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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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不思議な武具

 本物の天使の武具を持つ魔物に対して俺は接近戦をすべく駆けたわけだが……肝心の敵は動かない。いや、気配的にどうすべきか迷っている感じか。

 これは魔物が逡巡しているというより、使役する存在がどう動けばいいか判断に迷っているのだ。


「指揮能力なども低いな……というより、武具だけ強くて他はまだ発展途上という考えでいいのかな?」

『その解釈で間違いないだろう』


 ガルクも同意見の様子。


『あるいは、これから施すつもりだったのかもしれん……どちらにせよ、我らは相手の準備が整っていない時にやって来た。ある意味で幸運だったかもしれん』

 そこは同意する。本気を出した相手と戦うにしろ、俺やソフィアがどうにかなる可能性は限りなく低い。しかし、騎士とか兵士とかに被害が出てしまうかもしれない。


 偶然ではあるが、相手の目論見を封殺できる絶好の好機……俺は魔物へ肉薄した。本物の天使の武具を所持している魔物。果たしてどれほどの威力なのか――

 先んじて魔物へ一閃。相手はそれに応じるべく得物である長剣を振った。双方の剣が激突。魔力が弾け、


「……これは……」


 即座に俺は、後退を選択。剣が噛み合う音と同時に距離を置くと、魔物を見据える。


『ルオン殿、どうした?』

「思った以上に抵抗があった。力負けすることはないと思ったけど、下手に反攻されると面倒だったため、一度退いた――」


 ガルクへ律儀に解説する間に魔物が迫る。愚直な振り下ろしであり、これを避けながら懐へ潜り込んで一撃――そういう戦術を思い浮かべ、魔物の斬撃を横へ移動し、避けた。

 魔物の剣は勢いそのままに地面に。これなら土に剣が食い込んで一時身動きが取れなくなるだろう。そのわずかな時間で接近して終わらせる――と思った直後、魔物の剣が地面を薙いだ。


 直後、魔力が弾けた。おそらく魔物の魔力ではなく、武具に内在していた力だ。

 次の瞬間、盛大な水しぶきを上げるかのように爆散した。剣を放ったはずの魔物さえも飲み込みそうなそれは、驚愕させるに十分なものだった。


『これは……!?』


 ガルクもまた同じように驚愕する。そこで俺は我に返り作戦通りに魔物の懐へ潜り込む。魔物の剣による衝撃で動けないのか、こちらが近づいても身じろぎ一つしなかった。

 一閃する。魔物はそれにより吠えると同時に消滅。厄介な敵は始末したが……地面を見る。


 魔物が落とした剣は残っていた。やはりこれだけは本物らしい。


「ガルク、どうする?」

『放置すれば回収される。持っていくしかあるまい』


 エイナと合流して渡しておけばいいか。剣を拾ってみる。魔物が差していた鞘も近くにあったので剣をしまう。

 触れた感想としては、確かに強力な魔力が宿っている。加え天使の力由来のものであることが、なんとなく理解できる。レスベイルを宿しているからこそわかった。


 さらに言えば、先ほどまで魔物の手に渡っていた以上、多少なりとも魔族とかと相性が良いように調整していてもおかしくないのだが……何も感じない。それどころか、俺が握っても非常に馴染む。


「……ガルク、この武具かなり使いやすそうなんだけど」

『うーむ、それは武具本来の特性ということか……魔族か人間か、村を襲撃した正体はわからないが、首謀者は天使の武具をそのまま利用しているということか』

「ちょっと待て、いくらなんでも魔族が使いこなせるとは思えないんだが」

『同意するが……このような調整を施したのに、理由があるのかもしれない』

「理由? それは――」


 魔物の雄叫び。話をするのは後の方がよさそうだな。


「とにかく今は魔物の殲滅だな。とりあえず村へ戻って――」


 ここで気付く。魔物の気配が急に遠ざかっていく。


「退却していくな。俺が倒した魔物が司令塔だったのか?」

『あるいは天使の武具を持つ魔物があっさりとやられて、撤退したのかもしれん』

「さすがに敵もこれで襲撃するのは悪手だと考えるだろうし、問題は出なさそうだけど……いや、他の村を襲撃する可能性があるのか?」

『微妙なところだな。どちらにせよ、援軍が来るまでは我慢する時間だな』


 しばらくは防衛か。近隣の村などがどうなっているかの確認を含め、明日以降は忙しくなりそうだな。


「ともあれ戻るとしよう」


 俺は魔物が持っていた長剣を見据える。戦利品だが、まとっている魔力は、あまりに異質なものだった。






 魔物が消え去ったのを確認した後、俺達は一度合流した。天使の武具を手に入れたことを報告して、さらに周囲を一度見回してみる。最終的に魔物がいないことを確認した後、念のため村人を保護しながら一夜を明かすことに。

 さらに俺達は外で作戦会議を行うことにする。手に入れた戦利品を握り締めながら俺はガルクに尋ねる。


「さっき言いかけていたことだが……」

『うむ、ルオン殿は初めて手にした武具であるにも関わらず手に馴染むといった。それはおそらく、誰が持っても良いような調整をしてあるということだろう』

「私が持っても良いですか?」


 ソフィアが言ったので試しに渡してみる。すると、


「……確かに馴染みますね。今すぐにでも扱えそうです」


 魔力が備わった武具はある程度訓練が必要なはず。例えばソフィアが持つ『神霊の剣』とかはソフィアが全力で扱えるように調整してあるので、訓練なども短期間で済む。けれど、一般的に流通している武具とかであれば、多少なりとも扱いに習熟が必要だ。

 魔力がなくとも新たに使う武器とかは慣れていないためすっぽ抜けるとかがあるので、これは武器を扱う以上当然なのだが……天使の武具にそれがない。


『これはおそらく、天使達が人間などが扱うことを想定して作成したものかもしれん』

「魔物や魔族は?」

『そこは不明だが、実際扱えている可能性を考慮すると、副次的な効果かもしれないな……ともかく、誰が持ってもすぐに使える……しかもこの様子ならば内在する天使の魔力を自在に。先ほどの魔物は魔力を制御できるにしろ、剣術に習熟していなかったため、上手く活用できなかったようだが』

「私達も視界に捉えたわ。ずいぶん強力な衝撃波だったわね」


 リーゼが呟く。うん、この武具をもし魔物が自在に扱えていたら……倒せていたにしろ、味方に被害が出ていたかもしれない。

 問題はなぜ天使がこんな武具を……と悩んだところに、ガルクがさらに口を開いた。


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