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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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舞い戻る者達

 俺達は全ての準備を済ませ、幻獣が施した能力により彼らのすみかへと帰還する。元々拠点としていた島へと移動した後、星神の使徒の位置などについて情報を受け取る。


「明日、一斉攻撃を仕掛ける」


 状況を把握してからデヴァルスはそう告げた。


「使徒の動きは予定通り……いや、幻獣達の貢献により少しばかり動きを鈍らせてはいるが、それもほんの少し。余裕は皆無だ」


 難しい表情ではあったが、決して悲観的というわけではない。しっかりと準備を行っていることがその理由。自分達に倒せるだけの力はある……俺もまた似たような考えだ。

 仲間達も厳しい表情ではあるが、決して負の感情があるわけではない……そんな中で俺はデヴァルスの説明を聞き続ける。


「作戦概要については事前に説明したとおり。現在は配下がきちんと休めるように色々と作業をしているから、もう少しばかり待ってくれ」

「……明日には作戦も始まるし、いいんじゃないか?」


 俺の疑問に対しデヴァルスは「そうもいかない」と応じる。


「最善を尽くすべきだろ?」

「そうかもしれないが……無理はするなよ」

「わかっているさ。では明日に向けて英気を養ってくれ」


 と、言われても基本的にここに来てやることはないからな。各々活動を開始する中で、俺は仲間達を観察する。

 中継者の役割を担う面々はここで再度手順の確認をするため各種族と話をし始めた。俺はどのような魔法を使うのか……その辺りについて再確認するくらいで、やることはほとんどない。ベッドで休めるまでは、海でも眺めることにしよう。


 そんな感じで歩いていると、後方から足音が。振り返るとそこにはアンヴェレートの姿があった。


「……どうしたんだ?」

「一人だけ海へ行こうとする人がいたから、興味があってついてきただけよ」


 ――彼女については戦いの行く末を見守りたい、ということで帯同した。戦闘能力は皆無なのだが、今回の戦いに際し色々と助言もくれたので、ついていくと表明した時反対する人は誰もいなかった。


「ま、それほど話は難しくない……俺達の全力を星神の使徒へぶつける。それだけだ」

「シンプルねえ……ま、あなたがそう思っているのであればいいけど」

「……そういえば、ユノーはどうしたんだ?」


 いつも彼女について回る天使の姿がない。


「今は他の人と話し込んでいるわ。何にでも興味を示す子だからね。悪いようにはならないし、問題はないでしょう」

「そうか……」


 やがて俺達は海へ。ある意味アンヴェレートとここで顔を合わせて全てが始まった。


「……十日間か。短かったけど、長かったようにも思える」

「めまぐるしい準備だったからね。本来なら一年くらいは必要な出来事をあれだけのペースでこなせばそうなるわね」

「星神の使徒について、色々思うところはあるけれど……こういう非常事態になっても俺達組織が中心になって動くことができた。その事実を確認できたことは大きいな」

「確かにそうね。本当ならこんな出来事が突発的に発生して欲しくはないだろうけれど」

「相手が相手なんだ。仕方がないさ」


 肩をすくめながら俺は応じる。


「使徒については全力を尽くすとして……気になるのはアランだな」

「星神に連れ去られた転生者ね」

「そうだ。彼についてどうしているのか……きっと顔を合わせれば殺し合いになる。もう人として戻ることはできないだろうけど」

「救いたいと思っているのかしら?」

「できれば……けれど、それをすることで仲間が危険な目に遭うとかになったら……そういう考えは捨てないといけない」


 まずは、仲間達を守ること。これが第一だ。


「アランという人間を、星神はどうするつもりなのかしら?」

「そこまではわからない……が、俺達を使徒なんてものを使ってけしかけたくらいだ。いずれ戦うことになる……のは間違いないんだろうな」


 そこで俺は一つ息をつく。


「そういう風に、取り込まれた人間が他にもいるんだろうか?」

「転生者が同じような目に遭っている可能性があると?」

「転生者じゃなくてもいいんだけど……」

「そういえば」


 ふいに、アンヴェレートが口にする。


「思うのだけれど、賢者という存在が転生者である可能性は……どうかしら?」

「それについてはわからない、としか言いようがないな。あり得るかもしれないけど、それが星神との戦いで関連してくるかはわからない」


 もし賢者が転生者であったらさらに謎が深まるな……結局、転生というのはどういう意図で誰が行っているのだろうか?

 星神のことを調べる内に、その辺りも解明されるのだろうか……本筋とは関係の無い話なので調べる必要はないのだが、俺の出生にまつわる部分だ。気にならないと言えば嘘になる。


 俺やアランの転生自体が星神に関係し、作為的に行われているとしたら……俺は、どうすべきなのだろうか?


「一つ確実に言えることがある」

「それは?」

「星神に関係していることはたぶん、間違いない……どういう関係性であれば、そこは揺るがないと思う。そうであれば、転生者は星神を討つために呼ばれたのかもしれない。だとしたら、この戦いは俺の使命……そうでなくとも、これはきっと俺がやらなければならないことだ」

「ずいぶんと肩に力を入れるのね」

「それはまあ、当然だろ」


 再度肩をすくめて話す俺にアンヴェレートは笑みを浮かべる。


「責務か……それであなたが強くなるのならそうやって考えるのもいいけどね。あまり思い詰めない方がいいわよ?」

「助言ありがとう」


 答えながら俺は海岸線を見据える。ここからは見えないが、この場所……地域と言うべきか。幻獣達が住まう領域に星神の使徒が存在し、全てを蹂躙しようとうごめいている。


「……アンヴェレートは、ここに残るのか?」

「迷惑でなければ帯同するつもりよ。使徒という存在……興味もあるからね。もしかすると、私なりにつかめるかもしれない」

「星神という存在について?」

「ええ、そうよ」


 小さく頷く彼女。今回の件で星神に対抗する策については色々と出たが……まだ足りないのではとも思う。彼女の助力などによって、それを打開できれば……そんな風に思いながら、俺は彼女が帯同することを了承した。


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