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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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迷宮内の罠

 ――そこからの戦いについては、数も減ったこともあって俺達の一方的な展開が続いた。魔法を使うメイガスがいなければ基本的にこちらが攻撃されるようなこともないし、敵の撃破はそう難しくない。


 そうした中で俺は仲間達の動向を見回す。ソフィアについては剣術をさらに磨きを掛け、エイナの補佐は以前と比べても的確で俊敏になっている。これは組織内における訓練を経て、判断力が向上したとも言えるか。

 俺達がこれから挑む戦いはそれこそ一瞬の判断に左右される世界だ。よってこの進歩は大きいかもしれない……まあ正直、ゲームで言えばソフィア達のレベルも確実にマックスへと近づきつつあるので、この成長は当然と言えば当然か。


 現時点において組織内の中では俺以外だとソフィアは抜きんでているといった感じ。あれかな、レベルマックスを迎え上限開放のアイテムを使った感じだろうか。俺の方は最初からそんな感じだが……。


「よし、終わったわね」


 リーゼの声。思考する間に広間にいた魔物を全て撃破。ひとまずここまで遭遇した魔物だったので、対処はそう難しくなかったのは良かった。


「この調子でいければ良いのだけれど……まだまだ続くのよね?」

「ああ、そうだ。速攻で攻略する以上はこのペースで駆け抜ける……休む暇があったらいいけど、あんまり期待しないように。それじゃあ行くぞ」


 号令と共に下層へ突き進む。次は……迷路だな。


「魔法で罠などについて確認するけど……と、これは……」

「多いわね」


 カティが感想を述べる。うん、通路のそこかしこに罠が存在している。

 床を踏めば発動する類いのものから、どうやら壁に近づくことで作動する罠とか、色々あるようだ。これもゲーム通りのものではあるけど、現実になったら面倒だな。


「罠って解除できるの?」


 リーゼが眉をひそめて問い掛けてくる。


「魔法で処置されているものだから、その魔法を封じ込めるか消滅させれば可能だよ……そうだな、技法については簡単にできるから、やれそうなら使ってみるか?」


 俺は床を踏むと作動する罠に近寄る。階段から数歩歩いた場所にある罠で、効果については……さすがにわからない。けどわざと踏んで確かめるような馬鹿な真似はしない。


「……力よ、解き放て」


 魔法を罠へ向けて放つ。これは『エルダーズ・ソード』三作目に登場した魔法で、名前もそのまんま『トラップクラッシュ』である。多少のMPを消費すれば発見できた魔法系の罠を解除することができる。


 ただ物理的なトラップ……落とし穴とか、矢の雨が降ってくるとか、そういう物については無力である。ゲームでは物理的なトラップはHPにダメージを与えてくるものが大半で、魔法系はどちらかというと嫌がらせの方が多かった。代表的なのはMPを吸い取ったりとか、あるいは電撃を浴びせて麻痺状態にしてきたりとか。ただ回復アイテムとか味方から魔法を掛けてもらえさえすればあっさりと解決できる類いのものだし、受ける効果も割と簡単にリカバリーできるのでゴリ押しするケースが多かったのだが。


 この辺り、制作者的には判断が大変だったのかも。トラップの効果を上げればストレスが溜まるし、かといって弱くしたらトラップの意味がなくなる……三作目の場合は後者だったわけだ。もっとも今、俺達がいる迷宮では面倒な効果をやりたい放題付与したわけで、それで地獄を見ることになったプレイヤーがいることを考慮すれば、制作者の思惑に引っ掛かったと言えるのかもしれないが。


 ともかく、俺の魔法によって罠は消滅。試しに床を踏んでみたが、何も起きない。


「この迷宮には物理的な罠がなかったはずだから、魔法で逐一解除すれば罠が作動することはまずない……とはいえ、先ほどの階層でも予定外の魔物の群れがいたように、俺が把握していない罠があるかもしれない。気は抜かないでくれ」

「私は次の階段へ行くまでの通路で逐一罠を解除していけばいいのかしら――」


 カティが指示を仰ごうとした時、唸り声が。シルバーロードの声で間違いない……まだ四層目だし、他の魔物は出ないようだ。


「まだ敵も同じみたいだけど、後衛にいる魔物については注意してくれ……さて、次の階段は」


 魔力を探ってみると……うん、場所はわかる。


「よし、魔物を倒しながら最短距離を駆け抜けよう。悪魔や罠については目の前に現われたら対処。ただし周辺の気配に注意するように」


 俺達が動き始めると、真正面にシルバーロードが出現。ただし今回は一体だけらしい。

 今までは複数体いたのに何故か……悪魔の奥に通路はあるけど、気配を探ってみても他に仲間らしき存在は見受けられない。


 疑問の余地はあるが、放置はできないので倒すことにする。俺が動こうとした矢先、誰よりも早くソフィアが前に出た。


「単独行動のようですね。魔法で倒しましょう」


 彼女はそう告げると、左手をかざして『ライトニング』を発動。雷光が通路を駆け抜け、悪魔に直撃する。

 胸部を撃ち抜かれたのだが、悪魔はあっさりと倒れていく。ここまでの戦いでどのくらいの出力ならば倒せるかをきちんと見抜いているようだ。無駄な魔力を使わず、必要最低限の力で倒す……短時間で攻略する場合、こうした節制が後で効いてくるものだ。この辺りはさすがである。


 そして悪魔についてだが、単独行動で出現する敵なら問題はなさそうだ……そう思った時、俺は気付いた。

 悪魔が倒れ込む先。その床には罠が封じ込められた床面がある。


「あ……」

「え?」


 俺の呟きにソフィアが聞き返した矢先、悪魔は倒れ込んだ。直後、突如カチリと音が聞こえた。

 魔法の罠なのに機械的な音なのは……いや、魔法によって仕掛けが作動するのなら、こういう音もあり得るか。


 で、次に何が起きたかというと……まず悪魔が消滅。次いで床からフシュー、と白い霧のようなものが噴き出し始めた。


「へ……?」


 その効果に思わずエイナが凝視する。まさかの展開に他の仲間達も白い霧を凝視する羽目に。

 えっと、さすがにこれは予想外だ……というかゲームでは迷宮に出現する魔物が罠を踏むなんて展開はなかった。これは至極当たり前のことだが。


 で、これはどうすればいいのかというと――俺は、


「ひ、ひとまず退避! たぶん大丈夫だと思うけど!」


 俺達は即座に後退。上り階段付近まで移動し、魔力障壁で霧を遮断した。


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