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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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使徒の能力

 いよいよ魔法の範囲に入りつつある中、俺は使徒を注視。使い魔を通して大きさは理解できていたはずなのだが、自分の目で見るとその巨大さが際立つ。


「脅威……ですね」


 ソフィアもまた同じようなことを感じているようで、小さくこぼす。


「こんな存在がもし、私達の大陸に襲来したら……」

「恐ろしい被害が出るだろうな……それこそ終末を呼ぶ魔物だ」

「あいつはもう魔物と呼べないだろうな」


 デヴァルスは警戒を露わにしながら俺の言葉に応じる。


「言ってみれば……そう、災害だ。もっとも大陸全体に被害を及ぼす……いや、滅ぼすような災害ともなれば、災害と見なすとしても規格外ではあるが」

「災害……か」

「さて、話はここまでにしよう。ルオンさん達、いけるか?」


 デヴァルスから確認の問い。俺とソフィアは同時に頷くと、


「それじゃあ――始めよう」


 俺達は静かに、ゆっくりと魔法を起動する。直後、頭上の空間が歪み巨大な光の剣が姿を現した。魔力が周囲に溢れ、その力の大きさにデヴァルスの部下が光の剣を見上げる。

 もっとも、巨大と表現するのは俺やソフィアだからこそ、星神の使徒からすれば、巨大どころではなく、小さな剣に映ること間違いなしだが――


 その時、使徒の動きがわずかに止まった。それはどうやら俺達の魔力に反応を示す所作……しかし動きを止めることはなく、そのまま歩き続ける。


「ソフィア、狙いは頭部だ」

「はい」


 俺達は狙いを定める。当てる場所については融通が効くため、まずは頭部を狙って放つことにした。

 神経を研ぎ澄まし、俺とソフィアはしっかりと狙う。そして、


「デヴァルスさん、撃つぞ」

「了解した……魔法を放った瞬間、離脱を開始する」


 その言葉と共に、俺達はさらに魔力を高め――魔法を、放った! 魔力が弾け、剣が通った場所は光の残滓が道を作る。

 光が凄まじい速度で星神の使徒へと向かって行く。俺とソフィアは魔法の速度を維持しながら、使徒の動きに合わせて軌道を徐々に変えていく。それは成功し、真っ直ぐ飛んでいた光の剣が徐々に角度を変え――頭部へ迫る。


 それでも使徒は歩みを止めない……直後、光の剣が、使徒の側頭部へ直撃した!

 次の瞬間、生じたのは頭部を中心とした光と、轟音。使い魔を通してわかるのは、俺達の魔法が使徒の頭部を飲み込み、白い光に包まれたという事実。それと共に使徒の魔力の大きな揺らぎが発生する。


『――十分過ぎる威力だな』


 と、頭の中でガルクの声が響いた。


『いかに巨大と言えど、あれほどの魔力を込めた魔法で無傷とはいくまい……』


 そうしたコメントの矢先、さらに魔力が膨らみ光も拡大する。さすがに巨大な体を飲み込むとまではいかないのだが、俺達の魔法による閃光は、頭部ばかりではなく首下まで覆うという勢いだった。

 これで倒せるかどうかはわからないが、ダメージは与えたはず……そう思う間にデヴァルスが退避するよう部下に指示を出した。


 それにより、天使達が移動魔法による後退を開始。光がまだ消えない中で、俺達は使徒と距離をとった。


「……さあ、どうだ」


 デヴァルスが呟く。使い魔を通して観察しているのだろう。

 俺もまた彼と同様に意識を使い魔へと集中させる。ソフィアについても同じように使い魔を放って様子を窺う。光はまだ消えていないが……次第に収束していく。そして状況としては、


「……さすが、と言うべきか」


 デヴァルスの言葉。目前に存在する星神の使徒……その頭部周辺が大きく損傷し、特に本来なら脳が存在している場所が、抉られていた。


「あれほどまでに損傷しているのなら、耐久力は相当高いが決して破壊できないわけじゃないか……」


 そう感想を述べる間に俺とソフィアはさらなる準備を開始する。二発目の魔法……もし頭部を破壊されて動けないのであれば、次の魔法を撃つことができるのではないかと思ったのだ。

 使徒はまだ動かない。頭部が弱点だったということか……? そう思いながらも消滅はしていないため一切の油断をしないまま、俺とソフィアは魔力を高めていく。


 どう反応するのか……もし攻撃をしてきたら離脱もあり得るが――


「……おい」


 その時、デヴァルスが声を上げた。何事かと思った矢先、俺も変化を理解する。


 抉られた頭部に魔力が集まり始める。再生か、と直感した時、抉られた部分が……まるで巻き戻っていくかのように急速に再生を始めた。


「再生……しかも高速で……!?」


 ソフィアが半ば呆然と声を発する。俺も内心同意見だった。あれほどの巨体である以上、再生能力があるにしろ時間が掛かると思っていた。場合によっては魔法を連打して再生よりも先に破壊を……という可能性もあったわけだが、それが潰れた形になる。

 俺達が追撃の魔法を準備する間に使徒は再生を進めていく。時間にして、数分……恐ろしい速度で体が戻っていく様を、俺達はただ眺めることしかできなかった。


「……頭部には魔力の集積点があった」


 ふいにデヴァルスが語り出す。


「大なり小なり身体構造を維持するための機能が備わっていたはずなんだが……」

「頭部を破壊すれば、再生しないと思っていたと?」


 俺の問い掛けにデヴァルスは難しい顔を示し、


「いや、仮に再生するにしてもその速度は遅く、時間を稼げると思っていたんだが……どうやら魔力集積点を体内で移動できるらしい。さっき声を上げてしまっただろ? あれは頭部以外の場所に魔力集積点を移動させていたのがわかったためだ」

「つまり……単純に急所を狙うだけではどうにもならないと」

「ああ、そうだ。俺達に打てる手は、あの高速再生を凌駕する破壊を行うか、移動する魔力集積点を追尾して倒すか……ただ、どちらにせよそれで勝利かどうかはわからない」


 無茶苦茶である。こうして会話をする間に使徒は完全に再生を果たす。姿も魔法を放つ前と何ら変わらないもの。ただ、動かない。首は進路方向にやっているが、声一つ発することなく立ち尽くしている。


「……何だ?」


 なぜ立ち止まっている? 疑問が膨らむ中、使徒は次の行動に出る。突然唸り声を上げ、空気を振るわせた。


「……デヴァルスさん、どうする? 一度離脱するか?」

「現状では何かしているというわけではないし、もう一度魔法を行使してもいいかもしれないが――」


 咆哮。今度は周囲を威嚇するようなもの。相変わらず俺達へ首を向けているわけではないが……反撃が来る。そう直感し俺は融合魔法を中断し、防御する態勢に入った。


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