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賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

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次の目標

 レドラスが所有していた賢者の魔力は、ゲームの主人公ではないソフィアに入ってしまった。よって、魔王を討つ存在はソフィアということになる。

 最初は焦ったが、これはある意味話が分かりやすくなって良かったとも言える。つまりソフィアを徹底的に鍛えればいい。


 また、俺とソフィアだけで他の五大魔族に挑むのはさすがに色々とリスクが高いだろうし、仲間を加えることも必要だろうか……そして一番気に掛かるのは、他の主人公達の動向。


 アルト以外の主人公達が五大魔族の居城に向かう可能性は否定できない……よって今後は、主人公達が五大魔族を一体ずつ倒すシナリオを防ぐ方針に切り替えなければならない。


 魔王討伐の流れは二つ。一つは主人公の一人が全ての五大魔族を倒すパターン。これにより魔族に奪われていた賢者の力が一つとなり、大陸を崩壊させてしまう魔王の強大な魔法を防ぐことができる。


 もう一方は各主人公それぞれが五大魔族を倒すパターン。これは元々隠しシナリオ扱いで、本来ゲームの主人公達は他の主人公では仲間にできないのだが、それができるのがこのシナリオ。一人ずつが賢者の力を保有するのだが……このシナリオになると、魔王の強大な魔法を防ぐことができない。


 よって大陸が荒廃する……しかもそれだけではない。魔王の力が強化され、結界の力も上がる。結果、賢者の血筋以外の攻撃がほとんど通用しなくなる。つまり、窮地に陥った場合のゴリ押しが不可能になる。


 このシナリオに進んでしまった場合の対策も考えてはあり、魔王を討つことはできるはずだが……強大な魔法を防ぐ手立てがないので、どうにか回避したい。よって今後は、主人公達の動向を観察し五大魔族の戦いに行く前に阻止、もしくは同行してソフィアに賢者の力を入れる必要がある。


 アルトは今後どう動くかわからないが、こうして知り合ったので同行はしやすいだろう。フィリもなんとかなる。だがエイナの場合はそうもいかない。現状騎士達が反撃できるような状況にはないため、現段階でソフィアの存在が漏れると王達がまずい状況になる……まあ、五大魔族に挑むタイミングによってこの辺りは考えるべきか。エイナが挑む時の状況を見て考えるとしよう。


「さて、それじゃあ町に戻るか」


 アルトが言う。全員が小さく頷くと共に、俺は彼に訊いた。


「アルト、今後はどうするつもりだ?」

「……そっちは?」

「色々とやらなきゃいけないこともあるし……当面はそれに注力する」


 ソフィアを見る。彼女は小さく頷き返す。さらに鍛錬を、ということを認識しているようだ。


「俺は……そうだな、この国の状況が気になるし、当分ここで色々活動するかな。あ、そういえばこの国にも遺跡があったはず」

「なら、付き合うよ」


 ステラが言う。するとアルトは「わかったよ」と同意し、イグノスも賛同するのか頷いていた。


 ……ステラにも、賢者の力が宿る可能性があったのだろうか。ふむ、今後主人公達と関わって五大魔族と戦っていくとしたら、どういう根拠で賢者の力を取り込むのかをきちんと考えておかないとまずいな。


 レドラスの戦いを振り返り、なぜソフィアに魔力が宿ったか思考する……トドメはほぼ同時だったがソフィアの方が一歩遅かった。他に考えられるのはレベルや能力の差だろうか? けど似たり寄ったりだと思うのだが……いや、ソフィアの方が少し上かなと俺は戦う前に推測していた。


 関係あるのはその辺りだろうか……うーん、完全なランダムという可能性もゼロじゃない。これについては考え得る可能性を全て潰して対処する他ないだろう。

 そんなことを考えつつ、俺達は町へと向かう。魔物の姿を見ることもなく……仲間達の足取りは疲労が溜まっているとはいえ、軽かった。






 近くの町へと戻ったのは夜。その日はゆっくり休むことにして、翌日。情報収集を行い魔物の脅威がずいぶんと和らいだと聞き、俺達は改めて安堵した。

 その日も休養ということになり、俺とソフィアは食事をとりながら今後のことを相談する。今までも強くなるために旅をしていたわけだが、今後はそれ以上に頑張らなくてはいけない。


「ここで、方針を決めようと思う」


 俺が口を開く。するとソフィアは小首を傾げた。


「方針、ですか?」

「ああ。ソフィアは現在剣技と魔法両方習得しているわけだが、どちらかを中心にした方がいいと思う。両方同じようにやる、というのはどっちつかずで失敗する可能性が高いから」

「なるほど……わかりました」

「で、ソフィアは剣技と魔法、どちらを中心にしたい?」


 どうしたいか推測できているのだが……やや間を置いて、ソフィアは返答した。


「剣です」

「よし、なら次の目的地はガーナイゼだな。今回の魔族は弱体化していたのは明白……だから他の魔族を同じように倒せるとは思わない方がいい。対策は一つ。剣を望むなら、今以上の技術を身に着ける」

「はい」


 彼女は頷く――ガーナイゼとは、大陸の中で唯一闘技場のある街である。ゲーム開発初期は闘技大会とかの案もあったらしいが、魔王の侵攻云々があるのにそんなことをしている暇はないだろうということでボツになった。よって、仲間加入のイベントだったりキャラの強化イベントなどはあるが、闘技場関連のイベントは皆無。


 しかし強化イベントは中々馬鹿にできないものがある……剣技を強化したいなら、絶好の場所だ。

 そして町のある場所は大陸南部……ウンディーネの住処にも近づくため、強化イベントをこなした後、そちらへ行くこともできる。一石二鳥だ。


「というわけで、いいか?」

「はい、わかりました」


 改めて返事をするソフィア。結論もまとまったが――ここで一つ問題が。


「キャルンはどうする?」

「――呼んだ?」


 後ろからキャルンの声。見ると、腕を組み立つ彼女の姿。


「ああ、丁度良かった」

「今後のことを話していたんでしょ? 私からも言いたいことがあって」


 そう語った彼女は、神妙な顔つきで話し始める。


「私は、ここで二人と別れるよ。既に準備したし、今日にも宿を出る。まあ元々無理矢理同行するような形だったわけだけど……」


 キャルン自ら言い出した。何かしら思うところがあるようで、彼女はさらに続ける。


「あの城の戦い……私は完全な足手まといだった。これまで二人にくっついて来たけど、ああした不甲斐ない結果に終わった以上、これ以上お世話になるわけにもいかない」


 ……なるほど。レドラスとの戦い経ての結論というわけか。


「幸い、この国にはちょっとアテがあるの。だから、ここで二人と別れようと思う」

「キャルンさん……」


 ソフィアが名を呼ぶと、彼女は微笑を浮かべる。


「もし、強くなって帰って来たら、また一緒に旅をしてくれる?」

「……どの程度強くなっているか次第だな」


 俺が言うと、キャルンは途端に好戦的な笑みを浮かべた。


「なら、見ていなさいよ」

「楽しみにしているよ」


 こちらの言葉に頷き、彼女は立ち去る。それを見送った後、俺は呟いた。


「……ソフィアの予測は、当たるかもしれないな」

「魔族と戦う、という予測ですか」

「今回の戦いで色々と思うことがあったみたいだし……強い意志を持って、魔族と戦うことになるんじゃないか」

「そうかもしれませんね」


 同意するソフィア――そういえばアルトやステラも、話し合いを行い魔族の動向を注視していくという結論に達した様子。あの戦いを通じて誰もが魔族という存在に真正面から対峙するつもりでいる。

 それはソフィアも同じ――いや、彼女の場合は最初からそうか。


「……ソフィア」

「はい」

「今回の戦い、ソフィアも色々考えたはずだ……今後さらに強くならなければならない。そして魔族との戦いも激しくなるが……覚悟はいいな?」

「もちろんです」


 頷くソフィア。俺はそれに頷き返し――話し合いは終わった。


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