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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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不明瞭な力

 変化が起きた直後、せめぎ合うエーメルの剣が突然重くなった。純粋な膂力の強化……という解釈もできなくはなかったが、俺はすぐに違うと断定した。


「どういう効果だ?」

「さあ、それは解明しないとわからないぞ?」


 挑発的な言動と共に切り払う。俺は得体の知れない攻撃を受けたことによって一度後退。

 エーメルは大剣を構え直してこちらを窺う。一方で俺はどうしたものかと彼女を見据える。


 周囲の仲間達もどういう効果なのか……魔力による分析を試みている。中には「なるほど」と小さく呟くような者もいた。一瞬だけしか能力を見せてはいないが、その短期間で解析できたことについては組織の解析能力も相当高まっているな、と感心する。


 俺としてはレスベイルを介せば分析することは可能だが……ふむ、それじゃあやってみるか。

 俺は刀身にレスベイルの魔力を乗せ、突撃。エーメルはそれを受ける様子で、再び剣同士が激突した。


 それと共に感じる圧力。能力を行使したらしいが……ここで一つ気付いた。

 魔力の解析はできている……のだが、それがどのようなものであるかはわからない。


「お、察したか?」


 再びエーメルが切り払った。俺は再び後退しようとしたのだが、今度は彼女が追撃した。

 横薙ぎに対し、俺は剣で受け流す……のだが、剣に重みが加わって上手く流せなかった。相当やりにくくなっている……面倒だと思いながら俺は力によるゴリ押しに切り替える。爆発的な魔力が両腕から発され、エーメルの剣を強引に弾き飛ばした。


「おおっと! さすがだな!」


 感嘆の声を上げながらエーメルは後退を選択。さて、強引に押し通すことも不可能ではないが、まだ奥の手が隠されているかもしれないし、しっかりと答えを出すべきだな。

 とはいえ、魔力解析はできているのだが……悩んでいるとエーメルは察したらしく、


「どうやら今回使用した技術について、どのようなものかわからないみたいだな」

「解析はしているはずなんだが」

「なるほど、それでは成功というわけか」

「成功?」


 オウム返しに聞き返すとエーメルはニヤリとなり、


「ああ、クロワが考案したんだが……ルオンさんクラスの技量になると分析なども容易だろ? だから、解析……というか魔力を調査しても効果がわからないよう、仕掛けを施したのさ」


 対策……? 少しばかり驚愕していると、さらにエーメルは解説する。


「言い方を変えると迷彩だな。魔力について情報量を多くして、どれが正確な内容なのかを判別しにくくした、と」


 またずいぶん面白いことを……どんな仕組みなのか気になるが、今はその辺りを問答する暇はなさそうだ。

 俺がとれる選択肢は二つ。このまま解明せずにゴリ押しで勝つか、それともある程度把握して押し返すか……やることは基本的にあまり変わらないのだが……どうせなら、真正面から能力を看破して勝ちたいよなあ。


 さて、どうするか……と考える間にもエーメルが攻勢に出る。こちらが迷っている間に畳み掛けるつもりか。

 剣同士が噛み合うと再び剣が重くなる。せめぎ合いに負けるような一撃ではないのだが……いなそうと剣を動かすのだが、それも厳しい。


 ただ俺を力で無理やり押さえつけているようなものではない。魔力によってこちらの動きを抑え込んでいる、とでも言うべきか。

 そう考えるとおぼろげだが見えてくる。もっとも確証はないのだが……ただ、わかったからといって対処できるような技法とも言い切れないか?


「ほらほら、どうした!」


 俺が悩んでいるのを好機と捉え、エーメルが攻め立ててくる。こちらはそれを容易に対処することはできているのだが、能力を上手く使われると強引に突破される可能性もあるな。

 俺が考えたのは、せめぎ合いになると剣から強い圧を感じる……これはエーメルが怪力になったのではなく、魔法的な効果……そう、例えば重力を加えるとか、そういう効果なのではないか、と。


 それと単なる怪力でどう違うのか、と言われるかもしれないが、もし単なる怪力であったとしたら対処はそう難しくない。というかこちらも対抗するようにゴリ押しで済む話なのだ。そんな単純なことを魔王であるクロワが施すわけもない。

 魔法による圧ならばゴリ押しが通用する可能性は低い。先ほど俺はエーメルの剣を弾いてみせたわけだが、さらに魔法の威力を上げたらどうなるかわからない。


 現在はエーメルも力をセーブして戦っているようなのでまだ対処はできているわけだが、これでさらに強力になれば、辛い状況になるかもしれない。

 俺の能力を直接的に突破できないと判断し、こういう技法を選んだということなのかもしれないが……現時点ではあくまで推測レベルだが、それでも考えとしては間違っていないはず。つまり鍔迫り合いになるような戦い方は避けるべき。なら俺が取る行動としては――


 エーメルがさらに迫る。大剣を豪快に振り抜くと、斬撃をというよりは叩きつけるような……吹き飛ばす意図を持つようなスイングが繰り出された。

 それを真正面から受ければ勢い押される結果になるかもしれない……なので、こちらも相応の対策をとることにする。


 刀身に魔力を込め、なおかつ左手をかざし、魔力障壁を壁のように発生さする。エーメルの大剣はそれによって防がれ、ガリガリと金属同士が噛み合うような音を発した。

 俺と直接大剣を当てているわけではないので当然ながら魔法効果は通用しない……のだが、バキバキと障壁から音が聞こえた。なるほど、物理的に干渉を加えるだけでなく、魔力障壁すらも余裕で砕く効果、というわけか。


 これは、星神の使徒との戦いにおいて使えるかもしれないか……? 絶対的な耐久性能を持っているわけだが、使徒だって魔力障壁を構成しているはず。ならばそれを直接破壊できる能力というのは……まあ大剣を直接当てないといけないし難易度は高いけど……それでもここまで容易に障壁を壊すことができるのは興味深い。

 そうこうする内にエーメルは俺の魔力障壁を突破し、こちらへ刃を届かせようとする。接近した刃をまず後退してかわした後、


「反撃開始といくか」


 おおよそ見立てはできた。後は――頭の中で算段を確認した後、俺は剣に収束させていた魔力を解放した。


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