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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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広大な洞窟

 ピシリ、と小さく音がしたと同時、目の前に洞窟が現われた。どうやら魔法か何かでカモフラージュしていたようだ。


「当たり……かな?」


 入口付近から感じられる気配は、何もない。魔物の気配もなければ、天使の武具にまつわる何かがあるわけではない……のだが、


「仕掛けがある以上は、先に何かあるんだろうな」

「ようやく見つかったということかしら」

「そうだな……ソフィア、シルヴィ、怪しい洞窟を見つけた。これから俺達は潜入する」


 別の班へ連絡を行った後、俺達は洞窟の中へ。静寂が周囲を包み、俺達は警戒しながら少しずつ進んでいく。

 程なくして広い空間に出た。空洞とでも言うべき場所であり、この洞窟がどうやら広大なものだと予想できるくらいには、開けている。


「ここには……何かありそうだけど」

「天使の遺跡があるわけではなさそうね」


 カティの言葉に俺は頷きつつ、周囲に建造物がないかを調べてみるが……、


「うーん、この場にはないな。この洞窟、奥があるみたいだし、まだ先か?」

「けど、下手に先に進んで囲まれたらどうするの?」

「……魔物の能力を考えればいけそうな気もするけど、無理はあまりできないか」


 他に怪しい場所がなければ仲間達と合流するか? でも、ここが正解だとは限らないしなあ。せめてここは当たりなのかハズレなのかは確かめたいところ。よって、


「ひとまずこの空間だけでも調べてみよう。道がどのくらい分岐しているとか、その辺りを含めて。この洞窟が迷路になっているのなら、首謀者が潜伏している可能性は高いし……その間に魔力を捉えることができれば、ここで正解だし」

「そうね」

「それらを把握したら、使い魔を放って通路を調べるのが良いかな……とはいえ使い魔では天使の遺跡があるかどうかの確認はできないけど……」

「出口周辺は見張っておきますか?」


 フィリの意見。まあここを塞がれたら面倒なことになるよな。ただ、


「人数も少ないからな……分かれて行動するのはどうだろう」

『――ルオン様』


 使い魔からの声。ソフィアのもので、声がずいぶんと反響する。


『ルオン様達が見つけたとされる洞窟ですが』

「そこに辿り着いたのか? 早くないか?」

『いえ、こちらも洞窟の入口を見つけたのですが……その、かなりうっすらですがルオン様達の魔力を感知するといいますか』

「もしかして、他にも入口があるのか?」


 俺は少し神経を尖らせて魔力を探ってみる。しかし、


「わからないな……ソフィアは感じるのか?」

『はい』

「ルオンがわからないのにあっちはわかるというのが面白いわね」


 カティの言葉。俺は肩をすくめ、


「地形の構造とか、あるいは周囲の魔力濃度とか、探れる範囲が変わる理由は色々あるからな。けど、俺達とソフィア達の班は結構離れている。山の中腹に到達したことで多少近くなったとはいえ、さすがに遠いだろうな」

「愛の成せる業かしら」

『そういうわけでは……』


 困った口調でソフィアが答える。で、その後方くらいからリーゼの笑い声が聞こえてきた。

 ふむ、ソフィアの能力が正しいとするなら、


「この洞窟、よっぽど広いみたいだな……しかも山全体の地中に存在している……この山に調査が入らなかったことを考えると、手付かずの場所であることは間違いない」


 俺はここで使い魔を生成。鳥形なので敵側に怪しまれてしまうけど、今更だろう。


「少し気合いを入れて中を調べてみよう。ソフィア、そちらは入らずに待機してくれ」

『わかりました』

「俺達も方針を変更だ。一度外に出て様子をみよう。洞窟全体がどうなっているのかを調べないことには、入り込むと遭難の危険性がある」


 カティ達は同意し、一度洞窟の入口へ。周囲を警戒しながら俺は使い魔を数体動かして洞窟内を調べ始める。

 で、どうやら思った以上に広大な空間が存在している。俺達が訪れた広いエリアを人が数人並んで通れる程度の通路が繋いでいる。なおかつその通路は岩壁を少し手を加えているようにも見える。


 つまり通路などは人工物の可能性が……天使の遺跡が存在しているのは確定と考えていいだろうか。ただ、今回の事件を起こした首謀者がいるとは限らない。調査などされていない場所だ。山一つに天使の遺跡が複数存在するケースもあるし、ここはハズレで別の遺跡に潜伏していると考えることもできる。


「首謀者がいるかどうかは不明だが、洞窟の構造から見て天使の遺跡があるのは間違いなさそうだな……と」


 使い魔の一匹が別の出口へ到達。そこにソフィア達がいた。


『あ、ルオン様の使い魔がやって来ましたね』

「みたいだな……ふむ、この場だと地図とか作製できないし、一度戻るべきか? けど、敵方だって使い魔を飛ばしていることは認識できるだろうし、ここで帰れば敵に先手を打たれる可能性もあるよな」

『ひとまず見つけた入口に使い魔を配置して、敵の動向を探るしかありませんね。ただこれだと洞窟から出てくるかもしれない魔物を見つけることはできますが、既に散らばった魔物を発見できません』

「敵の拠点が洞窟内であっても、魔物が同じ場所にいるとは限らないからな……うーん、判断に困るな。でも現状の装備とかで調べるのは無理か。広すぎるからな」


 まあここは仕方がないか……と、


『ルオン、こっちも入口を見つけたぞ』


 シルヴィの声だ。これで三つ以上入口があるか。


「わかった……と、使い魔の一匹がそちらへ向かう」

『ん、本当だ。視界に入れた』

「ならその使い魔を見張り役にするか……さすがに洞窟を事細かに調べるのは無理そうだから、今日のところは一度引き返そう。山の周辺に見張りの使い魔を配置して、敵の動向を探る……現時点でやれることは以上かな」

『相手は動かないでしょうね』


 ソフィアが述べる。本拠地まで割れてしまったら、さすがに魔物を外に出すこともないよな。

 ただこれが抑止になってくれればありがたい……少なくとも首謀者の攻勢を止めることができるからな。


「それじゃあ、一度戻ろう……ただ、俺の使い魔でも全てを観察することはできない。だから今日も夜通し警戒することになるな。その辺りは、心得ておいてくれ――」


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