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賢者の剣  作者: 陽山純樹
魂の聖域

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重要な二つの出来事

「わかっていると思うが、天使も魔族も強大な存在だ」


 と、ジンは俺達に前置きをする。


「双方の種族が生まれ、実戦投入されたのはほぼ同時……その結果、戦争はさらに苛烈になった。具体的に言えば双方の領土が荒廃するほどに……な」

「能力が高かったため、被害も大きくなったというわけか」


 俺のコメントにジンは「まさしく」と答える。


「結果から言えば両者共に領土を拡大することなく、痛み分けで終わったんだが……その戦争を契機に国そのものが衰退していった。大陸の覇者同士であった双方の国々は、やがて分裂状態となり大陸をまたいだ戦いなどできる余裕は消え失せる」


 そう述べた後、ジンはどこか遠い目となった。


「その過程で、魔族と天使は国を離れ独自の道を歩み始めた。そして国にはそれを阻むほどの力もなく……天使と魔族という、二つの種族が生まれた」

「……ジン達もまた同じような形で生まれたとしたら――」

「そうだ」


 俺の言葉を遮るように、ジンは語る。


「天使や魔族以外にも、様々な種族が生まれた。しかし現在まで種族の規模を維持しながら残っているのは、彼らだけだ。俺達以外に生き延びた種族がいるかもしれないが、歴史の表舞台に立つことはなかったな」


 なるほどな……内心で納得していると、今度はソフィアが口を開いた。


「その後、天使や魔族は独立した世界を創り……やがて、魔王が生まれた?」

「そうだな。人間から生まれた種族であるが故に、両者とも人間が扱っていた制度を基に天界と魔界で統治を始めた……その中で、特別力を持った魔王が現われた」

「その魔王と、私達にとって古の存在である賢者が……戦った」

「ああ。時系列順に言うと、天使と魔族がそれぞれの世界に引きこもった。次に天使達がシェルジア大陸……二人の出身大陸で活動を始めた。他の場所にも天使の遺跡はあったが、特別シェルジア大陸が多かったみたいだな」

「その理由とかは……」

「さすがにそこはわからないな。ただまあ、星神の研究などをしていたようだから、それに関連する意図としてシェルジア大陸に建物を多く造ったのかもしれない」


 ――ゲームでは天使の遺跡に加え、なぜ魔王がシェルジア大陸を攻撃したのかは明らかになっていなかった。ただもしかすると星神が関係している……ならばシェルジア大陸そのものが星神と何か関係があるのか?


「そして天使達がこの大陸を去り、再び天界に引きこもった後、今度は魔界が動き出した……これが魔王の攻撃だな」

「それを賢者が……ということですか。ただ肝心の賢者についてわからないことが多いですね。子孫である私……バールクス王家もほとんど情報を持っていません」

「実を言うと、この島を訪れたという記録がある」


 思わぬ情報に俺とソフィアが目を丸くした。


「こ、ここに来ていたんですか!?」

「ああ。幻獣の島々を訪れたのではなく、どうやら俺達の所を訪れたみたいだな」

「ジン達を……? それはどういう目的なのかわかるか?」


 こっちの質問に対し、ジンは一考する。


「さすがにどういう目的だったかまでは不明だが、この神殿で色々と調べ物をしたという記録は残っている。天使や魔族の真実が欲しかったのか、それとも他に何か情報を求めていたのかはわからないが」

「……この真実そのものが、何かしら大きな意味を持つということでしょうか」


 ソフィアが口元に手を当て語る。色々と考察できそうな話ではあるが、情報が少ないし今はこれ以上はどうにもできないか。


「――話を古の時代に戻すが」


 と、ここでジンは再び語り始める。


「もう一つ大きな話がある。天使がシェルジア大陸で活発に動く時期は、天使や魔族が引きこもってから結構経過している。その間に大国は分裂したんだが……その過程で二つ重要なことが起きている」

「それは?」

「まず『幻想樹』の消滅。ただこれは原因がわかっていない。この神殿にある知識はあくまで古の時代……大国に関する情報が主で、それ以降の人間達の活動についてはあまり記されていないからな」


 空白の期間があるってことか。


「そしてもう一つ……大国から分割した国々も、どうやらある時を境に崩壊している」

「崩壊……?」

「文字通り、崩壊だ。国そのものが瓦解している……その後、人間達はどうにか立て直したみたいだが」

「……『幻想樹』の消滅と、国家の崩壊については関連性があるのか?」

「正直、明確な証拠があるわけじゃないが……俺はあると思っている」


 ……『幻想樹』という存在が古代の人々にとって重要なものであるとするなら、それを失ったことで一時大混乱に陥った、というのなら一応筋が通らなくもない。問題は『幻想樹』がなぜ消えたのか、ということか。


「その二つの事象に星神が関わっているかどうかは……」

「こればっかりはわからないな。もし関連性があったとするなら、十中八九首謀者とかだろうな」


 ジンはそう結論づけた。そして、


「俺が伝えたい情報についてはこれで一通り話をした」


 そう言って彼は俺とソフィアを一瞥する。


「他に知りたいことがあれば、教えるが……さすがに古の技術とか、そういう情報はないから、悪いな」

「そこは大丈夫……と、一つ気になることが」

「どうした?」

「星神についてだ。古代の人々は地底にいると認識していたのか?」

「……地底に眠りし力、という点で認識はしていたようだ。その力を天使のように研究していたかどうかまでは資料を見てもわからない。もっとも」


 と、ジンは大げさに肩をすくめ、


「認識していた、という時点で調べていたのは間違いないと思う……例えば、誰かが人知れずとか、あるいは国が秘密裏に調べていたとか」


 ありそうだな……まあ多量な魔力の恩恵を受けていた時代だ。地底に凄まじい力が眠っているのがわかっていれば、調べようとするのは当然かもしれないな。


「決して断定はできませんが」


 ソフィアはジンの話を聞いて、考察する。


「大なり小なり星神が関わった事案のような気がします。だからこそ、こうして情報を残すようにしていたのかも……ですが、その場合は星神に関する調査資料なども残しますよね」

「普通ならな。この神殿に残っている資料はあくまで一部。紛失してしまった星神に関するものが入っていても何らおかしくはない」


 と、そこまで言うとジンは笑い、


「今回テラが天使復活の話に乗ったのは、もしかするとその天使が古の時代に関する情報を持っているかもしれない、という考えもある」

「テラにこの情報を伝えてあるのか?」


 俺の疑問にジンは頷き、


「アイツにだけは、な……さて、色々と疑問も膨らむだろうが、そろそろ戻ろう。一度頭の中を整理して、何かあれば質問に答えるとするさ――」



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