表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者の剣  作者: 陽山純樹
魔王の庭

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

580/1082

集う者達

 まず俺は緊張を伴いながら会議室の扉をノックをした。これで誰かが出てくれば話は早かったのだが、


「――すまない、用は連絡した通り魔法が発動した後にしてくれ」


 そういう声が聞こえてきた。というか今のは、


「エイナですね」


 ソフィアが述べる。うん、間違いなく彼女の声だった。


 で、反応はそれだけ。つまり室内では何かしらの作業に集中していて外に出てくる気はないということだ。

 現在はいよいよ魔法を使おうとしている段階なのだろう。


「……どうする?」


 俺はドアノブを回してみる。鍵はかかっていないので入れる。


「……私達に関することでしょうし、入りましょう」


 緊張を伴いソフィアが言う。うん、俺もかなり緊張している。


 果たしてどういうことになるのか……ゴクリと一度唾を飲み込んだ後に俺は扉を開けた。

 そしてソフィアと共に中へ入る。最初に見えたのは広い会議室の中央で話をしている王を始めとした面々――


 そこで俺とソフィアは固まった。まず彼らはこちらに気付いていないのだが……その、メンバーが無茶苦茶だった。


 エイナや王がいるのは理解できる。どうやら城内の重臣がこの場にいるのは間違いないと思う。で、ガルクがいるのも想定していた。こちらは人間バージョンなのだが……彼に加えてフェウスやアズアという残る神霊も人間バージョンでこの場にいた。

 さらに言えば、ソフィアが過去に契約していた四大精霊……レーフィンやアマリアといった精霊までもいた。うん、ここまではいるかもしれないなと予測していた。


 問題はここからだった。トルバシア帝国――つまり竜の大陸にいるはずの侯爵、アナスタシアがこの場にいた上に、なぜか共に戦ったユスカもいた。

 話はそれだけではない。天界の長――デヴァルスとその側近であるネルまでいた。精霊、竜、天使……竜については皇帝ではないため代表者というわけではないのかもしれないが、俺達が過去に旅をして関わった者達が、この場に揃っている。


 というか、オールスターである。さすがに予測できなかったメンバーであるため、俺とソフィアは絶句した。


 そして間を置いて、エイナが扉が開いたのに気付いたかこちらを向く。騎士服であり鎧を身につけていないが、毅然とした態度で、


「現在会議中であり――」


 言葉が止まる。まあさすがに俺とソフィアが立っているとは思わないよな。

 そしてそれに気付いた会議中の全員がこちらを向く……全員が目を丸くしている状況の中で、俺はどうにか言葉を絞り出し、


「た、ただいま――」


 そんな悠長の言葉しか吐けなかった直後、一斉に――本当に一斉に、先に語った面々が全員押し寄せてくる。ちょ、ちょっと待て! 怖い!


「ルオン殿、無事か!?」


 いち早く問い掛けたのはガルク。以前の時のように人間バージョンは少年の姿。俺はその質問に対し頷く他なく、


「あ、ああ。怪我とかもないよ――」

「体に異常はないか!? 何か精神的な被害などは――」

「いや、ないって。えっと、事情については今から説明する――」

「ソフィア様、お体に問題はありませんか!?」


 俺の隣ではソフィアが俺とまったく同じ事をエイナから訊かれている。頷く彼女に対しエイナは何度も怪我はないかと問い掛ける……って、動揺しすぎだろう。

 というか、彼女の横では会議の席上にいたらしいロミルダがガン泣きして彼女の袖をつかんでいた。それにソフィアは苦笑しながら頭を撫でる……一番不安だったのはロミルダだっただろうし、申し訳なく思う。


「偽物、じゃないよな?」


 ここで疑問を口に挟んだのはやや後方にいたデヴァルス。俺はどう証明するか視線を転じ……会議室の奥に使い魔である鎧天使、レスベイルが仁王立ちしているのを発見する。

 俺はここで意思疎通を図ってみる。すると反応。そこで、


「レスベイル」


 名を呼んだ瞬間、鎧天使は動きだし俺にゆっくりと近寄ってきた。


「俺の使い魔が言うことを聞いた。これで証明にならないか?」

「ああ、確かに……というか、どこに行っていたんだ?」

「それについては今から説明する――エイナ、同じ質問を何度も繰り返さなくていいから!」


 いまだに怪我がないか問い続けるエイナにツッコミを入れると、彼女もまた泣き始めた。


「本当に……ご無事で……良かった……」

「えっと、その、ごめんなさい、心配かけて」

「――そういえば、俺が行方不明になったきっかけを作ることになってしまった騎士はどうしてる?」


 こちらの質問にエイナは衣服の袖で涙を拭いながら、


「職務には当たっているよ……その、顔面蒼白だが」

「俺達は無事で、何事もなくて気に病む必要はないと伝えてやってくれないかな……」

「ああ、わかった。それで、陛下――」

「魔法は中止だな」


 クローディウス王は答える。あー、やっぱり俺達に関することだったのか。


「ともあれ、本当に無事で良かった」


 そう感情を露わにしていない王であったが、内心では心底安堵していることだろう……と、次に発言したのは、


「今まで帰ってこられなかったのには、理由があるのか?」


 アナスタシアだった。俺は答えようとして――その前に、問い返す。


「俺達を探すためにここに来たのはわかるんだけど、なぜアナスタシアが?」

「さすがに陛下が来るわけにもいかなかったからな。神隠しの先がナーザレイド大陸であった可能性を考慮し、わしが代表でここに来たのじゃ」

「ああ、なるほど……ユスカの他にも人はいるのか?」

「カトラが来ているのじゃが、今回使用する魔法との相性が悪いようで、実験段階で気分が悪くなると訴えた。よって、避難場所にいる」


 ……もしかしたら他にもそういう事情で護衛が避難しているのかもしれない。まあ状況はわかった。


「今回わしは全権委任という形でここに来ている。もしルオン殿から要求があれば聞くぞ。場合によっては国が動く」

「……そこまでするのか?」

「ルオン殿やソフィア王女がいなくなったのは、そのくらいの出来事だったというわけじゃな」


 ……帝国側も一報を聞いて思うところがあったのか。まああの戦いでも俺やソフィアはずいぶんと関わったからな。


 俺は次にデヴァルスに顔を向ける。彼は俺を見返すと黙って頷いた。たぶんアナスタシアと同じだ、と言いたかったのだろう。

 しかも天界の長である以上は、今回俺達の捜索に本腰を入れた形となるか……功績を考えれば動く可能性はあり得たけど、まさか本当に天界の長がこの場に来るとは。


 そしてよくよく考えれば精霊、竜、天使と権力を持つ面々が一堂に会しているので話しやすくはあるけど……これ、クロワ大丈夫なんだろうか。

 というかそもそも彼らが蚊帳の外である……どう話を進めたものかとソフィアに視線を移すと、彼女はエイナだけでなく重臣や精霊達に詰め寄られて困惑しているようだった。あ、駄目だこれ。


「――えっと、ひとまず話を進めたいんだけど、いいか?」


 とりあえず水を向けてみると、デヴァルスは視線を入口へ移し、


「同行してきた人物と関係しているのか?」


 まだ魔族だと気付いているわけではない……いや、精霊やら天使やらがいる場所なので魔力が乱れているっぽいな。実際俺も上手く魔力探知できないし。

 ひとまず混乱のるつぼになっている状況を改善しないと……そうした中でクロワの方を見ると、彼は苦笑していた。そしてエーメルは爆笑していた。こっちはなんか腹立つな。


 ともあれ、俺は目の前の面々に事情説明をするとして、席に着くよう促す――そうして少しずつ、混乱は解消していった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ