魔法の常識
色々と話し合いを行った後、俺は再び作業へ戻った……のだが、ここからは正直語るような事柄はほとんどない。決戦までの間に人間達が力を結集した者を作成し、それを利用してリーゼ達が鍛錬を繰り返す……主にやっていたのはそれだけだ。
デヴァルスは今回発見した『共鳴』という手法について、分析を行い現状人間の力について十分な底上げがあれば星神の使徒を討てるだけの出力を得られることがわかった。残る問題としては高速再生能力を持つ使徒をどのような魔法で消し飛ばすか……単純に『ラグナレク』とかでいいのか。今回ソフィアは精霊の力を結集して俺へ流す中継者の役割を担っているため融合魔法は使えない。『共鳴』により十分な魔力を得ることは可能になったが、俺の魔法がどれほどまで高められるか――
「で、相談というわけか」
話を振ったのはデヴァルス。俺は小さく頷いた。
組織内にある一室を使って俺とデヴァルスが話をする。決戦までまだ期限があるとはいえ、今から新たな魔法を開発するのは微妙かもしれないが。
「デヴァルスさんの話に寄れば『共鳴』状態の魔力に俺の魔法を上乗せすれば、使徒を倒せる……というわけだが、普通に光の剣を作って射出して……で、倒しきれるのか?」
「使徒の攻撃については防ぐ手立てがある。よって、一度だけでなく二度三度と攻撃し続ければ、いけるんじゃないか?」
ふむ、最大出力で攻撃する必要性がなくなったため、連発するということも視野に入ってきたわけか。
これまで俺達は魔降の武具へ力を集中させ、その力を強力無比な魔法へ注ぎ、一撃で再生する暇もなく倒す……という考えだった。しかし『共鳴』という状態を発見したことで選択肢が増えた。最大出力で放つのであれば一撃しか使えないかもしれなかったが、今の方法なら連発もできる。
「これ、星神そのものに対し切り札になるか?」
「現状、魔降の武具へ力を注ぐことは可能だが、非常に不安定な技術だ。例えばこの魔力を武具へ宿す、というのは非常に難しいと思う」
天界の長でさえそう言うのだ。難易度は最大級といったところか。
「しかし、星神へ挑むために必要な魔力量というのは本来膨大……だったはずだが、それを解消できるのは非常に大きい。今後はこの『共鳴』に能力を絞って技法を開発していくのがよさそうだ」
「俺の方もそうした方がいいか? 色々と開発中の技とかあるけど」
あらゆる相手に特攻状態を付与する能力とか……と、ここでデヴァルスは首を左右に振った。
「ルオンさんは引き続き自分の技や魔法を磨いてくれればいい」
「いいのか?」
「というより『共鳴』状態は使用者の魔法や技に上乗せできるわけだ。使用者の能力が高ければ高いほどに相乗効果が現われる……この技法を使わずとも星神に対抗しうるだけの何かを持っている……そういう人物がいてこそ、星神に対する切り札になるだろう」
「……わかった。なら使徒を倒した後はそちらに注力する」
「ああ、それがいい」
「ただ、本当に使徒を倒すことができるのか? 検証した結果、それだけの威力が出せるとデヴァルスさんは判断したみたいだが」
「不安に思うのは当然だが、当てずっぽうで述べているわけでもない。これは天使や精霊、さらに幻獣の代表者が意見を出し合って導き出した結論だ。信用してくれていい」
……まあ魔力という分野において人間より先へ行っている彼らの言葉だ。俺から言えることは何もないか。
「なら、俺の方はどういう魔法を使うかだけど」
「技のように開発しているものとかは?」
「あるにはあるけど……決戦までに完成できるどうかは微妙だぞ」
自分なりに『ラグナレク』超えるものとして考えているものはある……が、
「ルオンさんは習得も早い。今からやっても十分間に合うと思うぞ」
「そうかなあ……」
「ここには魔法のスペシャリストがたくさんいる。彼らの意見を参考にすれば、どうとでもなるさ」
……俺としては内心本当に大丈夫かと疑いを抱く面もあったが、ともあれやってみないと始まらない。連発も視野に入れるなら最悪『ラグナレク』を利用した形でも十分いけるとは思うし、やるだけやってみるか。
「ちなみにだが、どんな魔法だ?」
「今回使うものであれば、かなりシンプルだぞ」
単純に『ラグナレク』を超える魔法。そもそも『ラグナレク』は俺が修業時代から習得し、その特性なども体で覚えているほど馴染んでいるものだ。よって、似たような構築方法でより強力なものを……と、考えたわけだ。
あと、星神を相手にするならば属性は抜いた方がいい。本来『ラグナレク』は光属性なのだが、属性というのは場合によって相手に耐性があるなら非常に厳しくなる。ガルクと最初に戦った時に魔法を無効化されたケースがあるけれど……あんな形になってしまったら目も当てられない。
「使い慣れたものをより強化する、といった形か?」
「考え方はそれに近いけど、光属性という特性は抜かないと。ただ、あの魔法から光属性を除きました、という形で簡単に魔法は作れないし」
俺の想像力の限界かもしれない……などと思っていると、
「なるほどな……ルオンさんも常識に囚われているのかもしれないな」
「常識?」
「ルオンさんはこの世界を別の視点で見ることができている。魔法や技についても同じだが、それを使用する場合はこの世界における常識の範囲内で使っている」
「それはまあ、当然じゃないか?」
「それを打破するのに良い方法があるぞ?」
何をするんだろう……現状、何でもできそうな気がするしどんなことをするのか気になるけど。
「でも、俺は理論的なものを語られてもどうしようもないぞ?」
「それは百も承知だ。ルオンさんのやり方に合わせてアドバイスする」
なんだか心当たりがあるような感じだが……と眼差しを送っていると、
「ルオンさんの事情を把握しているからな。色々と考慮してやらせてもらうが……これもまた異例中の異例だな」
何をする気だろう。現時点で異例づくしだし、この先に何があるのか。
「ルオンさんの考えが劇的に変わるものなのは間違いない。参考にしてもらい、星神との戦いに生かしてくれればいいさ――」




