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賢者の剣  作者: 陽山純樹
魂の聖域

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遺跡の場所

 今回の仕事は遺跡の探索なのだが……数が結構多いようで、デヴァルスと分担して調べることとなった。


「正直、古の天使達にとっても『神』という存在は不可思議なものだった」


 先んじて調査を開始するべく、城を出ようとするデヴァルスはそう述べた。


「よって、過去の研究を調べてどの程度情報が出るのかはわからない……が、いくつか候補はある。その中でもっとも情報の価値が高いのはレーミッドの研究資料だ」

「レーミッド……天使の名前だよな?」

「そうだ。『神』の力については様々な天使が色々なアプローチを行い調べていたのは間違いない。そうした中でレーミッドという名の天使は『神』の魔力の質について研究していた。ほとんどの天使が根源がどこにあるのかなどを調べていたのに対して、レーミッドという天使は魔力の質という言わば詳細を調べていたわけだ」

「そして、何かしら情報を得たのか?」

「天界に存在する情報では研究テーマなどについてくらいしか把握できなかったのだが、何かしら情報を得た可能性は十分ある……ルオンさんとしては正体というより勝つために情報が必要だろう? なら魔力の質を調べるレーミッドの資料は、何より価値があるとは思わないか?」


 確かに。俺としては『神』がどういう存在なのかだって知りたいけど、それ以上に世界を崩壊させないため、勝つにはどうすればいいのかを考える必要がある。それには『神』の特性などを把握する必要がある。デヴァルスの意見はもっともだ。


「うん、それなら調べてみる価値はありそうだが……俺達はレーミッドの情報なのか判別はつかないから、それらしい物があったら片っ端から持ち帰る、ってことでいいのか?」

「そうだな。現在渡した遺跡について調べたら、一度城へ戻ってくることにしようか。資料にある数なら十日もあれば調査は終わるだろ。そのくらいのタイミングで一度情報をとりまとめよう」

「そうだな」


 ということで方針も決定し、デヴァルスは城を離れた。で、俺の方だが……単独行動でも良かったのだが、今回は帯同する人間が現われた。


「よろしくお願い致します、ルオン様」

「……俺はいいんだけど、よく許可が出たな」


 そう、ソフィアである。魔界から帰還した後、俺は組織作りなどの関係で外に出ることもあったのだが、ソフィアが同行することはなかった。しかし今回は違うようだ。


「はい、天界の長であるデヴァルスさんからの依頼である以上、こちらも相応の者が調査に出る必要があると。ルオン様が赴かれるのであれば、当然私も」


 ……ちなみに彼女の装備は冬用。士官服とまではいかないが、宮廷内で違和感のない、騎士的な出で立ちである。

 そしてソフィアはこう語っているのだが……たぶん大なり小なりゴリ押ししたのだろう。なんとなく重臣達の苦労が窺える……俺としては色々とお世話になっている身だし、ちょっとばかり大変だなと思ったりもするのだが……。


 そして、今回の同行者は彼女だけではない。


「それじゃあ早速行きましょうか」

「……なぜリーゼも同行するんだ?」


 ちなみにソフィアやリーゼの横にエイナの姿もある。彼女については至極当然と言えるのだが、


「別にいいじゃない。私については国の許可などもいらないし、今回帯同したいと思っただけよ」


 俺はエイナを見る。たぶんソフィア達の護衛的な意味合いの同行なんだろうけど、正直王女様二人である以上、胃に穴が開くのではという考えさえ浮かぶ。

 この仕事が終わったら何かしらの形で労ってあげよう……そんな考えを抱きながら、俺は説明を行う。


「デヴァルスさんからもらった資料に基づいて、行動することにする。城から近い場所から順次調査に当たる。なお手に入れた資料などについては必ず持ち帰るけど、遺跡に存在している道具などはよほど強力なものでない限り、放棄するから」

「そこは仕方がないわね」


 と、肩をすくめるリーゼ。なんだか名残惜しそうにも見えるが、資料を優先とする以上は仕方がない。


「一応言っておくけど現時点で武器開発とかもしているし、『神』との戦いで有効な物は自前で作る……魔法も含めて。よって、遺跡内のアーティファクトとか得てもあまり有効活用はできないと思うぞ?」

「お宝を手に入れるということ自体にロマンを見出しているのよ」

「……そうか」


 リーゼはもしかすると、俺とソフィアが行ったような冒険をやってみたいのかもしれない。

 ただ今回は遺跡調査だし、例えば魔物討伐のような派手さはない……リーゼの考える冒険と趣は違うかもしれないけど、


「ま、とにかく足手まといにならないよう頑張るわ」

「……エーメルとの訓練を見ていれば、問題はないと思うぞ」

「そうかしら?」

「そもそも天使の遺跡に出現する敵は、今の俺達にとってみれば強くないだろうしな」


 その辺りは心配していない。問題は、


「罠などが心配だな。魔法などで関知できないようなものもあるから、そこについては十二分に注意してくれ」

「ええ、わかったわ。罠で怪我をするなんて馬鹿らしいしね」


 頷きながら答えるリーゼ。ここで俺はエイナに視線を向けると、黙って頷いた。俺やソフィアの意向に賛同する構えみたいだな。


「では早速向かいましょうか。まずは城に一番近い場所……距離はどのくらい?」

「馬車を使えば半日も掛からず到着できる場所だよ。複数あるからさっさと調べて終わらせよう」

「そうね。ちなみに一番遠いのは?」


 リーゼから質問され、俺は資料を確認する。


「南部まで向かうな……ロロスティア地方にも遺跡はあるみたいだ」

「南部か。私は行ったことがないから足を踏み入れるのもいいわね」

「観光じゃないぞ」

「わかっているわ。浮ついた気分で遺跡に潜ったりしないから、安心して」


 リーゼの言及に俺は「頼むぞ」と念を押し、


「俺達が一番に求めるのは天使レーミッドが保有していたと言われる情報だ。それが手に入ることを祈ろう――」


 そうして俺達は城を出る。真冬で寒く、遺跡の中も場所によっては凍えるくらいかもしれない……そんなことを胸中で思いながら、遺跡探索の旅が始まった。


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