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賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

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地底の戦い

 下へ進む通路は螺旋状の下り坂となっており、俺達はゆっくりと進む。歩いている途中、僅かながら瘴気を感じ取ることができた。地底に存在している魔物は間違いなく『ダークドール』だが、個々の能力が高くないことを踏まえると、間近に迫る前に瘴気を感じ取れる可能性として考えられるのは――


「現段階でも相当な数、存在しているようだな」

「……一つ質問が」


 レーフィンが小さく手を上げつつ俺に問い掛けてくる。


「その魔物というのは、どれほど出現したと物語では記述されていたのですか?」

「具体的にはわからないな。けど、どうにか態勢を整えた一国の騎士団が数に苦戦したという話はあったから、百や二百なんて数ではないだろうな」


 下手すると数千とか……ただゲームで直接描写されていなかったので、現実世界となった今ではそれもまた変化している可能性がある。

 そうこうしているうちに、とうとう通路は地底へと辿り着いたのか、坂が途切れ直進の道になった。


「さて、どのくらいいるかな」


 明かりを先へと向け照らす。通路の出口が見え、俺達はとうとう『ダークドール』を目にすることができ――


「……え」


 レーフィンが声を上げた。次いでロクトが沈黙する。


 そして俺も……『ダークドール』は、確かに弱い。一応例外も存在するらしく、設定資料集には体格も大きく一般的な騎士や戦士では対応できない者も存在しているとの記述はあった。


 しかし今明かりによって見えているのは体格の小さい、ごくごく普通の個体。人形のような生気を感じさせない作り物のような漆黒の肌に、瘴気。不気味ではあるが、恐怖は感じない。

 問題は……明かりに照らされた範囲の時点で、その数は百以上いるんじゃないかということだ。


「……この時点で、これだけの数が?」


 俺が声を発した直後、通路に一番近い『ダークドール』が俺達を見据え警戒を示す。鳴き声のようなものは発さなかったが、それに続き他の個体も俺達へ体を向き直り……その所作はどこか不気味だった。


「レーフィン、ロクト。数がどのくらいかって、わかるか?」

「気配などから算出するにしろ……」


 レーフィンが呻くように発言する。


「すぐ答えられませんが、もしかすると千を超えている可能性も……」

「それで済めばいいくらいでしょうね」


 さすがのロクトも驚いた様子。


「個々の能力が高くないというのは事実でしょうが、さすがにこれだけの数がいるとなると……」

「そうだな……それじゃあ質問」


 俺はレーフィンやロクトに問い掛ける。


「俺が本気を出して一気に殲滅した場合、レドラスに気付かれると思うか?」

「……大地に魔力を注いでいる以上、地底に出現した大きな魔力に気付く可能性はないとは言い切れませんね」

「中級魔法ではどうかな?」

「わかりませんが……可能性としては考えられます」


 レーフィンが言う。それに俺は「わかった」と返答し、


「なら、レーフィン達の気配はどうだ?」

「……それもまた、気付かれる可能性があると思います」


 となれば、選択肢は一つだな。『ダークドール』は魔族や魔王が出現に気付いていなかったくらいなので、ここで殲滅しても問題はないだろう。もし気付かれたとしても、俺達がやったという痕跡さえなければ居城に踏み込んだ時に警戒はしないはずだ。よって、魔力を発するのを抑え、正体が露見しないよう立ち回るべき。


「ロクト、確認だが調査はこいつらを突破しないと無理だよな?」

「そうですね」

「なら、少しばかり掃除するか。俺に任せてくれ。レーフィンやロクトは、身を守ることを考えるように」

「なら、一時的にですがルオン様の体の中へ」

「契約者以外にもできるのか?」

「疑似的なものなので、私達の力をご利用できませんが」

「なら、それでいいさ」


 レーフィン達の姿が消える。それと同時に俺はまず剣を鞘にしまう。これだけの数を相手にするには剣ではしんどい。手早く終わらせるには、武器を変更する。

 僅かに詠唱すると、俺の目の前に光が生じる。それに触れた矢先、光が収束し一本の槍が出現する。


 これはゲーム上に存在していなかったタイプの魔法……上級魔法に『氷霊剣』など魔法により剣を生み出す手法が存在するのだが、これはそれらと同系列の下級魔法。魔法の槍を生み出すもので、攻撃力は一般的な鉄の槍とほとんど変わらない。


 修業時代、剣だけではなく槍とか斧とかの武器も使ってみたわけだが、基本的には一番使い慣れた剣だけで十分という結論に辿り着いた。弓などについては魔法の方が有用性が高いので使用する機会はないし、体術も役立つ技はあるがこれまで使用機会はなかった。


 ただ、槍は少し違う。俺一人対集団という場合、範囲攻撃を多く持つ槍技はかなり便利というわけだ。

 それに俺の能力なら単なる横薙ぎでも魔物には致命傷となる……警戒しこちらに向きながら襲い掛かってこない『ダークドール』を見据え、俺は通路を駆け抜け広い地底へと飛び出した。


 手を出してくる前に、先んじて横薙ぎを繰り出す。刹那、攻撃範囲に入っていた魔物達は例外なく吹き飛んだ。少しばかり身体強化を施した程度の攻撃だったわけだが、それでも『ダークドール』達には十分だったようだ。


 できるだけ外部に魔力を漏らさないように動く……現時点でその辺りのことがまだまだなわけだが、今回については実力を出さなくても問題はなさそうな雰囲気。ただ一つ気になることは――


「……多いな」


 ボヤくように声を発する。地底の底に存在していた魔物の数は、それこそ百や二百という数を優に超えている。俺の行動を見て襲い掛かってくる魔物を薙ぎ払いつつ、周囲に視線を巡らせる。


「ロクト、どの方角だ?」

『真正面です!』


 頭の中に響いた声に応じ、俺は足を前に出す。するととうとう『ダークドール』達も動きが活発となる。俺達を押し潰すかのように一気に迫り――対する俺は、槍を豪快に振るった。


 前方にいた十数体の魔物が槍に触れ一気に消し飛んだ。魔法により生み出した槍は刃先以外の部分も魔力が生じるため、そこに当たっても効果がある。よって槍に触れた魔物は、例外なく消え去ることになる。


 槍を握り直しさらに迫る魔物へ攻撃を仕掛け、今度は回転斬りの要領で一回転。前後左右から迫ろうとした魔物達はあっさりと吹き飛ばされた。


「……ん?」


 その中で、明かりに照らされ他の魔物と比べ倍近い背丈がある奴を発見。他の魔物と比べ魔力を多く吸収し形作られた存在なのだろうと見当をつける。

 そいつもまた、俺へと襲い掛かってくる……周囲の魔物を蹴散らしながら、俺は真正面から背の高い奴と向き合った。


「他と比べて強いのかもしれないが、それでも――」


 突撃してくる魔物。俺は素早く刺突の体勢に入り――汎用下級技『閃光突き』を放った。

 魔力を込めた威力ある突きを放つ技。それは突撃する『ダークドール』へと直撃し……あっさりと吹き飛び、消滅した。


 余裕、と思ったがその魔物に気を取られていたためか周囲の魔物が包囲を一気に狭めてくる。タコ殴りにされても痛くもかゆくもないが、攻撃を受けて時間をとられるわけにもいかない。俺はすかさず槍を振るい、近づいてこようとした魔物を全て吹き飛ばす。


 ここで、魔物の動きも変わる。連携も何もあったものではなかった魔物達が突如整然とした動きに変わった。

 魔族の差し金か――などと思ったのは一瞬。俺は進行方向に一際大きな瘴気を発する存在を感じ取った。


「その瘴気によって、魔物の動きを制御しているといったところか……?」


 俺達を包囲するように攻める魔物の後ろに、突撃の用意をする魔物の動きがある。いや、それだけじゃない。さらに後方から瘴気を放つ奴がいる。


「レーフィン、ロクト、どうやら指揮している奴のさらに後方に強い個体がいるみたいだが――」

『はい。その魔物が、この場にいる中で最も強いです』


 レーフィンが答える。俺は「わかった」と応じつつ、指示を受け突撃する魔物を見据える。

 まるで一個の軍のよう……思いながら俺は差し迫る魔物達を蹴散らす。指揮官の瘴気により、周辺の奴らはキビキビと動いている。なら、指揮する奴を先に倒した方がいい。


 そういう判断のもと、俺は前方の魔物を吹き飛ばし突撃を仕掛ける。すると瘴気を放つ魔物も果敢に向かってきた。俺はすかさず槍を放ち――撃破に成功。瘴気も途切れ、周囲の魔物の動きも鈍る。


 よし……心の中で呟くと同時、俺はさらに前方にいる強い瘴気を放つ奴を捉える。俺と変わらない身長を持った個体……そこへ目掛け、俺は駆けた。


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