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賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

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魔族の情報

「ロクトが魔族の所業について調べたいのはわかった。俺も、魔族がどういうことをやっているのか直接見たことがあるわけじゃないから、調べてみるのもアリだとは思う……けどロクト、方法は?」


 問い掛けると、ロクトは俺と視線を合わせつつ答えた。


「人間の方々が街道を整備するように、ノームは地中に様々な道を作り大陸を行き来しています。人間がノームの住処と呼ぶ場所は我らが王がいる場所しかありませんが、実際に同胞は大陸中に散らばっています」

「へえ、そうなのか」

「その中で、この国の中に我らの使う道があるのですが……その一つが進路に存在し、なおかつ過去ノームが暮らしていた大きな集落跡が存在するため、地中深くまで確認することができます」

「なるほど、地上ではわからないが、地中に潜ることで何か特徴をつかめるかもしれないと」

「はい」

「で、それにソフィア達も……? いや、単独行動の方がいいのか?」

「単独の方がいいのではないかと思います」


 レーフィンが俺の言葉に続く。


「地中では何が起こるかわからない……ルオン様や私達だけで行動した方が安全でしょう」

「まあ確かに……ってことは、密かに動くってことでいいのか? そうなると調査は深夜に限定されるな」

「私達は一晩動きっぱなしでも問題ないですが、ルオン様は――」

「いや、大丈夫だぞ。修行時代徹夜で戦っていた時とかもあるからな」


 意図してそうしたことをやったわけではないのだが……するとレーフィンはちょっと驚きつつ「わかりました」と言い、


「では、近くまで到達したら行動開始としましょう」

「わかった。ちなみにその場所は?」


 確認すると……レドラスに関する情報を手に入れることのできる町に程近かった。丁度用があったわけだし、一石二鳥だな。


「なら、そういうことで」


 というわけで――話し合いは終了した。






 翌日以降、俺達は居城のある方角へとさらに進む。近づくにつれ、レドラスが放った魔物とも遭遇し始めた。


 中盤……とまではいかなくとも、それなりの魔物だった。例えばクローデーモン――悪魔の中でも下級種と中位種の間くらいの能力を持っているのだが、こいつが出るということは……レドラスを倒すには、中級技や魔法を一つは持っていないとちょっと苦しいかもしれない。

 ソフィアは上級技を一つ抱えているけど、あれは魔力などの消費量も大きいため乱発ができない上、レドラスが耐性を持つ風属性……現実的な戦いとしてはノームの力を借りた技か、もっと連発できる技が欲しいところだ。


「やっ!」


 ソフィアの掛け声……相手はまさにそのクローデーモンであり、今回は一体と遭遇した。

 手始めにソフィアが『エアリアルソード』を放つ。それが直撃すると同時にアルトが接近し、大剣汎用下級技『バスターブレイド』を放った。


 これは大振りの一撃を浴びせる単純な技だが、威力は十分なのか敵は大いに怯む。そこへキャルンとステラの連携攻撃――俺とイグノスは援護に回っているわけだが、単体ならばその必要もなさそうだった。


「よし、進むぞ」


 アルトが言う。前線は彼が指揮し、後方で俺が場の判断をする――気付けば、そういう布陣となっていた。


 やがて俺達は町へと到達する。そこはゲームにも存在していた所で、名前はオルタック。ロベイル王国の中心からやや北寄りの場所で、王国内の交易路中心点でもある。


 現在はレドラスの居城に程近いためか、兵士や魔法使いがそこかしこに確認できる。町全体も緊張に包まれており、討伐軍が退却したという事実が相当重く受け止められているのがわかる。


「討伐に向かった兵士とかに話を聞くことはできないかな」


 アルトは周囲を見回しながらコメントする。そこで俺はイベントに誘導するべく口を開いた。


「まず、町の状況がどうなっているかを確認した方がいいかもしれないな」

「となると、詰所か?」


 頷くとアルトは「なら行こう」と言い、俺達は一路詰所へ。

 程なくして到着した詰所は中々大きく、町の規模に準じたものなのだと理解できる。


「……ん?」


 入り口で見張りをする兵士が声を上げる。そこに俺達は近寄り、


「町の状況を知りたくて来たのですが」

「……そうか。どこかのギルドに所属する証明ができれば入ってもいいぞ」


 俺は証書を提示し、中へと入る。同行者ということでソフィア達も続き……詰所のエントランスは人が少なかったが、町の空気と同様重い雰囲気に包まれていた。


「ずいぶんだな……情報を得られそうな人物は……」


 アルトが周囲に目を向ける。そこで俺は右方向へ視線を移す……いた。

 壁際に魔法使いが一人。休憩時間中なのか、それとも兵士でも待っているのかわからないが……目が合うと、彼は俺達へ近づいてきた。


「身なりからすると……冒険者か?」

「はい。色々と話を聞き、情報を得ようと思いまして……できればでいいのですが、居城を持つ魔族についても多少教えていただけると」


 そこまで言うと、魔法使いは俯く。レドラスに対し思うところがある様子で……やがて、


「あと少し……あと少しで、倒せたはずなのだ」


 魔法使いが言う。それに反応したのは、アルト。


「もう少しって、何か根拠があるのか?」

「……魔族は自身の名をレドラスと名乗っていた。そいつは、特殊な結界を用いて我らの攻撃を全て防いでみせた」


 魔法使いは語る。それに対し、ソフィアは厳しい表情を見せた。


「それは……突破できなかったのですか?」

「退却寸前に、奴の結界は強制的に解除された。どうやら城内に存在する魔力を利用して結界を構築していたらしく、私達は城の魔力を枯渇させるくらいまで追い込んだのだが……一歩及ばず……」

「現在、その結界は?」

「城内の魔力は概算だが外部からでも観測できるのだが、魔力量は私達が退却した時と比べて変わっていない。つまり結界は使えないままのようだ」

「だからこそ、魔物を生み出しているのかもな」


 アルトが言う。すると魔法使いは「おそらく」と言い頷いた。


「その可能性が高い……結界を再構築するための時間稼ぎとして、魔物を大量に放ったのかもしれない」

「今なら、討てるということですか」


 ソフィアが言う。その顔は、真剣なもの。


「魔法使い様の言うことが本当ならば、状況的にレドラスという魔族が人間を近づけさせないようにしている可能性は高いと思います……もし魔物が襲ってこなくなったら、特殊な結界を再度構築できるようになった、ということなのでは。ちなみにですが、討伐軍はもう動けないのですか?」

「これだけ魔物が拡散している以上、連携も難しいだろう……とはいえ、騎士団の幾人かが再度踏み込んだりはしたようだ」


 魔法使いは、俺達へさらに語る。


「討伐軍が押し寄せてきた時と比べ、魔物の数も激減していたとのこと……精鋭の態勢が整えば、すぐにでも行きたいが……」


 悔しそうな表情。彼自身、怪我でもしているのかもしれない。


 話を聞き終え、俺達は詰所を出た。それぞれ思うところがある様子で、全員一様に沈黙していた。

 それぞれの表情を窺うと、ソフィアやステラ、そしてアルトは戦うべきなのではという雰囲気。一方イグノスは判断つきかねているような様子で、さらにキャルンは複雑な顔つき。迷っているという感じだろうか。


 全員が頭の中を整理し終えるまで話すのは待つことにするか……そう思うと同時に俺はロクトに言われた調査を思い出す。

 もし行うとしたら、今日の深夜だろう。戦うとなれば明日には町を出ることになる。そこからはレドラスの居城へ一直線なので、調査できるチャンスは今しかない。

 倒してから調査するのもありだけど……いや、倒す前と倒した後で確認した方がいいかもしれないな。


 ゲーム上に存在する魔族との戦いとゲーム外の調査。果たしてどうなるのか――考えつつ、ひとまず宿を手配することにした。


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