共鳴の完成
デヴァルスから受けた魔法の構築手段としては、ずいぶんと体が熱を持つような感覚になった。とはいえこれは「疑似体験させている影響」とのことで、どうやら天使としての体躯を持っていなければ、完全に同一とは呼べないものらしい。まあ当然か。
とはいえ結果として色々と参考になった……俺は前世の知識などを活用して強さを得たわけだが、その発想において魔力の収束方法などを改善するという発想には至らなかったし……色々と情報を得たので、どういった魔法を使うのか――改めて検討することができそうだ。
加え、ソフィアなんかも体験して色々と思うところがあった様子だ。ま、今回の一件で参考になるのかわからないが、ひとまず貴重な体験をさせてもらったということで、良しとしよう。
そこから俺達は準備を進めていく……まあ、ここから先は取り立てて語るような劇的な出来事はなかった。仕事の内容も情報だけは入ってくるが、基本的に報告を受けるだけで俺が直接携わったというわけではない。
そうやって一日、また一日と経過していく……星神の使徒については幻獣達の動きが良くなってきたためか、足止めについても予定よりもできているらしい。とはいえ肝心の使徒自体が速度を上げればこの状況は簡単に覆る。よって俺達は予定通りの日数を消費し、準備を進めていく。
そうして決戦まで残り三日となった段階で、俺達は一度集合した。人間側の技術を結集して作り上げた武具……それが完成したらしく、ひとまず『共鳴』状態を試そうということになったのだ。
武具というのがやや大掛かりなもので、傍目から見れば巨大な杖……どうやら大気に存在する魔力を一部取り込んで運用するらしく、そういった特性から大型化を余儀なくされたらしい。
「移動については幻獣に任せればいいため、大型化しても問題はない」
と、クウザなどは語ったので、ひとまずこれで体裁は整ったことになる……では、試すわけだが、今回はいつもの訓練場ではなかった。
「ずいぶんと遠いな」
「それは当然だろう」
デヴァルスが俺に対し返答する。城から山を越えた先にある平原で、俺達は準備をしている。
以前、俺とソフィアの融合魔法によりとんでもないことになった。今回はそれ以上の技法を試す以上はさらに入念な前準備が必要、ということでこういった場所に移動したのだ。もちろん厳重な結界に加え、標的となる的などについても相当気を遣っている。
ただ、俺としてはあくまで『共鳴』状態について試す意味合いなので、俺の方が全力を出さなければ問題ない……のだが、一応『共鳴』状態で威力のある魔法を使おうとすればどうなるか……放出する前段階までは試す気でいるので、万が一のこともあってこうした準備をしているわけだ。
「よし、こっちは大丈夫。もっとも、ルオンさんが本気になればあっさりとたたき壊せる代物かもしれないが」
デヴァルスはそう語るのだが……標的となるべき的はただの丸太なのだが、まとっている魔力は異質なもの。相当無茶苦茶な防衛魔法を使用したな。
「よし、始めるとしようか。前回の反省を踏まえ、位置なども変更している」
まず俺の真正面に精霊。そこから時計回りで天使、竜族、魔族、幻獣、人間という形になっている。天使と竜が入れ替わった形だな。
「準備を」
デヴァルスが指示を出す。途端、中継者が前に出て魔力を収束し始めた。
それから程なくして魔降の道具へと魔力が集まっていく……それは以前感じたように静謐を感じさせるものであり、また同時に武具へ注がれていく魔力に触れ、凄まじい力なのだと認識できる。
以前と比べ魔力量も膨大。ただ出力が高くなっている分だけ制御も難しいらしく、少しでも集中が落ちると『共鳴』状態が解除されてしまう。それでも魔力量を調整してすぐに戻すのだが……こればかりは頑張ってもらわないと行けないので、俺は任せるしかない。
「ルオンさん、魔法を」
さらなるデヴァルスの指示により、俺は『ホーリーショット』を行使する。直後、腕に相当な熱を抱いた。
やっぱり『共鳴』状態の時はヤバいくらいの威力上昇効果があるな……俺がデヴァルスへ視線を送ると、彼は小さく頷いた。では……的へ向け、放った。
それは恐ろしい速度で的へ向かい――爆音が轟いた。的を中心にして光の柱さえ生じ、下級魔法のはずなのに『ラグナレク』でも放ったのか、というほどに閃光が拡散する。
「これで、下級魔法ですか」
ソフィアが呟く。中継者の面々も目前の光景を固唾を呑んでいる。
「ルオン様、上級魔法については?」
「今からやる……が、正直怖いな。下手するとこの平原を突き抜けるかもしれない」
「魔法を発動寸前くらいまでで留めておけば大丈夫だろう。きちんと扱えるのかを試さないと」
告げたのは背後にいるオルディア。俺は「そうだな」と同意した後、体の中で『ラグナレク』の準備をした。
それと同時に、魔降の武具に収束した魔力が俺の全身へと収束し始める――奇妙な感覚だった。先ほどとは異なり熱は感じない。全身に巡ったためなのか、それとも熱なんて感覚を通り越しているのか。
ともあれ、発動自体はできそうな雰囲気。呼吸を整え頭上の空間を歪ませる。剣を出す寸前くらいまでは……と思ったのだが、下手に射出させて周囲の地面に着弾したら俺達も巻き込まれるな、これ。光の剣を少しだけ出した状態で留めよう。
そうして剣が現われる……のだが、その魔力に対しアナスタシアが言及した。
「これは、かなり危険じゃなあ」
「俺もそれは理解できるよ……放り投げるつもりはない。というか、制御はこれまでと一緒だ。撃つ方角なども指定できる。威力も出力も上がっているはずだが」
「制御をこの場にいる全員で分担しているからだろう」
と、クウザが意見を述べた。
「ルオンさんに魔力を預けているが、その魔力を調整しているのはこちら側……よって、ルオンさんは自分の魔力だけを制御しているため、融合魔法などよりも使う分には楽だという話だ」
「なるほどな……うん、十分だ」
魔法を解除する。ひとまず成功だ。これで使徒を倒せるかわからないが。
「なら、後は向かうだけだな。今度こそ……使徒を、討たなければ」
俺の言葉と同時に全員が頷く。ひとまず形はなった。後は、この策が成功するよう、全力を出すだけだ――




