六作目
星神について色々調べる内に使徒と戦うことになった……しかし結果として『共鳴』という技術を得て、なおかつ幻獣との交流を通して……さらにアンヴェレートを復活させたことにより、星神に近づくことができた。
こちらの態勢は整ったし、組織『エルダーズ・ソード』の明確な目標もできた。ならば次の問題は来たるべき星神との決戦がいつなのか、である。
これについては基本的に情報がない。ヒントとなり得るものは存在するが、それが始まった段階で決戦まで間もない可能性もある。
まず、俺が語っているヒントについてだが、これはゲーム『エルダーズ・ソード』の新作が関係している。俺達のいる大陸が舞台の『スピリットワールド』が五作目。六作目の新作が発売されようとしている時に俺はこの世界に転生した。よって、シナリオの詳細を知っているわけではないが、冒頭部分については把握している。これがつまり、六作目開始のトリガーとなるわけだ。
「さあて、その辺りの情報もまとめておこうか」
切り出したのはデヴァルス。俺達は幻獣の能力によりバールクス王国へ帰還。星神の使徒との戦いも終わり、解散しようとしたのだが……その前に、俺が知る情報について共有しようということで一度組織内の建物にある会議室で話をしようとした。出席者は今回『共鳴』について協力してくれた各種族の代表者。具体的にはガルクにデヴァルス、アナスタシア。魔族の代表者としてはエーメルがいて、なおかつジンとリーゼがいる。
これに加えて俺とソフィア。さらにアンヴェレートと大所帯である。ちなみに、
「ジン……ついてきて良かったのか?」
ちゃっかり幻獣ジンがいることは多少驚きだったのだが、
「この組織と交流しないと、星神打倒に近づけないだろ?」
それはそうなのだが、仮にも一幻獣種族の長である彼が見せていいフットワークの軽さではないと思うのだが。
「まあまあ、俺の種族については気にしなくていい。賛同してくれているからな。今後は俺が幻獣とのやり取りを担当するから」
……まあ他の幻獣による能力でこの場所と幻獣の領域を容易に行き来できるので、ここへ来たのだろう。俺としては大丈夫と語る以上は何も言えないので、彼についてはここまでにする。
「それじゃあ、話すか……といっても、さしたる内容じゃない。俺が星神との決戦……というか、星神が世界を崩壊させるきっかけを生むと知っている情報は、それほど多くないんだ」
六作目……俺が死んだ時に発売されようとしていた『エルダーズ・ソード』の最新作について。まず舞台はリズファナ大陸。これは現魔王であるクロワの妹、アンジェの口から出た予言の言葉と同じだ。
そこには巨大な王国が一つ存在する。名はリーベイト聖王国。物語の始まりは、その王女……王位継承第一位の王女が、大陸内に存在する霊峰を訪れるところから始まる。
「俺が把握している内容は、彼女が霊峰ガシュエルダを訪れた時、誘拐されそうになった。そこに主人公である霊峰近隣に住んでいる見習い騎士……彼が助け出したことで難を逃れる。けれど王女の言うところによると、このまま帰れば殺されてしまう。よって、自分を狙った犯人を捜しながら、首都へ戻ると」
「主人公は王女についていき、共に戦うというわけですか」
ソフィアの言葉に俺は深く頷いた。
「そうだ……俺が把握しているのはこのくらい」
というか体験版がそこで終わっていたのでこのくらいしかわかっていない。もっとも、俺が知る体験版と本製品とで一致しているかどうかもわからないので、これすら確証ある情報とは言いがたいのだが。
ただ大筋は同じだろう。王女が狙われ、主人公がそれを助ける……ここで推測できることとしては、
「星神がどう関係するのかわからないが……おそらくリーベイト聖王国のお家騒動に関係してくるんだろう。星神が手引きしているとは思えないし、そもそもアイツは求めたら力を与えるだけだ。よって、聖王国の誰かが星神の力を得ている……そう考えるのが妥当だな」
「霊峰を訪れる、というのは?」
質問はデヴァルスから。そこで俺は肩をすくめ、
「いや、詳細は語られなかった」
「そうか……ルオンさんとしては王女がその霊峰を訪れるという情報が入れば、いよいよ物語が始まるという認識だな?」
「そうだ。で、季節は……まあ春先から初夏くらいまでかな? 森が青々としていたし。わかるのはそれくらいだ。でも一つ問題があって……実はリーベイト王国について少しは調べていたんだけど、霊峰を訪れることについては情報が得られなかったんだ」
「つまりそれは、秘匿されている?」
「王家内だけが知る伝統なのかもしれない。決して公にされた情報じゃない、って話だ。とはいえ、王女が動いているという事実についてはある程度調べられるし、実際に俺は探っている」
少なくとも現時点では始まっていない……例えば王女が成人を迎える際に行われること、という可能性もあるのだが、事前情報で王女の年齢は公開されていなかった。よって、霊峰を訪れるというイベントそのものがいつ起こることなのかというのはわからない。
「少なくとも王女がそういう出来事に巻き込まれているのなら、騒動の一つや二つあってもおかしくない。しかしリーベイト聖王国も政治は安定している……だからまだシナリオは始まっていないと思うんだけど」
「それらを探るには、一つしかないな」
と、エーメルが俺へ向け話し出す。
「外交によって、リーベイト聖王国と親密になるしかない」
「そうだけど……俺が単身行っても意味ないだろ?」
「ならば組織の代表者という形で行くしかないわね」
リーゼが俺の言及に対し告げる。
「バールクス王国……確かにリズファナ大陸とは交易はしていたはずだし、賢者の伝承も存在している。賢者の血筋かつ、魔王を討った存在がいるバールクス王国なら、潜り込める可能性はありそうね」
「力業ではどうにもならないってわけだ……ということは」
「国の力を用いて……具体的に言えばバールクス王国の看板を背負うことで、情報を得ることができますね」
ソフィアが述べる……現在の俺の立ち位置は星神を討つ組織の長。加え、ソフィアの婚約者。そして英雄。これらの立ち位置を利用するってことか。
今までとは異なる戦いになりそうだが……目標は定まった。星神との決戦に備えて準備を進めながら、それらのこともこなしていこう。また、そこに加えアンジェの予言……星神について知ることのできる手がかりがある。それもゲットする……目標は多い。しかしあらゆることを全てやる……強く決意した。




