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賢者の剣  作者: 陽山純樹
魔王の庭

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554/1082

砦の中へ

 俺とソフィアは同時に魔力を解放し――『ディバインロード』の融合魔法を放った。雷撃がまるで大砲のように俺達の真正面から放たれ、要塞にいる魔族や悪魔はどう感じたか。


 刹那、雷撃が巨大な鉄門に直撃する。ガアアアアアアア――と轟音が響き雷撃が大気を切り裂き、周囲に飛んでいた悪魔が余波によって墜落していく。

 そこで、要塞の上部にいた魔族が何やら動き始めるのを捉えた。おそらくこちらの所行を見て慌て始めたか。


 向こうが浮き足立ったのならば、好機……そう考えながら俺とソフィアは魔法を放出し続け……やがて、魔法が途切れた。

 結果は――


「……見事だ」


 クロワが言う。鉄門に巨大な穴が空いていた。向こう側がくっきりと見え、どうやら扉の直線上にいた魔物達は消え失せている。


「行くぞ――!!」


 クロワの声。同時に魔族達が指示を出し、一斉に突撃を開始した!

 それは、悪魔などの巨躯が存在するためか人間が行う突撃よりも遙かに迫力があり、これを目の当たりにした敵はどう思うのか。


「……ルオンさん達はどうする? さっき話した通りにやるか?」

「そうだな。門から侵入したら砦の中に入って指揮官的な敵を倒すか」


 門を破壊されたことで、敵はどうやら浮き足立った……入口を守るべく悪魔などが空から強襲してくるが、それを魔族達が魔法で迎撃し、さらに悪魔で駄目押しをする。

 加え破壊された入口周辺も魔族が一気に畳み掛ける格好……これなら正面から押し入って建物の中に入れるだろうな。


「味方も制圧するべく砦の中に入るだろうけど……ひとまず門を抜けてから詳細は決めよう」


 そうして俺とソフィアは進み始める……その間にも味方は攻勢を続け、敵は混乱しているようだった。

 やがて――俺達が破壊した門を抜け砦内を確認すると、門周辺以外からの建物の中から悪魔や魔族が雪崩を打って出現し、こちらを押し留めているような状況。


 なおかつ、複数建物が要塞内にはあるが、それらは上階同士が連絡通路によりつながっている。どこかの建物に入れば行き来はできるな。


「クロワ、どうする?」

「……建物の内部構造まではさすがにわからないし、危険が伴う。それに敵の数もまだまだいるようだし、外の戦いをおざなりにはできない」

「よし、なら俺とソフィアで指揮官を倒す……が、そいつを倒せば動きは止まるのか?」

「砦の主はビゼルの配下である以上、ウィデルスと同じような形になるとは考えにくいが……」

「ま、いいさ。ともあれ俺達は建物の中に入る。外は頼んだ」

「ああ、任せてくれ」


 クロワと分かれ、俺とソフィアは近くにあった建物の入口から中へ。テキトーに入ったけど、指揮官が逃げ出したら外の魔族達が頑張ってくれるだろうし、それはそれでよしとしよう。

 そして――建物の中にわんさか魔物がいた……のだが、俺とソフィアは並び立ち交戦。一閃すると、ものの見事に敵が消滅した。


「うん、問題はないな」

「突破しましょう」


 ソフィアの言葉に俺は頷き、駆ける。進路を妨害する魔物を優先的に始末し、最短距離で上階を目指す。

 当然後方からは侵入者を排除すべく魔物が追ってくるわけだが……そこへソフィアが手をかざし、


「――大いなる雷よ!」


 放ったのは『ライトニング』。幾度も放たれ使い慣れた魔法は、最初の一体を貫通したかと思うと、後続の魔物も全て巻き込み一気に灼ききる!

 次の瞬間、直線上にいた敵がまとめて消滅した。狭い建物の中なら易々と対処できるな。


「ソフィア、上へ……まずは連絡通路を目指そう」

「わかりました」


 階段を駆け上がり二階へ。そこには魔族がいたのだが、相手が動揺している間にこちらが切り込み――その実力を発揮できぬまま滅んだ。


「不意をつけば楽勝だな……さて、道はどっちなのか」


 廊下は広く左右に道が続いている。あんまり悠長にしていると指揮官に逃げられる可能性が高いけど……と、ここで右方向から階段を下りてくる音が。


「逃げようとしているのか?」

「退却しようとしているのなら、指揮官である可能性も」


 俺とソフィアが視線を転じた瞬間、階段から下りてくる敵の姿を発見した。それは鎧を着る魔族……護衛らしき魔族も複数いることから、少なくともこの建物の中で偉い存在があの中にいるのだろうと結論づける。


「――敵だ!」


 魔族の誰かが叫ぶ。同時、複数の魔族が手をかざして火球を生んだ。

 それが一斉に俺とソフィアへ向け放たれる――その寸前、俺はソフィアとアイコンタクトを交わし、こちらが一歩前へ踏み出した。


 途端、火球が爆発し周囲に粉塵が舞う。視界が効かなくなり轟音により声なども聞こえなくなる。

 だが気配だけはつかむことができた。俺は敵の方向へ煙をかき分けながら突き進む。そして真正面にいると悟った瞬間、煙が晴れ敵の姿を確認した。


 相手は合計五人。全てが画一的な装備ではあったが、一番後方にいた魔族だけが鎧に多少なりとも装飾が施されていた。指揮官か踏み込んだこの建物の管理者か。どちらにせよ、階級が上の魔族。

 それを視認した瞬間、俺は前方にいた魔族へ一閃する。


「が――」


 呻き声。それと同時に魔族はあっさりと消滅。


 即座に上官を守ろうとしたのか、残る三人の魔族が立ちはだかる。それと同時に後方にいた魔族が横をすり抜けようと動いた。

 当然俺はそちらに反応するが……護衛が反応。決死の覚悟で俺へ迫ると、魔法を放つべく魔力を手のひらに収束させた。


 ――死を悟った魔族の表情は、せめて上官だけは守ろうという決意が見えた。なんだか俺が敵役みたいな感じだけど……まあ彼らからすれば俺達は砦を破った最悪の敵か。

 剣を振る。まず一体を滅したかと思うと、続けざまに迫ろうとした残り二人を剣を引き戻して横一閃。声すら上げることなく消滅した。


 だがその間に上官は煙の中へ逃げようとする。策は成功したかに思えたが、

 その上官の目の前に、キラリと光る白銀の刃が煙の中から現れた。


「っ……!?」


 言葉を失い足を止める。回避はできず、剣が胸部へと突き刺さった。

 そして消滅……剣の持ち主はソフィア。煙の中から出てきて、軽く埃などを払った。


「倒しましたが、今のが指揮官でしょうか?」

「どうだろうな……要塞の中にはいくつも建物があるし、門周辺の警備をしている上官って可能性もあるな」


 俺は近くにあった窓から下を確認。敵側はまだ統率が執れている。


「違うみたいだ……さて、ならば――」


 視線を他の建物へ。要塞は基本的に天然の要害である山によって守られているが、一応城壁で囲われている。その中で要塞中央付近に存在する建物……それが他と比べ一際大きい。なおかつ、その建物から出てくる魔物の数も多いみたいだ。


「よし、あそこへ向かおう」

「はい」


 俺達は駆け出す。連絡通路はさらに上なので今度は階段をひたすら駆け上がる。

 その間も魔物などが絶えず現れるのだが……瞬殺。俺とソフィアの実力ならば問題はない……油断はできないが、作戦は達成できそうな雰囲気。


 そうした中で連絡通路に到達……こちらの動きを察知したか、魔物がこちらにも押し寄せて来ていた。


「中央から魔物が来るな……まだ下でも湧いているってことは、魔物を生成できる魔族がいるのかもしれない」

「それを倒すことが、要塞の戦いを勝利で終わらせる鍵ですね」

「そうだな……行くぞ!」


 号令と共に、俺とソフィアは迫る魔物へと走り始めた。


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