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賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

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次なるイベント

 シルヴィの剣技は、間違いなくソフィアよりも上だろう。対人戦の戦歴においては比べる必要もないくらいの差があることは間違いない。

 だが、それでもイーレイとは差があるらしい――シルヴィと比べても、イーレイは相当な経験値を所持しているということか。


「すごい……」


 ソフィアが呟くのを俺は耳にする。


 現在、両者は一歩も譲らず木刀を激突させている。ソフィアにはどう見えているかわからないが……俺はイーレイが有利な状況に持ち込んでいるのを理解する。

 基本シルヴィが攻撃を行い、イーレイが受け流すという形なのだが、イーレイが剣戟の動きを読み切って体に届くのを防いでいる。


「さすがに腕を上げた」


 イーレイの感想。一方のシルヴィは舐めるなとばかりに剣速を上げ――横薙ぎを放つ。

 魔力の感触で『ベリアルスラッシュ』だとわかる。イーレイはこの剛剣をどう防ぐのか――


 刹那、イーレイは横薙ぎが完璧に繰り出される前に木刀をシルヴィの木刀へ打ち付けた。おそらくそれには魔力が含まれているはずで……技の出始めを狙い、相殺したのか。

 シルヴィも思わぬ結果に僅かに呻いた。他の技を繰り出そうと考えた様子だが――通用しないと判断したか、後退する。


 今のはおそらく、魔力が高まるのを感じ取り機先を制した格好だろう……感心していると、イーレイが発言した。


「ひとまず、この辺りとしておこう……ソフィアさん、どう思った?」

「私もまだまだです」


 即答。するとイーレイは彼女に微笑を浮かべた。


「実力については、理解してもらえたはずだ……ソフィアさん、仲間としてはどうだ?」

「非常に心強いと思います……よろしければ、私達と共に」


 剣技に加え、魔力の高まりなどを考慮した結果だろう。シルヴィは「頼む」と返したため、彼女が仲間に加わることとなった。

 ここでイーレイは、シルヴィに目を向ける。


「以前よりかなりよくなっている。私に追いつくのもそう長くはかからないだろう」

「……本当ですか?」

「魔力などの潜在能力は私よりずっと上なのだ。もっと自信を持て……と、そうだ」


 声を上げ、彼女は俺へと視線を投げる。


「ルオン、二人とも、面倒見てもいいか?」


 唐突な提案。俺はソフィアとシルヴィの顔を見る。両者共小さく頷くのを見て、こちらも了承することにする。


「わかりました、お願いします……俺はもう少し町を見て回るので、二人をよろしくお願いします」

「わかった」


 ――よって、二人を残し外へ出る。


 さて……シルヴィが仲間になったわけだが、今後俺やソフィアについてどう説明するか悩むところだ。

 聞き分けがよさそうなので、誤魔化しつつ戦っていくことも可能だろうけど……ま、ソフィアと共に鍛錬すれば親交も深まるだろう。その結果を考慮して、いつ話すかタイミングを考えればいいか。


 結論を出しつつ――念の為、俺は本来目星をつけていた人物がいる場所へ行くことにする。もしその人物がここで活動していてなおかつレベルも高かったらどうするか、などと考えていたのだが――杞憂だった。


「いなくなった?」

「最近、町を出たんだよ」


 とある酒場。その場所に入り浸っている戦士がいたのだが、今はいない。店内の客に尋ねてみると、そういう返答だった。

 それなら仕方がない……ということで店を出た時点で、気付く。


 暇になってしまった。


「……俺も、訓練もするか?」


 そんなことを思っていた時――ふいに、使い魔から報告がやってきた。


「ん、主人公に変化があったのか?」


 と思ったが違う。これは――


「出たか、後味の悪いイベント三つ目」


 もっと後だと思っていたが……五大魔族を倒したから、イベントの時期が早まったのだろうか――考えつつも、今後どうするか決断しイーレイの所へと戻る。


 訓練を開始しているソフィアとシルヴィ。それを横目に見つつ、イーレイに話し掛けた。


「ちょっといいですか」

「お、ルオン。あの二人、相性はよさそうだぞ」


 その言葉と共に、イーレイはシルヴィを指さしながら続ける。


「あいつは魔法を覚えていないが知識はあるため、ソフィアが放つ魔法の効力などを理解し、立ち回ることができる。さらにソフィアは動きにある程度ついていけている。一緒に訓練すれば、連携も上手くできるだろう」

「そうですか……えっと、それでですが、あと七日必要なんですよね?」

「あくまで現時点の見立てだ。二人次第だが、短縮する可能性はある」

「その間、二人を任せてもいいですか?」

「構わないが……どこか出かけるのか?」

「はい……ソフィア!」


 声を上げると、剣を止めソフィアが近寄ってくる。


「ソフィア、俺の方は時間もできたし、一度地元とかの状況を見て回ってこようと思う。魔法を使えば数日で戻ってこられるし」

「わかりました。お気をつけて」


 彼女も了承したので、俺はイーレイに改めて「よろしくお願いします」と告げ、外に出た。


 さて……いよいよ三つ目の後味の悪いイベントだ。これはメインシナリオではなくサブイベントの一種。場所はこのガーナイゼから南西。タウレザ王国という場所の、アーザック伯爵という人物の城。


 このアーザック伯爵というのは魔族と手を組んでいる人物で、自身の領地に対し重税を始めとした圧政を加え始める。逆らったら処断、などという触れまで発布される始末で……これに危機感を募らせた人物が、単身伯爵の城に乗り込む。


 一人で行くなよ、というツッコミはごもっともだ。俺もゲームをやっている時そう思った。結果は……無残に殺され、主人公達もその姿を目の当たりにする。


 その人物の名は、リリシャ=ナータンテルという女性の神官戦士。彼女はタウレザ王国内でも有名な人物。ゲームで仲間になるわけではないが加入の可能性があった人物らしく、イラストなどもずいぶんと書き起こされていた。


 けど、結果は……初回フィリを主人公にしてゲームをプレイした時、このイベントに遭遇し後味の悪さに辟易した。回避できないものかと頭を捻ったが、結局どうにもならないという悲しい事実だけが待っていた。


 そうしたイベントを止めに行く……タウレザ王国はここから少しばかり距離がある。移動魔法を使えばそれほど掛からないのだが、ソフィアを同行するとイベントには間に合わないかもしれない……これについては、丁度よかったと思うことにしよう。


 というわけで、俺は町を出て移動魔法を行使。飛ぶような速さでタウレザ王国へと向かう。使い魔から報告が来た以上、イベントの兆候があるということ。サブイベントが完全に開始されるまでに目的地へ到着したいところだ。


 加え、俺は別の使い魔――ゲームの主人公を観察する使い魔と交信を行う。サブイベント発生の兆候があるということは、主人公の誰かが動き出していると思ったのだが……結果、とある主人公が動いているとの報告が返ってきた。


「へえ、こうきたか」


 俺は呟く……リリシャのイベントに関わろうとしているのは、ソフィアの従妹であるエイナだった。

 これは余計にソフィアを同行させるわけにはいかなかったな……そんな風に思いつつ、さらに情報が。


「しかも『三強』の一人が同行……?」


 シルヴィに続き、ここに来て新たな『三強』と接触する機会が……エイナの同行者はその人物だけのようだ。騎士という立場なのでさすがに仲間に加わることはないだろうけど、その実力がゲーム通りなのか拝見しておくのもいいだろう。


 しかし、エイナか……他の主人公の場合だと偶然居合わせたという感じなのだが、エイナの場合は魔王との戦いに協力して欲しいためにリリシャを訪ねるといった理由があったはず。このイベントについてはエイナが関わることが一番筋が通っていると言える。


 そして、エイナに王女が存命している事実を知らせるのはまだ早いだろう。彼女については話さないことにして、イベントに干渉することにしよう。


 ともかく、今度はエイナと関わることになるようだ……俺はどう動くかを頭の中で思案しつつ、タウレザ王国へと急いだ。


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