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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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英雄一閃

 レスベイルが大剣を床に突き立てる。その瞬間、床面を介し俺へと魔力が注がれた。

 それらは全て剣を握る右腕へと収束されていく。瞬間、偽物が警戒を露わにしてさらに後退しようとした。


 俺の攻撃を見定めようとしている動きなのは間違いない。この技をどうにかするのなら、収束し始めている今を狙うのがベストなのだが、それはしない。プログラム上、思わぬ攻撃に対してはまず観察するように命令されているようだ。ならば、好都合……!


「いく、ぞ……!」


 声を張り上げながら右腕に魔力が集まっていく。キィィィン、と金属音に近いものが俺達のいる広間を満たしていく。

 そして魔力を収束させている俺だが……かなりキツイ。修業時代に大変な目に何度も遭ってきたし、修行そのものも辛いことなんてたくさんあった。で、無類の強さを得てからはそういう辛さはほぼ皆無だったのだが……今まさに、その大変さが戻ってきた。


 とにかく収束させた魔力を制御することがかなり大変だった。なおかつ未完成の技法であるためか、体にも結構響く。けれど途中でやめるわけにはいかない。このまま勢いで突っ走れ!


「お、お……!」


 ズシン、という音を響かせるような勢いで足を前に踏み出した。その直後に俺は右腕を振った。偽物に対し距離を置いているにも関わらず、剣を一閃した。

 何をしたのか偽物にもわからなかったかもしれない。だが身じろぎしたのを見て、どういう効果なのかは理解した様子。


 けれど、事態を把握した時点で対応は不可能だった。全てが間に合わず、偽物は――剣を振った事によって生じた魔力の刃によって、ものの見事に体が吹き飛んだ。

 いや、それは文字通りの消滅……俺が振った魔力の刃が、前方の広間全てを巻き込むほど巨大なものへと一瞬で変じた。その剣戟によって偽物は防御することすらできず、まともに食らってあえなく滅び去った、というわけだ。


 これには俺の特攻能力を付与する技も関係している。まず俺はレスベイルの魔力を利用して身体能力を強化……特に右腕を強化し、一閃すれば目の前で起きたような巨大な刃を生み出せる力を得た。そこに偽物を分析した特攻能力を付与することで、回避、防御不能の一撃を決めて見せたのだ。

 俺と同じ体格を持った相手に対し、過剰なほどの攻撃だが……一撃で消し飛んだのだ。結果オーライということでいいだろう。ただ、俺の刃が広間の壁に直撃し、ゴゴゴゴと振動する。この迷宮そのものが崩れたら……と懸念を抱いたのだが、幸いにして振動は収まった。


「あ、危なかった……かな?」

「後先考えずに撃ったわね?」


 カティの声だった。振り向けばなんだか呆れた表情の仲間達が。


「無茶苦茶な技法ねえ……まだ未完成の技に、見たこともないもう一つの未完成技を乗せたわね?」

「あ、うん、そうだな。けど、相手が相手だったし無茶を多少は通さないと――」

「言っていることは理解できるけれど、何より問題なのは体にもダメージが跳ね返っていることよ。もし同じ個体がもう一体出てきたらどうするつもりだったの?」


 ああ、うん、確かに。

 実際、無理矢理二つの未完成技を行使したことで体はずいぶんと痛んでいた。といっても筋肉痛の類いなんだけど、こんな痛みを感じたのは久方ぶりだ。


 無茶な魔力収束に体が追いつかなかったという構図であり、むしろ俺だから筋肉痛程度で収まったと言えば良いだろうか……色々と課題も見つかった。これから技法について研究を進めよう。


「悪かった、次は注意する」

「軽いわねえ……ま、いいわ。さて、最後の障害も消えたことだし、後はお宝を――」


 パキン、と音がした。見れば武具が安置されているその場所にあった魔力障壁が、消え失せた。


「魔物を倒さないと、手に取れない仕組みってやつだな」


 語りながら近づいていく。台座が設置されており、その上にあるのは――


「これは……ペンダント、ですか?」


 首を傾げながらソフィアが呟く。そう、台座に安置されていたのは、ペンダント。ただ、その形状はなんというか……独特だ。

 宝石が埋め込まれているような類いではなく、天使の羽根を象ったようなデザインが施された一品であり、手にとってみると確かに魔力を感じ取ることはできるが、それほどすごい物のようには思えない。


「武具、って感じではないな」


 そういう感想がクウザからもたらされる。一方でカティは、


「むしろ、これだけ魔力を感じさせないような物なのに、強大な力を持っている……研究しがいがあるわね」

「効力について精査するのは戻ってからじゃないと無理だから、今はひとまず脱出しよう」


 俺の言葉に全員頷いたのだが、その中でリーゼが、


「逆走するの?」

「まさか。脱出場所はそこにあるよ」


 指を差す。その先には一枚の扉が。

 広間の隅っこにあるので目立ちにくいのだが、そこには転移魔法陣が存在し、地上へ帰還できるようになっている……少なくともゲームではそうだった。


 迷宮のどこかへワープするとか、そういう構造にはなっていないだろう。というか映像であれだけ俺達のことを期待しておいて、そういう罠をやるというのは考えにくい……今までの映像の言葉が全部嘘なら話は別だけど、その可能性は低そうだよな。


「ともかく、転移で帰還する……代表して俺が乗るから、何か異常があったら使い魔でも使って連絡をするよ」


 ペンダントを懐にしまった後、俺はそう仲間達へ告げ扉へ向かう。それを開けると小部屋が見え、魔法陣が存在していた。

 俺はその中心に立つ。すると魔力に反応してか魔法陣が光り輝き――体を包んだ。


 一瞬の出来事であり、気付けば地上に戻っていた。時刻は……朝かな?


「とりあえず、間に合いそうではあるな」


 今頃城には多種族が集まっているのだろうか? そんな疑問を抱きつつ俺は仲間達へ連絡し、全員が地上へ帰還する。


「この迷宮、いつか調べたいわよね」


 そんなカティの言葉が。俺は小さく頷き、


「なんというか、色々な技術の集合体だったな」

「そうね……星神との戦いで活用できるかわからないけど、検討してみましょうか」


 なんだか楽しそうだな……そんな風に思いながら、俺は仲間達と共に野営地へと戻った。


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