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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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二つの候補

 先ほどは槍から放たれた光を切り払って対処したが、今度は槍ごと迫ってきたためそれもできない。たぶん槍から射出したら槍そのものが砕けてしまうので、留めることを優先している、かな?

 槍が砕けた瞬間、放たれた光の威力が大きく下がっていた。デヴァルスとしては槍が壊れないギリギリのレベルで、なおかつ槍が砕けても威力が保てるようにゼロ距離で攻撃する……みたいな目論見があるのだろう。


 対する俺の剣だが、光によって押さえつけられていた。さすがに膨大な力により強引に攻め立てることはできない……が、このまま耐えていればいずれ槍の方が限界を迎える。ならばデヴァルスはどうするのか?


「……ここから、どう戦うつもりだ?」


 圧倒的な光の奔流に包まれる中、俺は問い掛ける。それに、


「無論――こうする」


 答えた矢先、俺の剣へ光を浴びせ始める。武器破壊とかではなく、剣に光を当てて吹き飛ばすつもりか。

 まともに食らった場合、ダメージは……食らうか微妙だけど、場合によっては結構危ないか。体が宙に浮いてしまったら光を防ぐこともできなくなる。例えば壁に叩きつけられてしまえば、デヴァルスが収束した光の魔法はこの部屋の壁を突き抜けるだろう。


 それは彼もわかっているとは思うのだが……それでもなお、突き進んでくる。なんというか、あれだな。もう引き返せないという感じかな。

 俺としては非難の一つでも言える立場かもしれないが……小さく口の端を歪めて思わず笑った。この状況下で、受けて立とうという気持ちが芽生えたためだ。


 結局のところ、俺はこの戦いを楽しんでいるのだろう……不謹慎かもしれないが、共に戦う者達の力を目の当たりにして、一緒に強くなれているというのは少なからず高揚感がある。さらに言えば、彼らの影響で俺はさらに強くなるし、星神の使徒を討てるだけの力を手にすることになる……強くなるということから考えると、快感に近い感情もある。


 この気持ちは、一歩間違えれば暴走する危険性だってあり得る。俺は自分自身、この力を振るい破壊の限りを尽くそうなんて考えてはいないけれど、そうした悪に墜ちるような考え方をする危険性だってあり得たし、今後あるかもしれない……自分を今一度戒める必要があるだろう。


 でも、強くなることは、確かに俺にとって嬉しいことなのだ……死なないために強くなった俺だが、それでも魔法などを習得していくことで、達成感はあった。無類の強さを手にしてから、色々技術を新たに得たけれど、最初の時のような達成感はあまりなかったかもしれない。

 けれど今回、仲間の影響で……彼らと戦い、その力を間近で受けることによって、自分もまた強くなれるという確信を得た。それが、今のような高揚感を生み出しているのかもしれない。


 考える間も剣と光はせめぎ合う。強力ではあるが、どうやら俺を吹き飛ばすほどの出力はないらしい……それはデヴァルスも同じ見解のようで、光の先に見える彼の表情は、どこか苦々しかった。

 とはいえ、その顔つきに加えどこか晴れ晴れとした様子も窺える……現時点での実力を深く認識し、次の手立てを頭の中で構築しているのかもしれない。


 ともあれ、ここでの勝負は……俺はさらに力を入れる。それにより槍の方がとうとう耐えきれなくなり、次第に光が収束していく。

 下手すると爆発とか、そういうことだって起きそうだったが……デヴァルスはさすがにそんな無茶はしなかった。勝てないとわかると即座に矛を収め、光が途切れていく。その間にも槍が崩れ始め……天使との戦いは、あっけない形で終わりを告げた。






「一度、休憩するか」


 デヴァルスは俺との戦いを終えると、そう提案した。


「ルオンさんだってそれなりに疲れただろ」

「まあ、な……ただ、万全の状態に戻すのであれば、少しばかり時間が欲しいな」

「なら昼過ぎにでも再開するか。その間に各々星神の使徒に対して色々と検証してもらえればいい」


 時間的に余裕はないので、作業を進めるらしい……と、俺は一つ質問。


「率直に聞くが、いけそうなのか?」

「わからない」


 と、デヴァルスは真っ正直に答えた。


「星神に類する存在との戦いなんてこれまでなかったからな。相手の能力の多寡などがわからない以上、どれだけ入念に準備しても不安はつきまとうさ」

「それもそうか」

「ただ、ルオンさんがいるからな。星神にとっても、ルオンさんについては脅威に映っているはずだ。もし星神の思惑を外れるだけの力を生み出せるとしたら……それは間違いなくルオンさんだ」

「買いかぶり過ぎだと思うけどな。俺は確かに強いという自負はあるけど、今回のように単独で使徒を倒すことはできていないわけだから」

「だが修行を続ければ、星神に一番近い存在となれるのは、間違いなくルオンさんだ」


 そう語ると、デヴァルスは俺へ尋ねる。


「今回の戦い……色々と自分のことも見つめ直すことができたんじゃないか?」

「もしかして、その辺りのことも考慮しているのか?」

「多少なりともそういう意図があったのは事実だ。もっとも、本質的な目的は、先に語った通りだが」


 ……なんというか、手のひらで踊らされている感はあるなあ。


「次は神霊……ガルクが相手かな? 幻獣のジンもここにいるけど」

「幻獣が参加するかどうかはおまかせするさ……あ、それと今後の予定を伝えておく」

「今後? 技法を完成させるために、まだ手順が必要なのか?」

「ここからはひたすら研究、検証の繰り返しで仕事内容としては地味だが……もう一つ、やっておかなければならないことがある」

「それは?」

「……今回、それぞれの種族で力を収束させ、それを中継者を介してルオンさんへ注ぐわけだが、その中継者についてもきちんと理解しなければならない」

「ソフィアとか、ロミルダとか?」

「そうだ」


 ……現状、精霊の力についてはソフィアが担当。竜はロミルダ、魔族はオルディア辺りか……天使についてはレスベイル。残っているのは幻獣と人間の力だが――


「残る二つの種族については、ある程度見当を付けた」


 そうデヴァルスは口を開く。


「ルオンさん達が迷宮に入り込んでいる間に、持ちうるデータなんかを分析して検討してみたんだが……まだ候補も挙がっていない二つの種族……幻獣と人間の中継者について、ある程度算段をつけた――」


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