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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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魔力共鳴

「た――退避!」


 思わず俺がそう叫ぶと同時、強制的に術式を解除して避難した。天井からずいぶんと大きな建材が降ってくる……のだが、ここはあくまで魔法による拡張空間。地面に落ちた建材は魔力の粒子となって消え失せた。


「あ、危ない……いや、当たっても別に平気なんだけど、思わずよけてしまったぞ……」

「予想外の展開だな」


 頭をかきながらデヴァルスが告げる。ちなみに俺に加え中継者の役割を担っていた面々が退避していた。


「魔力を際限なく注ぐよりも、均一にした方が威力が上がるとは」

「これ、理屈で説明できますか?」


 困惑した表情でソフィアが問う。するとデヴァルスは一考した後、


「わからん」


 まあ六種族が集まって何かをやるなんて初めだから、当然どういう要因なのかはわからないよな。


「なんだか不気味ですね……」


 ソフィアの感想にデヴァルスは腕を組み、


「威力が上昇、というのは魔力同士が相乗効果を生み出した結果によるものだが、それではなぜ相乗効果を及ぼしたのか……そうだな、これを『共鳴』状態と呼ぼう」

「共鳴?」


 聞き返すとデヴァルスは小さく頷く。


「魔力同士が相互に活性化して、強化状態になること、とでも説明しようか……これがわかっただけでも大きな収穫だ」

「これを利用すれば、星神の使徒も……」

「今均一にした出力では足らないだろうが、これなら付け焼き刃でもやりようによっては上手くいきそうだ。問題は、魔力量の最低値が人間にあること。つまり――」

「私達が頑張らないといけない、と」


 リーゼがため息をついた。


「私達だけでなく、人間種族が頑張らないといけないわけだけど」

「バールクス王国だけでは足らないかもしれないな」

「その辺りは、既に色々と話をしているみたいだけど、果たして間に合うかどうか」

「ならば、その支援に以降は注力しよう」


 デヴァルスが明言する。ということは、


「以降、検証はなしか?」

「単純に膨大な魔力を調整するのではないからな。方法が変わった以上は、今後のプランも変わる。まずは人間種族の力をどこまで高めることができるか……中継者については現行で問題はないだろう。よって、ここからはいかに魔力最低値を高くするかに掛かっている」


 そう告げた後、デヴァルスは肩をすくめ、


「方針転換だ。『共鳴』状態についてもう少し調査は必要だが……先ほどの光弾の威力からして、ルオンさんが本気になれば使徒を正面突破できるだけの力は出せるはずだ。その手順などについては一考の余地はあるが……ひとまず、この手法で進めよう」


 ――そうして、初の合同演習は終了した。大きな収穫を得たので、活用する……明確な方針も定まったので、各々の動きも良くなるはずだ。

 俺についてはどうすべきなのか……その辺りのことも相談しておくべきか。よって俺は解散し始めたメンバーの中で、デヴァルスへと声を掛けた。






 一度目標が定まったら、以降はずいぶんと作業ペースも早まった。できる限り力を注ぐという目標は相変わらずだったが、人間種族の底上げが重要であり、また限界まで魔力を注がずとも使徒を討てるかもしれない、という事実に気付いたのはかなりの収穫だった。

 俺の方も魔降の武具の検証は相変わらず行うが、方針は少し変える。どれだけ無駄なくあの『共鳴』状態で魔法を活用できるのか……その辺りについてなど、考察することにした。


 そうして朝からバタバタしていた一日がようやく終わり……翌日。その日、俺は朝からひたすらデスクワークを続けていた。

 たまに訓練場へ赴いて検証したりもするが、中心はやはり机に向かっていること。そしてもう一つ、俺としてはやっておきたいことがあった。


「うーん、さすがにないか……」


 頭をかきながら俺は目を通していた書物をパタリと閉じる。やっておきたいこと――それは、星神についてだ。

 幻獣などを含め、その正体をつかみ始めた俺達ではあるのだが、まだまだわからないことも多い。星神本体に関する情報があれば、何か役に立てるかもしれない……と思いながら調べていたのだが、残念ながら収穫はゼロだ。


「まあそう簡単には出ないよな……」


 ため息をつきながら、徒労に終わった作業を振り返っていると……俺に近づいてくる人影が。


「なんじゃ、別のことをしているのか?」


 アナスタシア公爵だった。竜達の作業を主導している立場であり、先ほどユスカやロミルダが訓練場へ向かっていたので、色々と作業をしていることだろう。


「ああ、星神について調べていたんだよ」

「謎多い存在じゃが……その顔だと収穫はなかったようじゃな」

「ああ、まったくだ」

「最初に顔を合わせたのは、ネフメイザとの戦いの時じゃったか?」

「そうだ。ネフメイザも関係者であり、だからこそ時を巻き戻すなんて無茶をやっていたわけだが……俺の前に出現したのは、戯れの一種みたいだったな」


 地底で初遭遇した時、星神は俺の姿を象っていた。以降、似たような形で遭遇もしたりして……今、使徒と戦うことになっている。


「ふむ、これを機に色々と調べたいということか……しかし、資料などはない」

「そうだな」

「ならば、現状わかっていることを整理してみてはどうじゃ?」

「……意味あるのか?」

「無論じゃ。これまで星神と遭遇したことでどういう情報を得たか。それを今一度調べて見ると、発見があるかもしれん。調査というのは得てしてそういうものじゃ」


 ふむ、ならそういう方向で考えてみるか。


「そうじゃな……では、一時間後くらいに話し合いの場でも設けるか」

「話し合い?」

「天使などと情報共有をしていけば、整理した際に何かしら気付いてくれるかもしれんぞ?」


 ……まあ隠すような情報もないわけだし、人数を多くして考察した方が効果的ではあるか。


「わかった、それじゃあ――」

「参加者についてはこちらでまとめよう。ルオン殿は今一度星神について頭の中で整理しておくと良いじゃろう」


 その言葉と共に、アナスタシアは俺の席を離れた。誰を呼ぶのか少し気になったけど……ひとまず星神について思い出す方が優先だ、と思って俺は彼女へ声を掛けることなく、頭の中で情報整理をすることとなった。


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