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賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

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居城の奥へ

 レドラスの居城――その入口の扉が、開く。重い音と共に覗き見えた室内は、外観と同様青一色で気味が悪かった。

 中は魔法の明かりによって照らされており視界の確保は必要無さそうな雰囲気……そして入口付近に魔物の姿は見受けられない。


 罠、という可能性はあった。けれど俺は入口周辺で魔物とエンカウントしないことを知っている。


「手薄ということか?」


 アルトが中を見ながら声を発する。


「しかし、ここまでガラ空きだと、逆に疑いたくなるな」


 その言葉はもっとも……俺の情報だってあくまでゲームの話であるため、状況が変化している可能性はある。注意しなければならないだろう。

 とはいえ、討伐軍が攻め込んだ時よりも魔物の数は少ないのは間違いない……アルトはしばし室内を見回した後、先頭に立ち、足を前に進める。


 よし……俺はここで事前にレーフィンと打ち合わせていたことを実行するべく、行動に移す。

 まず――室内に入った瞬間、俺は突然崩れ落ちた。片膝をつくような形で座り込み――


「……おい!?」


 最初に反応したのはアルト。直後、ソフィアが俺に駆け寄ってくる。


「ルオン様!? どうしましたか!?」

「いや……すまない。入った瞬間、頭がクラッとしただけだ」


 そう言って立ち上がろうとする。演技がバレれば一巻の終わりだし、察しのいいソフィアを上手く騙せるか不安もあったのだが……刹那、


「……どうやら、相性が悪いようですね」


 レーフィンの声がした。これは打ち合わせていた通り。言葉と共に彼女が姿を現す。


「人間の中には、特定の魔族が放つ瘴気に対し抵抗力の弱い人もいます……今、ルオンさんの魔力は通常と比べずいぶんと弱弱しいものになっています。この居城にいる魔族の瘴気との、相性が非常に悪いのでしょう」

「それってつまり、俺の能力が制限されるってことか?」


 こちらが問い掛けると、レーフィンは頷いた。


「どれほどの効果なのかは検証しなければわかりませんが……」

「そうか……とはいえ、退く気はないな」

「いいのか?」


 アルトが確認する。俺のことを憂慮する雰囲気も見受けられるが――


「ここまで手薄な状況……今しかないだろ?」

「そう、だな」

「能力が低くなっただけで、魔法が使えなくなったわけではないみたいだ……自分の身は自分で守る。サポートはするから、存分に暴れてくれ」

「なら、後衛でどう戦うか指示してもらえないか? 魔族の居城である以上、相当気合を入れて戦わないといけない……そうなると俺やステラは前以外見えなくなるからな」

「俺でいいのか?」

「ああ。一緒に戦ってきて視野が広いと俺もわかっているさ」

「……わかった」


 アルトの提案に了承。一方ソフィアは不安げな表情を見せてはいたが……俺の意思に従うのか小さく頷いた。


 ――俺が本気を出すことでレドラスに能力が伝わる可能性を考慮し、サポートという立ち回りを行うための考えがこれだった。それに、こうする理由はまだある。昨夜行った、地底調査だ。


 レドラスの魔力を多量に所持したドールキングは、攻撃により俺の能力を把握した様子だった。弱体化したレドラスが同じようにできるかわからないが……それなりに気合を入れて攻撃した場合、露見する可能性が存在する。さらにまだ事情を話すべきではないというレーフィンの進言もあり……結果として、一芝居することになったわけだ。


 無論、危なくなったら対処する……全員生還が前提だ。緊急時用の腕輪も渡しているので、大丈夫だとは思うが……心構えだけはしておいて、俺は仲間の後方へと移る。

 そして室内を見回す。瘴気が立ち込め、息苦しささえ感じられる。


 アルトやソフィア、さらにステラについては賢者の血筋だからだろうか……瘴気に当てられてもそれほど堪えていない。反面、イグノスは顔をしかめ、キャルンもまた胸焼けでもするのか一度手で胸を押さえた。

 俺は瘴気を肌で感じつつ真正面を見据える。エントランスとでも言うべきこの場所に、奥へと続く道はただ一つ……よって、俺達はそこを進む。


 やがて魔物と遭遇した。見た目は漆黒のヒョウ。ゲーム上の名では『シャドウパンサー』という名前だった。


「気を付けろ!」


 俺は即座に声を上げる。こいつはこれまで出会ってきた魔物とそれほど変わらない能力ではあるが……回避率が高くてすばしっこく、ネチネチと攻め立ててくる嫌なタイプ。

 こういう相手の方が、こちらに怪我を負わせる確率が高く非常に面倒……後続にゴブリン系の中級種である全身を鎧で武装した『ゴブリンナイト』も発見。これは今までこの国で遭遇してきた敵だが、連携をとられると厄介だ。


「アルトさんとステラさんは後方にいるゴブリンに対応! キャルンとソフィアでヒョウみたいな奴を倒せ!」

「わかった!」


 アルトは『ゴブリンナイト』へと走る。すると『シャドウパンサー』が反応したが、その動きを阻むようにソフィアが前に出て剣を放った。

 次いでキャルンが動く――が、いつものようなキレがない。どうやら瘴気の影響によって動きが多少なりとも鈍っているらしい。


 補助魔法を使うか――そんなことを思っていた矢先、ソフィアの剣が『シャドウパンサー』に当たった。

 さすがに一撃というわけではないが、威力はそれなりにあったらしく魔物は大きく怯んだ。次いでキャルンの攻撃。とはいえ短剣で潜り込むにしてはやや勇気がいるのか、鈍った動きで放った剣戟は浅かった。


 反撃がくるか――と思ったが、ソフィアが上手く立ち回り追撃に成功。続けざまに『エアリアルソード』と剣戟を放ち、撃破に成功した。


「ごめん、助かった」

「いえ」


 短く会話を行うキャルンとソフィア――対するアルトはステラと連携し一気に『ゴブリンナイト』を迎撃する。その動きは正確で、兄妹であるためか連携も見事。直接攻撃しかしてこない魔物相手に、一方的な攻撃で沈めた。


 魔法などを使ってこない限りは、おそらく問題ないだろう……都合のよいことに、この居城で出現する魔物は直接攻撃中心。連携が上手くとれるなら、攻撃を喰らわずに戦うことも十分可能だろう。


 こうした魔物の特性はこの城の主であるレドラスに影響している……奴自身武器攻撃主体の能力であるため、魔物もそうした特性を引きずっているのだ。

 とはいえ、物語の後半に相手をするとなると能力的に高いものばかりな上、攻撃力が相当高かったり、あるいはクリティカル率が高いなど特色が出てくる。しかし今の段階ではまだまだなので、比較的楽に対処できる。


 以後何度か魔物と遭遇したが、無傷で対処できた。俺も検証をするように魔法を使い……攻撃魔法などの威力が大きく下がり、反面補助魔法などはそれほど変わっていないと皆に説明した。


 奥へ進むにつれ、レドラスとの対決について考え始める。途中で急に敵が強くなるような現象はゲーム上ではなかった……よって、このまま進めばレドラスの所に辿り着けるのは間違いない。


 しかし、現状まだソフィア達は中級技を習得していない。火力不足とまではいかないが、このままでは苦戦する可能性が高い。


 さらに、レドラスの攻撃……奴の攻撃は風と組み合わせたものが多い。特に厄介なのが魔導技。レドラスの武器は槍なのだが、一番厄介なのが中級魔導技の『ブラストランス』だろう。


 この技は風をまとわせた強烈な刺突により相手を攻撃するのだが……クリティカル率が高く、当たり所が悪いとゲームでも一撃で倒されてしまう可能性のある技。対処法は魔法である『エアーシールド』を用いて風の耐性を上げること。ただこの魔法は一度かけたら完全に効果が消滅するまで再度かけることができない上、時間が経つと効力が弱まる。


 まともに一撃でももらえば戦線離脱を余儀なくされる程のダメージを受けるのは間違いない。俺が魔法を使ってシールドを張るタイミングが重要となるだろう。


 考える間にも、アルトを先頭にして進んでいく。レドラスの居城はいくつか分岐もあるがその全てが宝箱のある場所であり、基本一本道である。ひとまず順調に……ただこうなるとソフィア達が技を覚える時間もない。


 こうなるとレドラスとの戦いの中で成長することを期待するしかないだろう……ゲームでは戦闘が終わった後技を習得していたが、ソフィアの戦いを見た森の依頼から、戦いの間でも習得できることはわかっている。ならば――


 その時、見覚えのある場所――レドラスのいる広間への扉の前に到達した。


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