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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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帰還後の相談

 俺達は迷宮を攻略後、ネレイドの力を借りて何事もなくシェルジア大陸へと戻ってくる。その後、予定通りに城へと帰還。この時点で、俺に帯同していた子ガルクが来訪者達へ通達は行っていたようで、既に準備もできていた。


「無事でなによりだ」


 最初に顔を合わせたのはデヴァルス。客間を訪れ戦果を報告すると彼は満足げな笑みを浮かべた。


「そうかそうか。思わぬ形で城を離れていると知って少し驚いたが……成功したのは良かった。それで手に入れた武具は?」


 俺はペンダントを懐から取り出す。それを見てデヴァルスは、


「何の変哲もないペンダントに見えるが……ふむ、確かに奥底に魔力が宿っているな」

「これは巨大な器だ。俺が持つ天封の剣みたいに、魔力を際限なく吸い取る」

「これ自体に魔力がこもっていなくてもいいってことか……さて、色々と研究を開始するわけだが、その前にやっておかなければいけないことがある」


 ……少しばかり深刻な表情となるデヴァルス。何かあったのか?


「問題が発生したか?」

「いや、そういうわけじゃなくてだな……今回、様々な種族が手を組んで戦うことについては、集ってくれた者は全員理解してくれた。これは間違いなくルオンさんやソフィア王女の縁によるものであり、二人が魔界へ行ってしまった際に顔を合わせ交流はしていたんだが……綿密に連携するとなれば、話は別だ」

「親睦を深めようとか、そういう話?」

「もっと突っ込んだ内容だ。言ってみればそれぞれの実力などをきちんと把握しなければならないということだ」


 はあ、なるほどな。実力の底を認識していない中で策を実行しても、効果は薄いと言いたいわけだ。


「まあ、その辺りをどうするかとか、考えはあるんだが」

「何をするんだ?」

「いや、難しい話じゃないぞ。種族の代表者同士が戦ってみて、お互いの腕を確かめてみるとか、そういうことをしようかと」


 ……こいつは何を言っているんだ?


「あの、さ――」

「言いたいことはわかる。そんなことをやったら無茶苦茶になるかもしれないと。だが心配はいらない。きちんと城に被害がいかないように調整はする」


 そこじゃない。というか、


「つまり、例えばデヴァルスとガルクが真正面からドンパチやって、技量を確かめようとか、そういうことか?」

「ああ、そうだ」


 無茶苦茶なことを言い出したぞ……いや、一応理屈としては成り立つとは思うのだが、そんなことをしたらどうなるのか。

 さすがに今回の戦いに対し政治的な要素が絡むのは避けたい。まあ精霊天使魔族竜族とか様々な種族が集う戦いなのだから、もう政治云々とかいうレベルを超えているヤバい状態なのは間違いないのだが、それでもまあ、俺やソフィアを仲介する形でどうにか仲は良好な感じにできた。しかし正面から戦うなんてことになったら――


「いやいや、さすがに余波が怖いって。国側もそれは納得しないだろ……さすがに、王が許可しているとかはないよな?」

「まだ相談もしていない」

「それで正解だと思うぞ……もうちょっと他の方法を探さないか?」

「うーん、魔力分析するにしても時間が掛かるからな。ほら、戦いの中で相手の力量を察し、検証につなげるとか、そういうやり方だってできるだろ?」

「なんか、根性論みたいなこと言い出してる……実は戦いたいだけとかじゃないよな?」


 デヴァルスは沈黙した。おい、ちょっと待て。


「図星か!?」

「いやいや、能力の検証を最初にやっておくというのは、必要なことだろ?」

「それにしたって……他にやり方はあるだろ……」

「喧嘩になりそうですよね」


 ソフィアの感想。まさしくそうだ。


「しかし、実力を確かめて検証するというのは必要だ。普通に魔力量などを分析するより、全開で戦って使用できる能力の多寡を把握しておいた方が、効率も良い」


 もっともらしい理屈を述べているだけではないだろうか? 疑いの眼差しを向けているとデヴァルスは苦笑し、


「そんな目をしないでくれよ……ただ、政治的な意味で面倒なことになるというのは、確かに頷ける。例えば私と神霊が対戦したとしよう。どちらが勝ったとしても、精霊と天使との間に軋轢が生じるかもしれない」

「それは今から行う戦いでは致命的だろ?」

「そうかもしれないな……だとするなら、戦っても問題のない存在が請け負うべきかもしれない」


 ……ん? なんだか嫌な予感がするのだが。


「その武具の検証なども考慮する必要性があるだろう。となれば――」

「おい、まさか」


 つまり俺が戦うと――途端、デヴァルスがニッコリとなった。


「どう思う?」

「あのさ……それで怪我でもしたら一大事じゃないか? 俺が先陣切って星神の使徒と戦うわけだろ? それより前に負傷したら目も当てられない事態になるんじゃないか?」

「そこは配慮するつもりではいるぞ」


 フォローになっていないフォローを入れるデヴァルス。というか、俺に役目を振るためにこんな話を持ってきたな?


 ただ、真意が微妙にわからないんだけど……たぶん俺が今回手を組む種族達と戦うことで、何かしら成果が得られるってことなんだろうけど……。


「意義は間違いなくある」


 そうデヴァルスは断言する。


「こちらとしてはやる意味があるからこそ提案している」

「う、うーん……それにしても……」

「研究だって無論やる。これが色々な意味で近道でもあるのは確実だ」


 どういうことなのか……理由を尋ねようとしたのだが、デヴァルスは笑顔で黙殺しそうな雰囲気。

 というかなぜ理由を頑なに話そうとしないのか。


「……理由は、聞かせてもらえないのか?」

「事情を知らないまま戦ってもらった方が、おそらくより効果がある」


 どういうことなんだろう……と思うのだが、目的とかどういう効果があるのかなど、聞かされているよりも俺は知らない方が良いって判断なのか。

 天界の長が言うことなのだから、何かしら根拠があるとは思うけど……うーん、素直に頷けないな。


「ソフィア、どうする?」

「私の判断ではどうとも……ただ、デヴァルスさんが意味あることだと仰っているわけですし。ルオン様の方で何かしら案があれば別ですが」


 それもないからなあ……と、そこで、


「ガルクはどう思う?」


 その言葉で右肩に子ガルクが出現。同時、彼は口を開いた。


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