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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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切り札の可能性

 魔降からの映像が途切れる。後にはシンと静まりかえった広間があるだけ。


「……ルオン様」


 ソフィアが呼び掛けてくる。何が言いたいのかはすぐにわかった。


「魔降という存在は……その……」

「まるで、全てを見通しているかのような発言だな」


 そう俺は呟くと同時に、映像の魔降が立っていた場所を見据える。


「俺達が戦う相手を知っている、というレベルであれば予言者ってことになるけど、そうじゃないだろう……魔降は星神と戦う存在を想定して、この迷宮に武具を置いたのかもしれない」

「だとするなら、星神の使徒に対する切り札になるかもしれない、と?」

「あくまで可能性の話だけどな……けど、謎が残る。俺の知識を言い当てているようにも感じられたわけだが……」

「安直に考えるとしたら」


 カティが口元に手を当てながら言及する。


「魔降という存在は、ルオンと同じ転生者、ということかしら?」

「ああ、それも十分にあり得る……俺やアランという存在がいたように、他にも転生者がいてもおかしくないし、なおかつ時代がズレているなんて可能性は容易に想像できるな」


 もっとも、情報が少なすぎる。これ以上考察することは難しいか。


「魔降については特に気になるけど、今は脇に置こう。魔降の話でわかったことは、俺達が求めている武具が、使徒に対し有効な物になり得る確率が高まったこと。そして」

「武具の解析などをすれば、場合によっては星神そのものに対し有効な一手が作れるかもしれない」


 発言したのはクウザ。俺はそんな彼に対し深々と頷いた。


「ああ、そうだ。どうやら付け焼き刃というわけじゃない、星神に応じるための手段を、何かしら手に入れることができるかもしれない」

「なら、絶対に踏破しないといけないな」

「ただ、最速攻略については一考の余地が生まれたな。ここで手に入る武具が使徒に打撃を与えられる候補になるなら、その旨を連絡して解析の準備をしがてら待っていてもらうってやり方もある」


 もっともこれは魔降の言葉を鵜呑みにした場合の話である。彼が世界の崩壊を予期して武具を残した、という流れはあるにしても彼自身が作成した武具そのものが有効なのかどうかについては不明のままだ。思わせぶりな言及をしていたことでこの迷宮に眠る武具が強力なものである、と俺達は考えたわけだが、魔降のことを盲信するのもどうなんだろうな。

 そんな俺の考えについては、仲間達も同じ事を思っているらしく、その中でリーゼが口を開いた。


「魔降についてはわからないことも多いわ。なんだか重要そうなメッセージであることを装って、こちらを罠にはめようとする、なんて懸念もあるわね」

「確かに……」


 魔降は映像の中で具体的なことは言及していなかった。世界の崩壊という大層な単語を用いてはいるが、抽象的な表現に終始していた。これは事情を知らず迷宮に迷い込んだ人間に対し具体的なことを語らないようにする、という配慮も見え隠れしている気もするけど……そうじゃなくてリーゼとしては全部嘘で、あの映像はメッセージを残すことでこちらをかく乱させようとするだけ、なんて意図で用意したものかもしれない。


 リーゼがそんな風に考えたのはたぶんここへ到達するまでの嫌がらせがかなりの域に達していたためだろう。ここまで陰湿な罠を仕掛けてきた以上、今度は思わせぶりな台詞を吐いて精神的にも揺さぶってくる……ただ、その揺さぶり方が世界崩壊云々というのは疑問ではある。甘い罠を張るなら、もっと良い常套句があったはずだし。


 色々と考えることはできるが、魔降は最後まで顔すら見せなかったので、これ以上読み取ることは厳しい。


「……どうしますか?」


 ソフィアが確認のために尋ねてくる。もっとも、その答えは決まっている。


「進もう……魔降の言葉の真偽は不明だが、最深部まで到達しなかったらここを訪れた意味はない」


 全員動き出す。念のため罠がないかの確認を行ったが、ひとまず何もないようだ。

 よって、階段を下り始めるのだが……そこで気付く。気配が、変わった。


「今までとは違うみたいだな」


 オルディアが刀身に魔力を込めながら呟いた。他の仲間達も臨戦態勢に入っている。

 これまでの敵は一層目とほとんど変わっていない。けれど、明らかにここから先は違う様子……魔降としてはここからの試練が本番とでも言いたいのか。


「今まで通り、短期決戦で戦う。敵の情報については視界に捉えた瞬間、補足していく」


 そう俺は述べながらゆっくりと階段を下る。らせん状の階段となっており、なおかつ今までと比べて階段が長い。

 一段一段進むごとに、魔力が張り詰めていく。間違いなくここから先は、今までとは比べものにならないようだ。


 もしゲーム上で確認できた魔物であれば、仲間達にとってはそれほど苦戦せずに勝てるはず……ただ、ここまで来て疲労も少しずつ出てきただろう。どこかで集中力がなくなったら……魔物や罠など、全てのことを今まで以上に集中し、きちんと対応しなければならない。


 そうして俺達は階段を下りきった。その先は真っ直ぐの通路。周囲に罠はない様子。しかし、真正面に魔物……それもかなりの数がいた。

 加え、現われた敵は今までの種類から一新されており、全てが見たことのない――けれど、俺のゲーム知識の範疇ではあった。


 もしこの迷宮を作った魔降が転生者ならば、こうした魔物の配置はわざとやっているのだろうか? アランの場合は物語というくくりでこの世界の情報を知ってはいたけど、内容にかなりの差違があった。魔降についても同じことが言えるとは思うのだが……もし俺と同じゲーム知識を利用して迷宮を造り上げたとしたら、魔降は俺と同じ世界からやってきたことになる。


 気になることばかりではあるが……もしかするとこの迷宮を進むにつれて何かしらわかるかもしれない……そんな期待を俺は抱きながら、仲間達に指示を出す。同時に魔物に関する情報を端的に伝え――ソフィア達は最適な動きをとり、また魔物達は俺達を見つけ、獲物として狩るべく、咆哮を上げながら突撃を開始した。


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