるかもしれないが。
「ソフィア」
俺は使い魔に対して名を呼び、状況を説明する。
「天使について注視するけど、念のため戦闘準備を頼む」
『わかりました。お気を付けて』
連絡を行った後、俺達は天使達の後を追う。こちらの靴音などに反応を示すことすらなく、ひたすら何かを目指すように淡々と歩いて行く。
「速度はそれなりだから、魔力で強化すれば追い抜けるな……どうする?」
「外に出て行こうとしたら面倒なことになるのではないかしら?」
カティの言。シルヴィなんかも「そうだな」と同意し、
「向かっている方角は、ボク達が入った入口だと思われる……先回りすべきじゃないか?」
「そうだな……よし、なら魔法を使って動くとしよう」
よって、俺達は天使が歩く横をすり抜けて進路を阻むことにする。ただ俺達のことはガン無視であり、なんだかひどく不気味に思える。
というか、本当に何も反応がないんだけど……とりあえず好戦的でないことは幸いだが、このまま先へ進ませるのも微妙だ。
「洞窟内で決着をつけるべきか?」
「入口付近で戦闘するのがベターだな」
これはクウザの言だ。
「狭い場所で魔法を撃ち込んで、天使を損傷させる……で、ルオンさん達が直接攻撃で片を付けると」
「それが無難か……問題は、天使の実力なんだが」
魔物を瞬殺していたことからも、その能力はレプリカを持った魔物よりも上であることは間違いない。魔力の多寡を探っても判然としないため、こればかりは戦ってみなければわからないだろう。
後、想定する中で面倒な事態というと……、
「攻撃しても俺達を無視してきたら、面倒か?」
「全部無視して押しのけようとするってことか……あー、確かにそれは面倒だ」
シルヴィが険しい顔で述べる。まあここは出たとこ勝負しかないか。
俺達は天使達からだいぶ先行して洞窟の入口付近まで戻ってくる。クウザ達が魔法準備を始めており、ひとまず攻撃態勢を整えることはできそうだった。
「もうすぐ到着するな……ひとまずここを目指しているのは間違いない。で、改めて確認するけどどうする? ここで倒すか?」
「天使そのものではない、ただの守護者でしょう?」
と、カティがさっぱりした口調で告げる。
「私達に害をなす可能性がある以上、他に選択肢はないわよ」
「……まあ、そうだよな。一体くらい捕獲して魔力構造とか調べてみたい欲があるんだけど」
「さすがに星神に通用するとは思えないけれど」
「盾役とか、色々できそうだろ? と、来たな」
天使達が近づいてくる。歩調は一切変わっていない。
視界に俺達が映っていないかのように、ずんずんと突き進んでくる……俺は手を掲げる。合図を準備だ。
やがて――天使の先頭が入口付近に差し掛かった時……俺は手を勢いよく振る。直後、カティやクウザの魔法が発動した。




