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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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当事者

 さて、方針は決まったわけだけど、そこからどうするかについては改めて誰かに聞かれるまでもなくわかっていた。なんだかよくわからない内に魔界へ赴き、その流れで組織『エルダーズ・ソード』という組織運営をしていたので実質棚上げしていた話でもある。つまり、


「ただ、ルオン様が何かをやる必要はないのですが」


 ソフィアは言う……現在俺の部屋で彼女とお茶を飲んで今後の話をすることに。

 次に何をするか……リーベイト聖王国へ赴き事を成すには、俺が国の看板を背負うほうがいい。星神に関する情報などを得るためにも立場を確保する必要だってある。よって俺はソフィアの婚約者かつ、バールクス王国の重要な組織の長という事実を世間に示す必要がある。


 バールクス王国では、王族が婚約をする場合は祭事が行われると魔界へ入る前にソフィアから聞いていた。色々あって、なんだか有耶無耶になってこの話が全然進まなかったわけだけど、次のステップへ進むにはこれが必要だということで、今回はその準備をすることに……といっても、ソフィアが語った通り俺がやることは何もない。基本的に城側は何もかも用意してくれるので。


「しばらくは星神について調べる方を優先していいのか?」

「そうですね。忙しくなるとは思いますが、体が鈍らないように注意しなければ」


 確かに。いつ何時星神との決戦が始まるのかわからない状況だからな。

 ただまあ、六作目のシナリオが始まったからといって、そこからすぐに星神による世界崩壊が、とは言いがたい。例えば六作目の話が数年単位に渡っていたとしたら、まだ時間的には猶予があるし、六作目のことがきっかけにして、数十年後崩壊が――なんて可能性も考えられる。


 本来ならゆっくりやっても良さそうなものだけど……いつなのかが不明瞭なので、決戦に備えできる限り早く準備をしているわけだ。

 よってそっちに意識を向けてもいいけど……祭事についても無論気になる。当事者だし。


「俺に何かやれることはあるか?」


 むしろ準備が早く済むのであれば、手伝うべきだな。そういう思いから出た言葉だったのだが、


「そうですね……準備にとって一番面倒なのが、竜鳴花(りゅうめいか)でしょうか」

「……竜鳴花?」


 聞き覚えのない単語だ。


「名前の由来は思い出せないですが……この花は祭事を含め、バールクス王国の祝いの日などに飾られる花です。ただ貴重で、山岳地帯で魔物もいるような場所に咲いているので、結構取りに行くのが大変なのですが」

「それ、騎士達が取りに行くのか?」

「はい。咲いている場所は国内に分布していますが、今回のような祭事だとより良い物を、ということで険しい山へ向かうケースもありますね。例えば西にあるフェルノ山などに」


 山の名前が出てきたのだが、そこは今いるバールクス王国首都フィリンテレスからさらに西……西側の先端と言えばいいだろうか。そうした場所に存在する山だ。標高も高く、ガルクが根城にしているスラテッド山のように神聖な場所としても知られている。

 ここが神聖なのは、元々近くに住む人達が信仰の対象としているからだ。山の恩恵を受けながら暮らす人々は、秋に穀物を捧げ祝う。信仰そのものについてはフィリンテレスで影響はないのだけれど、神聖な場所という認識はある。


「中腹ほどまで進み、花を採取します……保存魔法などを使用し、持って帰るのですが……道中は険しく魔物に遭遇するケースもあります」

「そういう厄介事なら、俺の出番じゃないか?」


 提案にソフィアは目を瞬かせる。


「……主役であるルオン様がお出になる必要はないのでは?」

「確かにそうかもしれないけど……なんというか、英雄が何もかも今回のことについて誰かにやってもらうというのも、なんだかしまらない気がして」


 俺は告げた後、小さく肩をすくめる。


「ほら、それにこういう事を英雄が主導してやった……という実績があると、祭事について箔がつかないかな?」

「これ以上功を得てもあまり変わらないと思いますが……ただ、時間が掛かるのは確かですし、交渉の余地はあるかもしれませんね。一度相談してみましょうか」


 ……城側としては外に出て魔界へ行ってしまったとかいう前科もあるから「城にいてください」とか言われそうだけど。ま、それならそれで待つしかないので仕方がないか。

 ソフィアに返事はできるだけ早急に、とだけ言い含めると彼女は退室した。それじゃあ俺は星神の研究でもするかな。


 俺としては『共鳴』状態について調べることくらいしかやれることがないんだけど……その辺りも各種族が現在は研鑽を積んでいるような形だし、事態が進展して俺に出番があるのはもう少し先になりそうだ。


「お、ルオンさん」


 声を掛けてきたのはアルト。周囲に彼とよく話をするキャルンなどの姿はなく、一人だ。


「祭事、とかいうことについて話をするってことだったけど、終わったのか?」

「ああ、とりあえず……今日は誰もいないな」

「訓練も一通り終わって、今日は午後から休もうって話になったんだよ。研究班は部屋にこもって仕事をしているけどさ」


 うーん、そうか。できれば仕事の最中質問できる人員とか欲しかったのだが。


「ところで、祭事の日取りは?」

「それは現在のところ不明だ。まだ必要な物品などが揃っていないらしいし」

「なるほど。場合によっては俺達の出番はあるかな?」

「祭事は城側が取り仕切るものだし、こっちの組織に何かを頼むというのはないんじゃないかな」


 主役の俺が出張るというのも首を傾げてしまうけど、一応当事者だしあり得ない話ではないが、アルトとかリーゼとかが顔を出すのはさすがにおかしいし。


「そちらのことで組織に話が行くことになったらまず俺に報告があるだろ。そうなったら話はするから、待っていてくれ」

「オッケーだ。それじゃあ俺は部屋に戻るよ」


 そういうことで彼も広間を後にする。こうなってしまうと俺もなんだかやる気が削がれる。

 それに、やっぱり祭事が近くなるということで俺も意識が向いているのだろうか……これはさっさと済ませた方がいいかもしれないな。


「準備の時間が短縮されるのなら、手伝う方が良さそうだな」


 結論を口にした後、明日にでもソフィアに再度相談しよう……そんなことを思い、俺も今日のところは休むことにしたのだった。


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