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賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

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地底調査

 情報を得たということで、俺達は宿内で作戦会議を行うことにする。場所は俺とアルト、それにイグノスが眠る男性の部屋。女性達は椅子に座り、俺達はベッドに腰掛けてリラックスした状態で話し始める。


「……情報を手に入れ、疑問に感じたことがありました」


 口火を切ったのは、ソフィア。


「魔族は居城まで構えている以上幹部クラスだと思われますが、聞いた情報から考えるとずいぶんと慎重な様子。それに……幹部の中には国を滅ぼした存在もいましたが、今回の魔族は討伐軍が動くまで静観していました。これは一体――」

「――他に目的があることに加え、弱体化している可能性もあるな」


 俺が発言。すると他のメンバーはこちらに視線を向ける。


「幹部クラスというのは間違いないと思う。だが生み出す魔物だって俺達でどうにか対処できることや、結界が使えないため人間を遠ざけるようにしていることから考えても、何か策を実行していて力が弱まっているのかもしれない」

「あ、それなら私から意見が一つ」


 キャルンが小さく手を上げる。


「私が契約したノームが、魔族の居城に近づくにつれ大地の様子がおかしいって言うようになった」

「となると、何か仕込んでいるのは間違いなさそうだな」


 ふと、キャルンと契約したノームとソフィアが契約したロクトは口裏を合わせているのかと疑問に思ったが……ま、その辺りは調査の時に聞けばいいか。


「ルオン様」


 そこでソフィアが意見を。


「ロクトが話をしたがっているのですが」

「わかった」


 頷くと同時にソフィアと契約するロクトが出現。話し出す。


「――居城に近づくにつれ、大地に眠る魔力の質が変わっています。これはおそらく、レドラスという魔族が魔力を注入しているためでしょう。よって、そちらに力を注いでいるため力が弱まっている可能性が高い」

「……大地に? それってヤバくないか?」


 アルトが訊く。するとロクトは頷いた。


「大地に魔族の魔力が侵食……悪い事であるのは間違いないでしょうね」

「どちらにせよ、元を断てば解決じゃない?」


 ステラが訊く。彼女はどうやら戦う気満々のようだ。ずいぶんと好戦的。


「ここからは、各々の判断に任せるべきだろう」


 今度は俺が口を開く。


「ステラさんは戦う気があるようだけど……アルトさんとイグノスさんはそれぞれ相談してくれ。俺もソフィアやキャルンと話し合う」

「ルオン様は?」


 ソフィアが訊く。俺は彼女を見返し、


「……可能性があるのなら、居城に行ってみるべきだとは思う」

「なら、私も同行します」


 即決だった。するとアルトはソフィアに同調するように頷き、


「……まあ、人間が魔族をどうにかできる可能性があるって話だからな。現状他に行くやつがいないなら、やるだけやってみるか、という気はしてくる。それに――」


 と、アルトは自身の手のひらを見据えた。


「やらなきゃいけない……そんな風に、心のどこかで思っている」


 ――もしかすると、賢者の血筋がそういう判断をさせているのかもしれない。


「……正直、レドラスってやつを打倒できるかどうかはわからない」


 アルトは言う。俺を含めた全員、彼に視線を集中させる。


「だが、もしチャンスであるならば……やるだけのことはやってみよう」


 ――どうやら、レドラスの所へ向かうべく後押しはできたようだ。五大魔族の居城へ向かう準備は整った。そしてこのままいけばアルトが主人公として立ち回る未来となる……それを、見届けなくては。


「明日から行動開始……ということで、いいな?」


 アルトが確認。俺達は一斉に頷き、今日は休むこととなった。






 その深夜、俺は単身行動するために一人宿を抜け出す。ひとまず誰にも見つからずに出ることには成功。外ではレーフィンとロクトが待機していた。

「待たせた」

「では、参りましょう」

「ああ……ただその前に一つ。ロクト、キャルンと契約しているノームには話をしてあるのか?」

「ある程度は。ただルオンさんのことは話していませんし、今回の調査も私がやるということにしてあります」

「了解……それでは案内してくれ」


 行動開始。町の入口で『バードソア』を用いてロクトが語るノームが移動するために使う通路へと向かう。

 時間としては、魔法を使用しておよそ十五分程度だろうか。徒歩だと距離のある場所だが、魔法を使えばそれほど労せず到達できた。


「ここです」


 そこは小高い山の岸壁。目立たないくらいの小さな穴があった。

 人間が通るにしてはちょっと狭い。とはいえ、中へは入れそうだ。


「入口を抜けると人間でも歩き回れるくらいの広さになります」

「わかった。それでは入ろう」


 言って、明かりを生み出し狭い入口へと入り込む。少しすると大きな広間に出た。岩肌しか存在しない空間。正面に通路が存在しており、俺は迷わずそこへと入り込む。緩やかな下り坂となっており、地底へ突き進んでいるのだと理解できる。


「道、といっても必ずしも安全というわけではありません」


 ここでロクトが語り出す。


「特にこの場所は、地底の裂け目とも言うべき断崖沿いに道が形成されていますから」

「落ちないように気を付けろって話だな」


 通路を抜ける。最初に見えたのは落下防止の鉄柵。右には壁面を削るなどして形成された通路。そして柵を越えた真正面は断崖となっており、下は暗闇広がる、恐ろしいほど広大な地底世界があった。


 明かりで下を照らしてみるが、まったく全体像が捉えられない。地上からはまったく想像できない巨大な空間がここにはあった。


「では、私が案内します」


 ロクトが言う。俺は頷き、彼を先頭にして通路を歩き出す。


 歩く度に足音がずいぶんと響く。柵があるので余程のことがない限り落ちる心配はないが……ふいに、下の方から呻き声のようなものが聞こえた。最初風か何かの音かと思ったのだが、どうも違うらしい。


「魔物、ですね」


 ロクトが語る。それと同時に道が二手に分かれているところに辿り着いた。

 一方はこれまでと同様壁面を沿うような道。そしてもう一方は壁面をくりぬいて作られた道。その二つのうち、ロクトはくりぬかれた道を指差した。


「こちらへ行けば、さらに下へ進むことができます」

「調べるならこっちか?」

「そういうことになりますね。しかしどうやら魔物がいる様子」

「……どうも、普通の魔物とは異なるようです」


 レーフィンが語り出す。視線を向けると彼女は暗闇広がる地底を眺めていた。


「魔族が生み出した悪魔とは違う……しかし、かといって大陸に存在している魔物とも違いますね。これは一体――」

「たぶん、五大魔族が魔力を注いだことにより生まれた魔物だろう」


 俺が口を開く。それにいち早く反応したのは、ロクト。


「魔力を注いだ結果、生まれた?」

「物語では、魔王が強大な魔法を放ち大陸を崩壊させると、それと共に魔物が大量に出現した。魔族の魔力と大地の魔力が結びついたことにより生まれた……人間で言う、少年くらいの体格を持った魔物だ。名前は確か『ダークドール』だったかな」


 見た目、黒い子鬼のような魔物だったはず。実際五人の主人公それぞれが五大魔族を倒した場合、大陸各地に出現するようになる魔物。ただ主人公達は直接戦わないイベント用の魔物であり、ほとんどの奴は並みの戦士でも十分倒せるくらいの強さしか持っていない。だが崩壊した大陸で大量に出現するため、人間達は大陸崩壊後『ダークドール』との戦いを余儀なくされ、相当な被害が出る。


 そしてこの魔物の存在は魔王も把握していなかった……魔法を発動させようと策を仕込んだ結果生まれた副次的なもの。魔王が発動しない限り地上に姿を現すことはないが、五大魔族が魔力を注いだ時点で出現はしていたらしい。


「……そいつらを倒しても、魔族との戦いに影響はないはずだ。調査する場合そいつらが邪魔になる。戦うしかないだろうな。まあそんなに強くないし、任せろ」

「わかりました……それでは、進みましょう」


 ロクトが言う。俺は頷くと共に念の為、剣を抜き放ち……地底へ下りるべく、歩き始めた。


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