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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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過去への挑戦

 一難去ってまた一難……今度の相手は天使というわけだが……ん、デヴァルスが何やら装備を整えている……で、武装なのだが、


「……槍?」

「そうだ」


 ヒュン、と一度軽く素振りをするデヴァルス。


「しかし、観戦していて思ったが……魔王も竜も色々と考えているんだな」

「……その言い方だと、何も考えないでただ強力な武装を持ってきたのか?」

「いや、天使は天使のやり方で、と思っていたんだが……それほど特徴的なものではないな」


 デヴァルスは語りながら槍を構えた。天界の長であるためか、こうして対峙するだけでかなりの威圧感がある。


「こちらとしても色々と考えた。結果として言うなら、もう少しばかり天使の可能性というか……その力をしっかりと分析して、引き出そうと考えた」


 そうデヴァルスが語る間に、彼が握る槍が白く光り始めた。


「先ほどのような特殊な能力というのは抱えていない。天使としての力を練り上げ、この槍に凝縮した」

「……力を結集した武具、ということか?」

「ルオンさんに託した技法と性質は違うな。こちらはそうだな、天使の攻撃面だけを抽出したもの、と言うべきか」


 攻撃面……? イマイチ理解できない俺に対し、デヴァルスはさらに解説する。


「今回新たに武具を作成しようとした際、ルオンさんへ託したやり方はリソース面で不可能に近い状況であったため、他の方法を模索した。その中で考案したのが、攻撃的な魔力を集結させて先鋭化させる方法だ」

「そもそも、魔力に攻撃と防御があるのか?」

「魔力というのは攻撃魔法が得意なものと、回復魔法が得意なものなど……まあ、特性みたいなものが一応備わっている。といっても普段は混ざり合っているし、分離する必要性もないのだが……これを分離したら、同じ魔力量でも攻撃力が高くなるのがわかった」


 ……魔力量の内攻撃的な魔力の比率を上げれば、殺傷能力が高くなるってことかな?


「天使の力を単純に集中させるだけでは、そもそも器となる武具がないという面もある。よって、今回は攻撃能力に特化した武具を作成した。その結果がこの槍だ」

「なるほど……で、攻撃的な魔力純度百パーセントの力は、どれほどだ?」

「ま、見ていればわかる」


 槍がさらに輝く。俺はそれを見てなんとなく光属性魔法を思い出す。


「俺の魔法みたいな力が宿っているのか?」

「お、鋭いな。ルオンさんが持つ最上級魔法を参考にさせてもらった」


 つまり『ラグナレク』か。


「武具に収束させた効果は極めてシンプルだ。ルオンさんが持つ最上級魔法。あれを再現し、より強化できないかというもの。ルオンさんが操る魔力などを分析して、この武具に付与した」

「……天使に参考にされるとは」

「それだけ完成された魔法ということだ」


 笑うデヴァルス。そう言われると悪くない気はするのだが……、


「効力としては確かに単純ではあるな……ただその力をまとわせただけだったら、使徒に効果は薄いんじゃないか?」

「一発だけならそうだな」

「……ん?」


 聞き返すとデヴァルスはさらに解説を進める。


「例えばルオンさんの持つ魔法を、全開出力に比べれば劣るとはいえ……連発できたら強力じゃないか?」

「なるほど……」


 あの槍は武器、というよりは大砲のようなイメージを想像した方が良いかもしれない。


「ただ、あんな魔法を連発って……武具に備わる魔力はもつのか?」

「そこが重要だ。もちろん、槍自体無事では済まない。こちらが槍に魔力を収束させるよりも消耗の方が早いからな」

「だったらすぐに壊れるだけでは?」

「ああ、そうだ。だから武器は使い捨てだ」


 攻撃に特化した代償、といったところかな? 事前に魔力を溜めるだけ溜めておいて、戦闘の際に活用する――


「ただ、使い捨てで耐久性などの考慮を入れなくていいという結論は、こちらとしても色々と選択を増やすことができた」

「今後、そういう兵器がドンドン量産されると?」

「かもしれない」


 ……普通に剣を持つだけではなく、強力な武具を使い捨てで用いる。なんだか環境に悪そうなやり方ではあるけど、この方法だったら例えば俺達の仲間達にも強力な武具を手にできる可能性もあるな。


「それ、俺達の組織にも転用できるか?」

「可能だが……例えば星神そのものと戦う場合、いつ何時武具が壊れるかわからないため、正直推奨はできないぞ?」

「そっか……壊さないようにするためには、方法あるのか?」

「現時点では、ない……大昔には、あったのかもしれないが」

「何?」


 眉をひそめるとデヴァルスは小さく息をついた。


「この技術は、古の天使が残した文献を参考にしたものだ。ネルが見つけて、利用できると考えたんだが……完全再現はできなかった」

「古の天使達の技術……それほどのものだった?」

「そうだな。平和ボケしてしまった今の天使達は、技術もまた廃れてしまった……今後の課題でもある」


 そう述べた後、デヴァルスは俺を見据え、


「つまり、この戦いは天使達が再び技術を手にするための戦いでもある……こうやってルオンさんに付き合わせているのも、そういう意味合いがある」

「やり方が強引なんだよなあ……」

「そこは謝ろう。ただこちらも必死なのだと認識してくれればいいさ」


 ――きっと、デヴァルスは現在所持している技術を総ざらいして頭を抱えたのかも知れない。

 レスベイルへ力を注いだ一件については、残っていた天界のリソースを注いだ結果によるもの。それ以外で残ったものとして、今回の武具が限界だった。


「いずれ、耐久力のあるしっかりとして武具を作成させてもらう」


 そうデヴァルスは語る。


「ルオンさん達の組織と手を組み、精霊などの力を借りて……天使達が、星神に対抗できるだけの物を提供しよう。これは、天使としての意地だ。過去への挑戦だ」

「ありがたいけど……頼むから倒れるなよ」

「無論だ。星神との戦いが終わるまで、全力でやる……この戦いはその流れの一つだ。戦ってくれないか?」


 デヴァルスの言葉に俺としては頷く他ない。


「わかったよ。ただ、こちらも容赦はしないぞ」

「ああ――いくぞ!」


 宣言と同時、俺とデヴァルスは同時に踏み込む。そして双方の魔力が解放され、広間を大いに満たした。


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