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賢者の剣  作者: 陽山純樹
英雄の下に集う者達

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奇襲作戦

 俺達が進軍を開始するより前に、兵器が存在する五つの拠点に対し、味方が攻撃を開始した。

 さすがにビゼルであってもこの同時攻撃は予想もできないことだろう――そういうわけで、奇襲により敵は完全に浮き足立った。


「行きます!」


 先んじて動いたのは、ソフィアを始めとするバールクス王国の部隊。彼女以外にもエイナや俺の組織に所属する面々……つまり、アルト達なんかもそこにいた。

 その場所……というか兵器が存在している場所は例外なく砦なのだが、ソフィア達が攻めた場所は門も開け放たれており完全に油断していた。よって彼女達は容易に侵入することができ、一気に攻勢が始まった。


 兵器は砦の中庭に存在しており、ソフィア達はそこに目掛けて突撃を行う。一方の敵は狙いが何であるかを即座に理解して対応しようとするが、この場にいるのは主に兵器を管理する者達ばかりで、対応は後手に回る形だった。


「押し潰せ!」


 ソフィアが言い放ちバールクス王国軍は奮起する。魔族であってもその力を発揮しなければ、人間と変わらない――クロワはそう語っていた。動揺する彼らに対し一斉に攻撃することで、敵はその力を表に出すことができず――押し潰される。

 もっとも、砦には多少なりとも兵員が存在している。だがそうした面々に対応したのは、エイナやアルト達だった。


「そらっ!」


 アルトの大剣がうなる。警備役である悪魔がそれを腕で受けようとしたみたいだが、構えた腕はあっさりと両断され、なおかつ衝撃波により粉々に砕け散った。

 さらにキャルンが軽やかな動きで敵を翻弄し、切り刻んでいく。エーメルとの修行は彼らに相当な刺激を与えたらしく、堕天使と戦った時と比較しても動きが洗練されていた。


 この調子ならば、心配はない……そう考えていると、別の砦の戦いに変化を見て取った。


 そこは天使を率いるデヴァルスの戦場。といっても奇襲でありなおかつ天使という人間と比べても相当な力を持つ種族。戦闘員が少ない魔族側に、勝ち目はないに等しかった。


「攻め込め!」


 デヴァルスの号令によって、一斉に兵器とその周辺に魔法が浴びせられる――ソフィア達の場所とは異なりここの砦は門が閉ざされていたのだが、天使には意味がまったくない。飛翔し砦の上から攻撃を仕掛け、魔族や悪魔は右往左往している状態だった。


 まさか相手も天使が相手になるとは想像すらしていなかっただろう。中には呆然とする者までいて、勝敗は既に決したと言って良かった。

 次の瞬間、天使達の魔法により兵器がズタズタに破壊される。それを半ば放心状態で眺める魔族達。正直、気の毒とさえ思える状況だ。


「デヴァルス様、どうしますか?」


 傍にいるネルがデヴァルスへ問う。兵器を壊した以上は任務を達成した。後はどう動くか――


「当初の予定通り、にらみを利かせるべく進軍する……が、俺達で魔族を始末してしまったら元も子もない。クロワの動向はつかんでいるから、彼らと歩調を合わせ動くことにしよう」


 うん、天使達は問題ない。では次は――精霊はどうか。


『短期決戦だ! 兵器を破壊する!』


 そう吠えたのはガルク。少年ではなく元の姿に戻っての攻撃だ。

 横には反対に人間バージョンのフェウスがいた。神霊が肩を並べ戦う……魔族としてはその正体を完全につかむことはできないと思うが、尋常じゃない存在であることは一目瞭然のはず。敵にすれば絶望以外の何者でもないだろう。


 こちらも天使達の砦と同様、門は閉ざされているが――ガルクは吠え、光の槍を放つ。いや、槍といってもそれは巨大なもの。それが砦の門に直撃した瞬間、木っ端微塵に粉砕した。

 さすがに俺やソフィアが破壊した要塞の門ほどの耐久性はないようで、あっさりという表現が似合うほど容易く壊れた。敵としては、茫然自失となる他ない光景だろう。真正面から門を破壊し攻め込む精霊に勝つのは、仮に戦闘員がいたとしても不可能だ。


 中には抵抗しようと動いた者もいたが、精霊達は楽々対処。そしてガルクは悠然と歩を進め、門を抜けると兵器に目を留める。


『――終わりだ』


 威厳に満ちた声と共に、再び光が放たれ――兵器は一瞬でガラクタと化した。

 直後、魔族達は悪魔を伴い逃走する。とはいえガルクは追わなかった。すぐさま精霊達に招集を掛け、次の行動に移す準備を整える。こちらも天使達と同じように行動することだろう。


 では次……アナスタシアが率いる竜はどうか。こちらは門が開いていた。よって真正面から斬り込み、挑んだのだが――さすが、というべきか。

 全身鎧を着た槍兵が悪魔へと向かい、一閃。威力は相当なもので、襲い掛かろうとしていた個体は数体いたのだが、それが例外なく吹き飛ばされる。


 精霊や天使のような派手さはない。けれど一方的な展開であることは間違いなく、魔族達はジリジリと後退していく。

 そこへ、ユスカの奥義が炸裂する――それは一挙に敵を飲み込み、蹂躙していき、文字通り圧倒という感じ。そこへ畳み掛けるように竜が突撃を開始し、制圧していく。


 そしてユスカが兵器へ向け創奥義である『セイントダスト』を放った。光の大砲とでも言うべきその大技は、かつて戦いで見た時よりも遙かに力が高まっていた。エーメルとの訓練も強化した要因の一つだろう。

 結果――たった一度の攻撃で、兵器をボロボロにすることに成功した。


「うむ、これで任務は完了じゃな」


 アナスタシアが発する。敵は兵器がなくなったことで潰乱を始め、アナスタシアは深追いしないよう部隊の引き締めに掛かった。

 相手が雑兵であろうとも、魔族相手に警戒しているというわけだ……しかしここも問題はない。残るもう一ヶ所、バールクス王国以外の面々が集った場所である。


 それを率いるのは、リーゼ――最初それで良いのかと俺自身不安に思ったのだが、ソフィアいわく「リーゼ姉さんは騎士として戦歴がある」として五つ目の部隊を任せることにした。何でも国では魔物討伐などで騎士を率いて戦うこともあるらしい。


 確かに使い魔で観察する限りでは、士気も高くリーゼが大将として動いていることについて問題は生じていない。しかし彼女は他の部隊と違って個人の技量はまだまだという欠点もあるが……それを補うのが、帯同している精霊達とロミルダだった。


 彼女達が狙った砦は門が閉ざされていた。それをこじ開けるにはどうすればいいか……答えは明瞭だった。


「ロミルダ、いける?」

「はい!」


 リーゼの言葉にロミルダは元気よく応じると、手を門へとかざし魔力を収束させた。


 ――空中から観察する使い魔を通してもわかるほどの、驚異的な魔力収束。さすがに俺とソフィアの融合魔法で破壊した要塞の入口を破壊するのは難しいと思うが、この砦ならば、彼女の力で……そう確信させられるほどの強い魔力だった。


 その力の大きさを察したか、砦にいる魔族達は右往左往し始める。今更攻撃を仕掛けても遅いが、それでも守るか攻めるかで戸惑っている様子。

 そうしている間にも、いよいよロミルダの魔法が完成――その直後、彼女が発する紫色の光が、砦の門へと解き放たれた――


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