表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者の剣  作者: 陽山純樹
魂の聖域

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

633/1082

戦略

 ――その後、俺はフィリとの戦いの後、他のメンバーとも剣を交わし、戦力を分析していった。


 ……なぜフィリの激突からこういう解説に入ったのかというと、一言で表すと……なんというか、身もふたもない状態となったからだ。いやまあ、それはあくまで「現時点」における話なので今後はわからない……のだが、やっぱりまだ差があることは明瞭なようだった。


 まずフィリについてだが、再度剣を激突させた後、俺は一気に力で押し込み勝利。鍔迫り合いになった直後にそのまま勢いで叩き伏せた格好で、フィリは尻餅をついた後「参りました」とあっさり告げた。


 次の相手はアルト。大剣装備で突撃を仕掛けてくる彼に対し、俺は真正面から応じる。フィリ以上に勢いも鋭く、火花すら散るほどの激突を見せる。とはいえせめぎ合いは俺が勝利――しばし剣を交錯させた後、刀身の根本付近を叩いて大剣を弾き飛ばした。


 次はキャルン。短剣と身のこなしを活かして懐へ潜り込もうとしたみたいだが、こちらはそれを見極めて間合いをとる。キャルンは遮二無二突っ込もうとしたが……その途中で短剣に狙いを定め、叩き落とすことに成功。


 イグノスについては今回はパス(直接戦闘員だけ戦うことにした)なので、次はエイナ。これまでの戦闘を見てか、彼女は真っ直ぐ突撃するのではなく、少しこちらを窺うような形で構える。

 よって、ならばこちらが仕掛けさせてもらったのだが……剣術という観点で言えば騎士としてしっかり訓練している彼女はさすがの一言。こちらの攻勢に対し一時防戦してみせたのだが……あえなく剣を弾き飛ばされて降参の意を示す。


 続いてシルヴィ。切り札とも言える『一刹那』を使うかと思ったが彼女は「封印している」と明言した。


「ちなみにその理由は?」

「大技ではあるが、あれに頼り切りというのもまずいからな……ひとまずあれはなしで戦うことにする」


 とはいえ連撃の鋭さは相変わらずであり、俺の剣を激突することおよそ三十ほど。さすがに力で上回るこっちの剣戟を受け続けたことにより、体勢が崩れ剣を取り落とす。そこで剣を首筋に突きつけ、勝負あり。


 と、そんな感じで終始俺のペース。これは仕方のない話だし、当人達はまだまだ差があると考えているかもしれないが……確実にレベルアップはしているし、差は縮まっている。

 このまま腐らずに鍛練を積めば、『神』に挑めるだけの力になってくれるはず……そんな結論に至っていると、次に俺の前に立ったのはリーゼ。


 彼女の戦いぶりは幾度か目にしているが、こうして真正面から向き合うのは、ほとんどなかったな。


「では、始めましょうか……そっちは疲労とかしていない?」

「平気だよ」

「そう、なら――」


 ハルバードを構えたと思った直後、彼女は俺へ疾駆した。現在もまだ彼女の武器は魔法を用いて作られている――重厚な武器である以上は相応の質量を持たせないと意味がない。よって魔法によるハルバードも見た目通りの重量感を持っているはずなのだが、彼女の動きはそれを感じさせないものとなっている。

 速度はアルトと負けず劣らずだろうか――ハルバードが一閃される。こちらは剣を盾にして斬撃を防ぎつつ、受け流したのだが……想像よりもずっと重かった。


 リーゼは続けざまに二撃目へと流れるような動作と共に放つ。それを今度は回避。切っ先が俺の眼前を通過し――彼女はなおも攻勢に出る。

 これまでの攻防を見ていて力押しは通用しないと考えているはずだが……それでもなお攻め立てるのは勝算があるのか。それともエイナのように受ける選択肢は悪手だと考えているのか。


 ただエイナみたく防戦一方となったらどうしようもないからな……三度目の刃が俺へと迫るが、今度は剣を利用して弾き、軌道を逸らす。

 初撃は予想以上の威力だったので多少驚いたが、それを踏まえれば対応は可能。このまま延々と前に出続けることは難しいだろうし、この調子で動けば確実に息切れする。その時彼女はどうするのか――


 刹那、リーゼのハルバードが放たれ、俺がかわしたことで再び空を切る。確かに見た目とは裏腹に斬撃速度は相当なものだが、俺がかわせないとは考えていないはず。

 こうなるとハルバードの攻撃は本命の目くらまし……か? そんなことを考える間に俺は反撃に転じることにする。もし何かしら思惑があって仕掛けているのだとしたら、戦局を動かしてみれば変化があるかもしれない。


 そういうわけで俺はリーゼへ真っ直ぐ突き込む。次の瞬間彼女は回避に転じ、さらにハルバードを盾にするような構えを示す。

 ここに来て防戦のつもり……いや、俺はこれは「待っていた」という雰囲気を滲ませていると悟る。何か狙いがあって、俺が仕掛けるのを待っていた?


 気付けば戦略的な戦いとなっている……これはリーゼがあえてそうしているのだろう。他の仲間達は純粋に自分の力量がどこまで通用するのかを推し量る狙いがあったのかもしれないが、彼女は違う。自身で考えた作戦がどこまで通用するのかを試している。


 さて、こうなってくると俺も選択に迫られる。一気に猛攻を仕掛けるかそれともあえて一歩退いた立ち位置に戻るのか。

 きっと戻ったら単調な攻撃に戻るのか……そういえば先ほどの斬撃はどこか警戒感が漂っていた気もする。つまり俺が即座に反撃しても対応できるくらいの余力を残していた……そんな感じだろうか。


 ならば――俺は決断し、足を前に出した。もし何かしら意図があったとしても、例えばハルバードを叩き落とせばそれで終わるだろう。いや、こっちは攻撃速度を高めればそもそも勝算があるかもしれない。

 よって、俺は畳み掛けるくらいの心づもりで接近。ともすれば強引に彼女の策略を突破するくらいの勢いで……その時、リーゼが握るハルバードに魔力に変化が。


 彼女もここが勝負だと悟ったか……? 一方で俺は油断することなく剣を放つ。それと共に彼女も応じ、両者の中間地点で武器が――轟音を上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ