表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/1082

戦闘に対する考察

 森へ入って戦闘開始したのだが……入口から少しした時点で、剣を持つゴブリンに遭遇した。

 色は茶色……赤よりもワンランク上の魔物で、こいつがいるということで魔族達の影響が相当強くなっていると理解できる。


「気を付けろ。このくらいの強さだと色々悪知恵も働く」

「はい!」


 ソフィアは答えつつ剣を薙ぐ。接近し攻撃してきたゴブリンに対し、剣で受け流すと反撃で一閃。さらにゴブリンの攻撃を避けつつ連続攻撃によりあっさりと撃破し――この魔物でも問題ないと悟る。


 ノームと新たに契約した効果も大きいのだろう。契約で新たな技をすぐに習得したというわけではないが、ゲーム上では攻撃力と防御力が底上げされるという効果がもたらされる。この能力は中々有用で、低レベルなどの縛りプレイなんかには重宝されていた記憶がある。


 なおかつソフィアと契約した精霊は、ノームの王からの推薦。その効果は他の精霊とは異なるくらいの力を持っていると推測できる。


「やっ!」


 そして、キャルン。彼女の動きもまた悪魔と戦った時とは多少異なっていた。


 彼女は短剣を左右の手に持ちつつ、ゴブリンと切り結ぶ。決してゴブリンは身体能力が低いというわけではないのだが、それでも彼女のスピードに翻弄され、まったく相手にできていない上、短剣による攻撃がゴブリンを大いに怯ませている。


 ノームとの契約による攻撃力の底上げが最大の恩恵になっているようだ。斬撃によって相手を怯ませているためか、キャルンの動きは前にも増して攻撃的かつ鋭くなっている……仲間キャラであるため成長性が早いのと合わせると、彼女もずいぶんと有能である気がしてくる。


 というか、ここに至り一つの事実に気付いた。俺の場合は無茶苦茶なステータスによりあらゆる攻撃をゼロにできる……つまりパワープレイが可能なわけだが、他の人物ではそうもいかない。


 現実世界では基本、魔力の障壁によって防御が行われる。キャルンですらそうなので、これは大陸の常識と言っても差し支えないだろう。だがこの障壁、使用者の体調などによって効果が多少なりとも増減する。なおかつ魔物の調子など様々な不確定要素が存在し……その結果、防御能力が高くゲーム上でゼロにできたダメージも、現実世界では食らってしまう可能性というのが考えられる。


 これはつまり、攻撃に対してはダメージをゼロにするよりまず回避前提で戦うのが無難だということを意味している。不意の一撃により負傷してしまったら非常にまずい。なので回避前提に戦う……となると回避率の高いキャルンは現実世界では非常に有用ということになる。


 逆を言えば、ゲーム上で優遇されていたキャラは不遇な扱いとなるのか……? そんなことを考えていた時、キャルンが技を見せた。


「ほらっ! どうっ!?」


 ゴブリンを挑発するように短剣を振る。一撃二撃と攻撃を加えた後、さらに接近しゴブリンへ追撃をかける。

 短剣下級技の『天鷹(てんよう)連撃』だ。短剣で何度も攻撃を重ねる技であり、彼女は使い慣れているのか流れるような動作で剣戟を決めていく。


 だが、それはゴブリンに途中で止められる。金属音が周囲に響き、短剣と長剣が一時せめぎ合う。


「おっと」


 キャルンは後退。すると逆にゴブリンが迫ろうとするが……それを避けた彼女は、短剣を掲げ振り下ろした。

 これは『ソニックスマッシュ』。短剣下級技で通常攻撃よりも威力の上がる技である。


 さらに追撃として石つぶてを浴びせる『ストーンブラスト』を使用。結果、ゴブリンに直撃し撃破……ソフィアも技をバランスよく使いこなし、余裕で勝利。


 ここで、キャルンの戦いを振り返る……連撃技は、ゲーム上では相手も反撃してこないので全て命中していた。だが現実では違う。さっきのようにキャルンの技が止められたことから考えても、攻撃を中断され反撃を受ける可能性がある。


 もし怪我がないよう動くならば、連撃技よりも単発技の方が確実……ゲームでは単発技より連撃技の方がトータルのダメージが高かったのだが、反撃などによって怪我を負うリスクを考えると、単発技の方が有用性が高いかもしれない。


「どうしたの?」


 ふいにキャルンが訊いてくる。俺は「何でもない」と答え、先に進むよう指示を出す。


 歩きながら、なおも考えてみる……戦闘面についてはゲームのシステムと逆の方がよさそうな雰囲気。これが意味することとしては、ゲーム上で強かった『三強』がどうなるか、という疑問を生む。


 そのうち一人は魔法使い……システム通りの能力を持っていれば活躍できるだろう。だが二人は違う。一人は連撃技で規格外の威力を持つ。そしてもう一方は、驚異的な防御力と攻撃力で力押しするタイプだ。どちらもキャルンやソフィアの戦いぶりを見ると真価を発揮することが難しいのでは、と考えてしまう。


 まあ、現実で『三強』が規格外の強さを持つ可能性がゼロというわけではないので、結論は急がないでもいいだろう……けれど『三強』はシステムの都合により強かった。それがない現実世界ではさすがに、同じようにはいかないかもしれない。


 やがてキャルンとソフィアは周囲の敵を全滅させる。俺は感心するように周囲を見回し、


「森の魔物に対してはそれほど問題ないみたいだな。契約による恩恵か……余力もまだまだありそうな雰囲気」

「恐れ入った?」


 胸を張りキャルンは言う……なんだか調子に乗りそうなタイプだな。

 ともあれ、二人の実力でここを突破できそうな状況ではありそうだった。さて、どうするか。


 その時、使い魔の報告が頭の中に。ステラはどんどん奥へと向かい、さらにアルトも仲間一人と共に森へと近づき、入りそうな状況。


 ここで、俺は疑問が一つ。アルトの妹――ステラ=ムーンレイトを救うのはいいが、アルトと引き合わせるとどうなるのか? ゲームで妹は喰われるのでアルトとまったく絡まなかったからなぁ……まあいいか。とりあえずステラを助け、その状況でどう動くか判断するしかない。


 俺はソフィア達に指示し、さらに進んでいく。しかしこの調子で強くなったら、五大魔族とも戦えるレベルにあまり時間を掛けずに到達するかもしれないな。


 使い魔と細かく交信を行いつつ、俺はソフィア達を誘導する。できればステラが一番奥へ向かう前に出会いたいところだが……彼女自身どうやら敵を倒すというより襲ってくる敵を適度に避けつつ行動している様子。魔物が出現すると逐次足を止め交戦する俺達と違って、彼女はひたすら奥へ進んでいく。


 とはいえ、俺達が遅いというわけじゃない。こちらは奥まで最短距離を駆け抜けているが、ステラは魔物などの気配を探りつつ、進んでいる。そういった状況から進行具合は、俺達の方がちょっとだけ早い、といった感じだろうか。


 加え、俺達はここからさらに早くなる……ソフィアとキャルンも一時間も戦い続けたら魔物にも慣れ、連携によってさらに効率よく立ち回れるまでになっていた。


 俺もまた二人の戦いを横目にしつつ魔物を倒す……だいぶ奥まで来た時、ボスと戦う可能性を考え休憩を入れることにした。


「ほら」


 俺は体力を回復させる薬を二人に渡すと、ソフィアから質問が。


「どこまで進みますか?」

「そうだな……瘴気の濃い場所ならそれほど遠くなさそうだけど」


 実際、ボスのいる場所までずいぶんと近づいた。このままいけば……と、考えていた矢先、使い魔からの報告が頭に中に。

 どうやらステラが奥にいるボスの存在に気付いたらしい。


「……少し、急がないといけないか」


 俺は一つ呟くと、ソフィア達へ指示を出す。


「よし、ここからは……瘴気の強い場所に向かうとしようか」

「はい」

「わかった」


 二人は返事して……移動を再開した。いよいよ、ステラを助けるイベントが始まる――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公あんまり戦はないんだね もっと戦って欲しいな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ