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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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一点突破

 ガルクへ最初に挑んだのは、リーゼ。彼女のハルバードがうなり、ガルクの首筋へと吸い込まれていく。

 しかし、届く寸前に固い壁に当たったかのように弾かれた。ガルクは体表面だけではなく、周囲に障壁を展開しているらしい。


『……防御だけとはいえ』


 と、ガルクはデヴァルスへ言葉を向ける。


『妨害行為は構わないだろう?』

「そこは自由だな」


 返答の瞬間、斬撃を放ったリーゼの足下に光が。直後、彼女を拘束しようと光の帯がいくつも出現した。

 それに対しリーゼは即座に後退。光の帯は空を切り、一度地面に収束して光も消える。


『時間制限などはあるのか?』

「特に定めているつもりはないが……まあ消耗すれば勝ちの目がほぼなくなる。手詰まりだと判断した段階で終わりにしよう」


 ガルクならいくら防御しても魔力が減るようなこともないだろうからなあ。先にリーゼ達が疲れきる方が早い。

 もし勝負が決まるとしたら、全力を出せる今だろうか……それにガルクも仲間の手の内がわかっていない。奇襲を仕掛けるにしても今が好機だ。


 対する仲間達の戦法だが……様子を窺うにしても相手は神霊だからな。どう立ち回るのか――加え、もう一つ問題がある。


「……一つ、いいか?」


 俺はデヴァルスへ疑問を呈す。


「これ、どう頑張っても単独で攻撃を当てるのは無理だよな?」

「ルオンさんほどの力を持っているのなら可能じゃないか?」

「それはいくらなんでも無茶な気が……」


 確かに俺の『ラグナレク』くらいの威力を出せる手段を持っていたとしたら、あっさりと終わるのだが……ここでアルトが前に出た。全力の剣戟。体を回転させ、遠心力を利用した豪快な技。

 刀身にはありったけの魔力――直後、彼の大剣がガルクの障壁に直撃した。ガガガ、と硬質な音が広間を一気に満たしていく。


 だが、ガルクは涼しい顔で受けていた。当然ではあるが、神霊の力を単独で打ち破るのはかなりキツイ。


「ルオンさんの言いたいことはわかる」


 と、デヴァルスは俺が質問したいことについて言及した。


「単独で倒せないのであれば、当然ながら連携でどうにかしなければならない……ただこれは試練と称した上で勝負も含まれている。誰が勝者となるのか……相手を出し抜くためには、一人で攻撃を当てることが確実だ」

「でも、それは難しい……」

「まず神霊ガルクに通用するだけの攻撃を持っているのなら、最初の段階で使っているだろう。けれど、どうやらそれはなさそう――」


 と、語る間に次はエイナの攻撃だ。彼女が握る剣から魔法陣が生まれる。これは堕天使との戦いで見た上級技の『天空法剣』……本来は光が伸びて巨大な剣に変じ、叩きつけた相手の中心に白い火柱を上げる大技だが、今回は違っていた。

 光は肥大化することなく、刀身の長さに合わせて魔力を留める。大きくして攻撃範囲を広げるのではなく、凝縮して一点突破しやすいようにした。加え、刀身から魔法陣だけでなく、炎が生じる。


 その炎の色も特徴的だった。彼女が使用する技は本来白だが、その炎は金色……アレンジ、だけじゃなくて自分なりに技を鍛えた結果、強力な技に昇華したということか。ガルク自身は地と光の特性を持ち、無効化する。『天空法剣』は光属性を伴ってはいないにしろ、少しアレンジして問題ないようにしたか。


「あれは……」


 デヴァルスも興味深そうに見据える。直後、エイナは姿勢を低くしながら滑り込むようにガルクへ迫る。

 それは神霊もしっかり動きを捉えていたはずだが、動かない。牽制的な魔法くらいは使用してもおかしくなかったが、それもなし……いや、そうした魔法を発動させる暇さえ与えぬ速度で迫ったと考えるべきか。


 エイナの剣がガルクへ迫る。当然壁のように存在する魔力障壁にぶち当たるのだが……アルト以上に、軋むような音を上げる。

 真正面から突破できるとは考えにくいが、かなり頑張っているか……と、そこへアルトが大剣を再度振りかぶり、剣を放つ。目標はエイナがせめぎ合う部分。どうやら一点に集中して攻撃することにより、破壊しようという形らしい。


 それは果たして成功するのか――そこへさらにリーゼが加わる。ハルバードが薙がれ、三つの刃が一点へ集中する――


『見事な剣戟だな』


 そうした中で、ガルクは冷静に言葉を紡いだ。


『しかし、まだだな……まだ、足りない』


 轟音と閃光。次の瞬間、障壁と対峙していた三人が吹き飛ばされた。

 とはいってもせいぜい数メートル後退させられたくらいで、即座に体勢を立て直す。そしてガルクについては……障壁に小さなヒビは入っていた。あと一歩かどうかはわからないが、さらに援護があったなら砕くことだってできていたかもしれない。


 そう、援護があったら……ラディなんかは魔法を放とうとしていたようだが、一歩遅れた。フィリやシルヴィが動くなど、全員のタイミングが一致していたら勝ちの目はあったかもしれないが、失敗した形だ。

 こうなった原因は今回の試練そのものに関係している。選ばれるのは二人。そしてリーゼ達は単独でガルクの障壁を破壊することは厳しい。先ほどのように協力して攻撃することがほぼ必須だ。


 けれど、仮に障壁を砕くことに成功しても、そこからもう一歩踏み込んでガルクに攻撃を当てなければいけない。障壁を破壊することに注力すれば、確実に後れを取ることになる。かといって出し抜こうと余力を残して倒せる相手でもない……加え、組織の人員で共に鍛錬しているとはいえ、突然神霊と戦いどう協力して戦うのか……その辺りを打ち合わせする暇もないため、手を組むとしてもどれほど相乗効果があるのか。


 この辺り、デヴァルスはどう考えているのか。それも計算していると考えてよさそうだけど……、


「さっきの質問だが」

「言いたいことはわかるが、ネタばらしは後みたいだな」


 そう彼が告げた矢先、今度はカティとラディ、そしてクウザが魔法を放つ準備を行う。お次は魔法だが、二人の魔法を組み合わせたとしても、さすがに届かないだろう。どうする気だ?


「このまま魔法を撃っても、神霊の障壁を突き破るのは無理だな」


 デヴァルスは解説する。


「なおかつ魔法使いである二人にとっては、接近戦を挑む者達よりも攻撃を当てるのが難しい。ルール的にはどんな形でも攻撃を加えればいいからな。よって、状況的には不利だが……かといって自ら潰れ役となるのも望ましくない」


 デヴァルスはさらに述べる……それはまるで、目の前の出来事が全て想定通りだと考えている様子だった。


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