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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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曰く付き

 一度全員が村へ戻ってから、俺は使い魔を用いて洞窟の調査を開始する。もしここに敵の本拠があるなら使い魔を使って調べていることは丸わかりなのだが……今更という感じもするので、強引に作業をする。

 マッピングなども始めるのだが……想像以上に広大な洞窟だ。これは引き返して正解だった。


「ルオン様、使い魔ごしでは天使の遺跡があるのかどうかはわからないのですよね?」

「ああ、まったく……レスベイルでも飛ばせばいいんだろうけど、周辺の森とかから魔物が来たら面倒だしなあ」


 現在レスベイルは守りが手薄な所へ赴いて護衛任務を行っている。エイナから要求されたためであり、現在も任務を遂行している。騎士や兵士が動き回っている以上、どうしたって手薄な部分は出てくるので、仕方のない話だ。

 できることなら人海戦術で森の中を調べて魔物がいないか確認したいところなのだが……俺達は交戦した際にギリギリまで気付かなかった。よって今回の魔物に対して装備などが不十分な騎士や兵士が動くのは、危険すぎた。ということで守りに徹していた方がいいだろうという結論に達した。


 実際のところ、村人とか町の人が活動の足かせになってしまっているのだが……今後もこういう戦いが増えるだろうし、むしろ慣れるのに良い機会かもしれない。


「……うーん、洞窟内の探索は進んでいるけど……本当に広大だな」


 地下へと伸びる道が存在しているのだが、果てがない。自然に発生したものなのかと疑ってしまうところなのだが、通路などは明らかに人の手が加えられているので、天使の遺跡がどこかにある可能性は極めて高い。


「……この洞窟のどこかに遺跡が存在するとすれば、相当に大規模な場所だったのかもしれない」

「洞窟がそもそも大きいですしね……」

「ねえ、一つ疑問があるのだけれど」


 ふいにリーゼが書き記したマップを見ながら尋ねる。


「洞窟内の一部分に天使の遺跡が存在する、のよね?」

「形としてはそうなる。天使の遺跡って本来は異空間と呼べる場所に存在しているから、洞窟の広さってあんまり関係ないんだけど……場合によっては遺跡が一つどころか二つ三つあるかもしれないな」

「なるほど……私が疑問に思ったのは、今回の首謀者が魔族だとすれば、なぜこの遺跡の存在に気付くことができたのか……」

「ああ、そこか。魔王が情報を保有していたとか、あるいは事前に調べていたとか、そういうことじゃないか?」

「でも、いくらフェルノ山という神聖な山でも、人間だって少しくらい調査はしているでしょう? にも関わらずこの場所に遺跡があると認識されなかったとしたら……どうやって魔王はこの場所にあると知ることができたのかしら」

「……バールクス王国の調査記録で、この山に天使の遺跡があるという報告はなかったはずですしね」


 と、ソフィアが口を開く。


「ここはバールクス王国領内ですし、他国の調査機関が調べることはありません。仮にあったとしても記録が確実に残っているはずです。リーゼ姉さんの仰る通り、魔族であれば情報の出所は気になりますね」

「魔王であれば調べる余裕はあっただろうけど……ふむ」


 少なくとも魔族が偶然見つけてここを根城にした、というのは考えにくい……のだけど、俺達が深読みしすぎていて実際は単なる奇跡なんてオチもあり得る。

 もし今回の事件首謀者が所持している武具があの洞窟にある遺跡だとすれば、今まで見つからなかったことも、大量に武具があったことも一応納得はできる。これだけ大きい空間に存在する天使の遺跡だ。手付かずで複数あったなら、武具があってもおかしくはない。


 ただ、俺としてはそういう流れではないような気もする……武具の出所は不明だけど、少なくとも首謀者がここに居座っているのは何かしら根拠があったから……そんな解釈の方が妥当か。

 俺は新たな空間を見つけたので地図に書き記していく……しかし、マジで広いな。


「これ、調べるにしても今以上に大規模な調査隊が必要になるぞ」

「ですがルオン様、現状では要請出来ませんよ」

「当然だよな……うーん、入口周辺に騎士団を配置して入口の見張りを行い、その間に俺達は洞窟内を調べる……この辺りが妥当か?」

「それしかなさそうね。ということはさらに城から援軍を求めることになるけど」

「これ以上の大所帯は避けたいところだけど……そうも言っていられない状況か」


 俺の攻撃を弾いたという報告がある以上、援軍要請をすればあっさりと承諾してくれるだろう。


「そうだな……ひとまず使い魔によって魔物の動向を監視。洞窟内に動きがない間に魔物の襲撃が来た場合、それが森に隠れていた個体か他にアジトがあるのかを調査……敵の出方を窺いながら居所を絞っていく……援軍が来たら本格的に洞窟を調査。これがいいな」

「そうね」

「はい、私も同意です」


 リーゼとソフィアが相次いで頷く。うん、方針は決まったな。活動内容はかなり地味で、一つずつ居場所の候補を地道に潰していく。成果が上がるかどうかもわからないのでフラストレーションとか溜まりそうだけど……我慢しかない。

 ここからさらに軍が大規模になるわけだから、余計に短期間で終わらせたいところだけど……ま、俺達の頑張り次第か。


「明日以降はとにかく山の周辺について魔物の調査をしよう。交戦の危険性もあるため、細心の注意をするように」


 俺の言葉にソフィア達は言われずとも、という様子で頷き、話し合いは終了。俺はひたすらマッピングの作業に入ることにする。

 それがどれだけの時間続くのか……複数の使い魔を用いて調べているのだが、本当に果てがない。ガルクも驚くくらいで、


『これほど大規模な空間であれば、ノームくらいいそうなものだが』

「けど、精霊の類いも見当たらないな……何か理由があるのか?」

『洞窟へ入り込んだ直後、ずいぶんと硬質な魔力を感じた。自然的に発生したものか、それとも天使の遺跡が存在する故か不明だが……あの場所には精霊を寄せ付けない何かがある』

「なんだか曰く付きになり始めたな……単なる花摘みだったのに、ここまでとんでもないことになるとは」


 嘆いても始まらないか……事態が進展する兆候はまだ見られないが、洞窟を発見したことで前進したと思うことにして……明日からの作業に気合いを入れ直した。


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