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賢者の剣  作者: 陽山純樹
英雄の下に集う者達

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模擬戦準備

「こうして呼んでくれるってことは……少しは認められたということか?」


 そう問い掛けたのは、アルト。俺がリチャルの次に呼んだ人物は、アルトとその一行だった。

 彼の後方にはキャルンとイグノスの二人。キャルンはこちらに対し小さく手を振り、イグノスは会釈をした。


「堕天使との戦いとか、色々あったからな。その辺りも考慮して、か?」

「そうだな」


 同意し、俺は確認の意味を込めて問い掛ける。


「ここに連れてきてもらうまでに説明は聞いたはずだ」

「ああ。堕天使なんかよりも遙かに強い存在と戦うって話だな」

「そうだ。これには神霊や天使もまた参戦する。そうした中で剣を振る勇気はあるのかどうか」

「愚問だな」


 アルトは肩をすくめる。後方の二人もまた同じような反応だった。


「やる気はあるさ。ただ、俺達が役に立てるかどうかだが……」

「そこについては色々と検証してからだな。修行相手もいるから頑張ってくれ」

「修行相手?」

「ああ……まず、その辺りの経緯についても説明しないといけないな」


 ちなみにその解説役はエイナが請け負うことになっている……この組織に入ってもらう以上は、俺のことを含め改めて全ての情報を伝えるようにするということも決めてある。そういうわけでアルト達は一度引き返し、エイナの説明を聞きに行く。


 そして一人残された俺。どうするかと考えている間に、別の人物からお呼びが掛かった。


「ルオンさん、ここにいたか」

「ん、クロワ……どうした?」

「今後の方針について、一つ気になったことがあって話をしに来た」

「魔界の戦いについてか?」

「ああ。戦力がどれだけ結集するかわからないが、現在把握できるだけでも相当なものになる。兵器破壊は十分可能だろうし、スムーズにいけばビゼルとの戦いは有利に進められる」


 精霊や天使が手を貸すのだ。そのくらいやってもらわないと困るな。


「それで、ルオンさんは組織を作るんだったな。となれば組織内の人間は当然ルオンさんの指示で動くはずだ。その辺りをどうするか……」

「あー、クロワ。ひとまず組織がきちんと形になるのはこの戦いが終わってからになると思うぞ」


 こちらの言葉にクロワは眉をひそめた。


「組織を結成して魔界には行かない、と?」

「人員候補となる人物については俺が指揮をすることになるとは思う。ただそれは精霊や天使といった数々の部隊の一つとして認識してもらえればいい」

「つまり大々的な戦力としては考えない方がいいと」

「そうだな。ソフィアやエイナの立ち位置は微妙だけど、もしバールクス王国側が戦力を集めるなら、二人のどちらかがバールクス王国軍として率いることになるとは思う」


 個人的にはソフィアじゃないかと思っているのだが……エイナはあくまで騎士で指揮官といった役割じゃないからな。そういうのは基本、王女であるソフィアの役目だ。

 彼女は「組織の一員として動く」と言い出しそうな気もするけど、ここは説得次第だろう……ん、待てよ。魔界の戦いに際し「まだ組織を結成していない」というのを口実にして、俺やアルトなどの人員をまとめてバールクス王国軍として考えた方が効率いいかもしれないな。うん、そうしよう。


「場合によっては俺を含めた組織メンバー候補を全てバールクス王国軍として勘定したらいいんじゃないか」

「なるほど……わかった、参考にさせてもらう。ただどういう場合でも、ルオンさんとソフィアさんには色々動いてもらうことになるかもしれないが……」

「それでビゼルとの戦いに勝てるのならいいさ」

「ありがとう」


 クロワは礼を述べ立ち去る。さて、俺も一度部屋に戻るか……などと思った時、ふと気になることが。


「……部屋もこっちに移した方がいいか?」


 その方が便利そうだけど……荷物とかもないし移動するのは楽だからいいかな。

 それに今の部屋だと色んな人が……場合によっては大臣とかお偉いさんが来たりする可能性もあるし、ここならそういうことも少なそうだし。


「うん、そうだな。エイナにでも言ってこっちで寝泊まりすることにしよう――」


 決めたのだが、あいにくエイナはアルト達と話をしているはず。たぶん終わったらアルト達が戻ってくるだろうから、施設案内や部屋をどこにするか選んでもらって、それから引っ越しを――


「ルオン殿、少々いいか?」


 また来訪する人物。アナスタシア公爵だった。


「ん、アナスタシアか」

「わしの方もそろそろ一度国へ戻ることにする。ただし、ユスカとカトラについて頼みがあるのじゃ」

「二人は護衛だろ?」

「そうじゃが、組織を設立すると聞いたので、まず二人を預けようと思ってな」


 ……ユスカ達なら確かにこちらとしても戦力として心強いけど、


「それは魔界の戦いが終わってからじゃ駄目なのか?」

「別にそのタイミングでなくとも構わないのじゃが、あの二人を鍛えてくれるというのなら、早いほうがいいかと思ったのじゃ」

「……鍛えるという言い方をするか」


 まあ『神』に挑むだけの実力を得るという意味もあるなら、相当な成長になるとは思うけど。


「でも最悪の事態も考慮して欲しいんだが……俺はそうならないよう努力するけど、絶対に大丈夫だとは言えないからな」

「そこについてはユスカやカトラも了承済みじゃ。二人ともルオン殿に色々世話になったから、手伝いたいようじゃし頼む」


 うーん、そういうことなら……ふむ、現時点で結構戦力が集まったな。リーゼを入れていいのかいまだに疑問があるけれど。


「それでじゃな。面白い話を聞いたのじゃよ。魔族エーメルから」

「……あいつ、俺が提案したことを話したな?」

「そういうことじゃ。魔王候補というのがどのくらいの実力なのか、それを含め検証したいと思ったのじゃ」


 なるほど……アナスタシア側からすれば、魔界という見知らぬ領域に足を踏み込むわけだ。場合によっては魔王候補とはいかずとも、魔族と交戦する必要がある。

 ビゼルには戦いに長けた部下もいるわけだし、戦力調査的な意味合いでエーメルと模擬戦をするのはよさそうだな。その結果を考慮してアナスタシアなんかは戦力を揃えてくれそうだし。


「……言いたいことはわかった。ならまずは今回ここに来てくれた仲間を含め、一度デヴァルスが作った異空間の訓練場に集まろう」

「そこで実戦してみる、というわけじゃな」

「そうだ。戦力分析などを含め色々やらなきゃいけないわけだし、それをこの機会にやってしまうのはよさそうだな」


 ソフィアは以前エーメルを圧倒していたけど、他の仲間達はどうか……それを確認するにはいいだろう。


「よし、なら明日にでも早速行動してみることにする。アナスタシアは明日まではいるか?」

「そうじゃな、ユスカ達の戦いぶりを見てから帰ることにしよう」

「決まりだな。早速エーメルの方にも打診してくる。彼女なら二つ返事だろうから、問題はないな」


 アルト達を含め、今回集った者達はどう戦うのか……色々と予想をしながら、俺は行動を開始した。


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