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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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使徒の顕現

「――状況を、整理しようか」


 宿泊施設にある会議室。そこに組織の面々と天使達。さらに急遽こちらへ駆けつけた幻獣テラとジンに加え、アンヴェレートを交え話を始める。最初に口を開いたのはデヴァルス。これだけの人数がいるため手狭なくらいなのだが、文句を言う者は誰もいなかった。


「ルオンさんが幻獣ルグ……いや、もう幻獣ではないな。ルオンさんの言った通り星神の使徒と呼ぶことにしよう……使徒は徒歩で海上を進んでいる。移動速度はかなりゆっくりで、他の島に辿り着くにはまだ余裕がある」

「使徒が向かっているのは、どこなのか推察はできるのか?」


 問い掛けたのは俺。それに応じたのは、ジン。その視線の先には会議室中央のテーブルに広げられた地図がある。


「進路は真南。ルグの島は地図にチェックしているから確認してもらうとして、その南にある場所だな。一番近い島は、星神の信奉者がいる場所だ」

「信奉者同士でつぶし合うのか?」

「ルグの島から一番近い場所がそこだから、敵とか味方とか関係なく、近い島を狙っているとも考えられる……ともかく真っ直ぐ進めばそこに辿り着く。島がどこにあるのかなどの情報はたぶん、幻獣ルグが保有していた知識を活用しているのだろう」

「このままの速度だと、どのくらいで島に到達する?」

『――使徒が昼夜問わず進むとしたら』


 と、話し始めたのはテラ。


『おそらく三日……いや、四日だ』

「正直、あれだけの大きさを持つ魔物相手に、余裕はないな」

『うむ。しかも使徒の狙いは間違いなく島そのもの……途轍もない存在が出現したものだ』

「――伝承とかに、あるわよね」


 ふいに、リーゼが声を出す。


「世界の終わりを告げる魔獣……昔話にない? 世界を喰らい全てを海に戻す終末の魔物」

「今回の敵は、そういった存在を彷彿とさせますね」


 ソフィアは口元に手を当て地図に目を落とす。


「ルオン様のお話が確かであるなら、あの存在は星神が勝負と告げた存在……どうやって、戦いますか?」

「大きさが大きさである以上、馬鹿正直に接近戦なんて不可能だ。もしそれができるとしたら、可能性として考えられるのはジンの能力とかだけど」

「ルグのことを考えれば十中八九受肉しているだろう。仕掛けるのは自殺行為だな」


 ジンの言葉に俺は頷く……どうするか。


 さすがに緊急事態だ。幻獣達が集って……と考えることもできるのだが、相手も幻獣であった存在かつ、巨大化し力をつけているわけだ。単純に幻獣達が徒党を組んで勝てるのか、という疑問もある。

 そして、三日後にもし島を喰ってしまったのなら……間違いなく力が増すだろう。星神の使徒にとっては島を喰らうことは食事と同義と考えてよく、魔力を取り込んだら体の内部に蓄えるだろうし、撃破はさらに困難になるだろう。


「……ひとまず信奉者と言えど、幻獣であり同じ地域に暮らす者だ」


 そうジンは前置きをして、


「既に避難指示は出している……で、問題はここからだ。その島に到達して島を喰ったとしよう。それで終わるはずがなく、次の島へと向かうことになるだろうな。速度が同じだと仮定すれば、次に島へ到達できるのは同じく三日後くらい。ただし、そこからはいくつか島が連なっている。ここまで食い荒らされると、手に負えなくなるだろうな」

「……準備をするにしても、時間がなさ過ぎるな」


 そうこぼしたのは、天界の長デヴァルスだ。


「天界から使徒を倒すだけの準備をするにしても……ここからでは数日掛かる」

「それについては一応解決できるぞ」


 言及したのはジン。それにデヴァルスは、


「本当か?」

「ああ。とある幻獣の能力を使えば……こんな緊急事態である以上、同族以外にも使用してくれるだろう。説得はこちらでするが……倒せる見込みはあるか?」

「俺が考えた策はこうだ――現在向かっている島の避難を済ませた後、私達が島に入り魔法の準備を行う……島の魔力を媒介にした魔法だ。島を喰らおうとした使徒に対し魔法を浴びせ、一気に討ち滅ぼす……ただし、もし失敗すれば島をむざむざ喰われる形になる」

「海上で同様の策を実行することはできないか?」

「まずこの地域では上手く空中や海上に魔法を展開できない。時間を掛ければ可能なのだが、それだと島に到達するまでに間に合わない」

「なるほど……となれば、島の魔力を活かして総攻撃を仕掛ける、ということだな」


 ジンとデヴァルスが話す……さて、俺達はどうすべきなのか。

 現状、組織で対応できる者は……俺とソフィアくらいか。ただあの巨体だと例えば最上級魔法の『ラグナレク』でさえ、通るかどうかわからない。


 これが単なる巨大化した魔物であれば通用すると断言できるのだが、今回の相手は元幻獣なのだ。強固な能力を有しているのは間違いなく、もし通用する可能性があるとしたら――


「ルオンさん」


 と、デヴァルスが話の矛先を俺に向けた。


「そちらにもやってもらいたいことがある」

「俺に?」

「俺は部下と共に魔法準備を進めるつもりだが……わからないことも多く、多少なりとも調査が必要だ。加え策を構築するまでは、この場における最高攻撃力を持つ者はルオンさんだ。よって、使徒の動きを止められるか……あるいは特性などがあるかどうか、色々とデータをとってもらいたい。その上でどのような魔法を構築するかを判断する。場合によっては、単純な攻撃ではなく何か別の仕掛けを施す必要性も出てくるだろう」


 現状、どこまで攻撃が通用するのかを実験するというわけか。そしてデヴァルスが言う攻撃の中には、


「……俺とソフィアの融合魔法か」

「そうだ。堕天使を葬った魔法……天界の実験で山を抉ったあの魔法……たぶん現時点であれこそが、使徒に対抗できる手段だ」


 融合魔法行使により、どれほどの耐久能力があるのかを探るというわけだ。

 俺はソフィアへ視線を移す。彼女はすぐさま頷き、


「なら、やるとしようか……使徒攻略戦を」

「ああ。俺達は準備に入る。ジン、テラ、両者はルオンさん達のアシストを頼んでもいいか?」

「ああ、そこは俺がやろう」

『ならばこちらは避難指示などの作業を受け持とう』


 態勢が整っていく……まずは使徒の特性などを把握する。この任務はかなり重要だ。

 俺やソフィアの攻撃がどこまで通用するのか……疑問を抱きながらも俺達は外を出て、使徒のいる海上へ向かうこととなった。


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