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賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

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城主との接見

 宮殿へ進む階段を上り、俺達はとうとう中へ。とにかく一面真っ白で、正直まぶしいくらいだ。


「とはいえ、別に派手って印象はないな」


 感想を呟く――と、ネルが反応した。


「ここは城主の趣味によるわね。ここにいる天使は、あんまり派手じゃないのが好みなのよ」

「派手好きなのもいるのか?」

「それは、まあ」


 言葉を濁す彼女。なんか含みのある言い方だな……まあ人間にも金ピカが大好きな人とかいるし、そういうの天使もいるってことか。


 並び立つ白い柱を横目に見ながら俺達は進む……なんというか、ここを訪れた人間の背筋を伸ばすような光景だ。ソフィアやリチャルもここにきて口をつぐんだ。天使――という存在かつ相手が城主ということで、さすがに緊張してきたらしい。

 俺もまた、今までにない感覚が全身を襲う。果たしてこれから出会う天使とは何者なのか――


 正面にある扉が近づく。柱や壁面と違わず真っ白なそれは、重厚で固く閉ざされている。するとネルが近寄り軽く押した。それにより、驚くほど簡単に扉が開いていく。


「さあ、どうぞ」


 手招く。俺達は黙ったまま扉を抜け――その先に、光を見た。


 平たく言えばそこは玉座の間――なのだが、玉座の背後にあるはずの壁がぶち抜かれ、太陽の光が見える。なおかつ青空すら見え、思わず圧倒されるほどの景色を生んでいた。

 そして玉座――二段の階段により少しだけ高い位置に存在する玉座の隣に、城主と思しき天使が後ろ姿で立っていた。白い法衣姿で背格好から男性だろうか?


「お連れしました」


 ネルが告げながら近づいていく。俺達はそれに追随し玉座に近寄り……階段手前まで来て、相手が振り向いた。


 ――その瞬間、俺は目を見開き固まった。


「よお、待ってたぜ」


 天使に似合わない剛気な雰囲気を兼ね備えた、武人――そういう印象を俺達に与える。


 見た目だけで言えば年齢は三十前後。金髪がこの空間に映え、風貌は貫禄がある。ただ天使かと言われると……どちらかというと騎士って感じだ。法衣は着慣れているのか確かに似合っているけど、鎧をイメージしたらしっくりとくる。


 そして、俺が固まった理由なのだが……その見た目、記憶にあったためだ。この天使は――


「俺の名はデヴァルス=バージャント。こうして城を持っているのは、先の大戦でそれなりに活躍したから、だな」


 ――それなりに、などと謙遜しているが、目の前にいるデヴァルスこそ、二作目『エンジェリックアーク』における主要キャラクターの一人。主人公の相棒役であった。


 当時、天使としてはまだ下級に位置していたのだが、主人公と共に戦うにつれ大きく成長し、ついには天使の長になれるまでに上り詰める――最終的に長になるよう打診を受けたが断り、天界を離れ旅を続けた、と語られていたのだが……さすがに二十年も経てば変化もあるか。天界の中で城を持つ身分になったらしい。


「大戦経験者ですか。現在は天界に何を?」


 ソフィアが問う。するとデヴァルスは「はっはっはっ」と笑い、


「いやあ、再三の打診を受け、とうとう長の席に座ることになってなあ」


 ……おい、いきなり天界の長に会ってしまったぞ。驚く間にデヴァルスはさらに語る。


「あ、それとここは客人を招くために生み出された空間だ。他の天使は来ないようにしてあるから、秘密の会話もバッチリだぞ」


 内心ゲームのキャラが長であることと、唐突に長に出会ってしまった二つの点で驚く。ただ豪放な性格はゲームから一切変わっておらず、長になっても相変わらずな感じみたいだな。


 そして宴――前世ではソーシャルゲームとなっていたが、もしかするとイベントを経て彼と出会うことになっていたのかもしれない。なにせ天界の長だからな。二作目を知る人は「お前が長かよ!」という驚きになっていたことだろう。


 で、さすがに長に会うとは予想ができず、ソフィアやリチャルは目を丸くし立ち尽くす。一方の俺はネルを見た。さすがに長に会うのなら事情くらい説明してくれよ……というのを眼差しに込めてみる。


 それにネルは苦笑した。意図は読み取れたらしい。


「黙っててくれと長が……」

「ちょっとばかり驚くのを期待してなあ。うんうん、反応としては上々だ」


 ウキウキな感じで話すデヴァルス。いい性格をしている。


「まあ早速本題に入ってもいいんだが……こうして天界へやってきたんだ。少しくらい見て回ってもいいかと俺は思う」

「観光ってことか?」


 尋ねてみるとデヴァルスはすかさず頷いた。


「そうだ。城の中を見て回り、さらに景色を楽しむのもまた一興だぞ」


 にこやかに語るデヴァルス……なんだろう、単に薦めているだけなのだが、そこに有無も言わせぬ雰囲気が見て取れる。

 まるで……話し合いが始まったら景色が見れなくなるから、なんて感じにも思えるんだけど……。


「で、どうする?」

「……本題に入ってもいいですか?」


 こちらの要求にデヴァルスはちょっと残念そうだったが、


「そちらが言うのなら仕方がないな。では始めるか」

「といっても、俺達はどういう議題なのか何も知らないんですが」

「それはこれから説明しよう。あと堅苦しい話し方はやめてくれ。普通でいい。普通で」


 なんか本当にゲームで見ていた性格と変わってないぞ……こちらが「わかった」と反応すると、デヴァルスは改めて話し始めた。


「堕天使について、暴れているのが三人いるわけだが、その中でとうとうヴィレイザーと戦うことになった」

「そうだな」

「俺としては率直な感想を聞きたい。ルオンだったか? そちらがヴィレイザーと直接戦ったと報告を受けているが、どう感じた?」

「……俺のことはどの程度知っている?」

「そちらの王女様と手を組み、魔王を打倒したこと。アンヴェレートの分身を倒したこと。そして厄介な問題を抱えていること」

「それに対し解決策とかは……」

「なんとも言えんな。まあ私達も調べてみようと思う」


 ガルクを含め、俺のことを調べているグループが複数あるな。これ、一つにまとめてもいい気がする……まとまるかどうかわからないけど。


「それで、どう思った?」

「俺には問題があるので、確定したことは言えない。ただもし全力を出すことができれば、あの場で勝利していた可能性もあるんじゃないかと思っている」

「なるほど……魔王よりは強くないって解釈でいいのか?」

「強さの種類が違うし、一概には言えない。それと」


 俺はソフィアを一瞥し、


「彼女の奥義……それは十分な決定打になるはずだ」

「ふむ、なるほどな。現段階で王女の剣術が最高の威力を持つわけか」

「そういう解釈で構わない」

「よし、わかった」


 彼は言うと、俺達に笑みを浮かべる。野性味溢れる、どこか好戦的な気配。


「勝機はあると考えているんだな」

「前回は逃げられたが、もし退路を塞いでくれるなら、やりようはあったはず」

「うんうん、それがわかれば十分だ」

「あの、ヴィレイザーは当面地上に出てこないのでは?」


 ソフィアが尋ねる。まああれだけの激闘を繰り広げたのだ。その考えは至極当然。

 しかしデヴァルスは自信を覗かせる。


「それについては策がある」

「策、ですか?」

「私も初耳ですけど」


 ネルが口を挟んだ。デヴァルスは「言ってなかったからな」と前置きし、


「ただこれを実行する場合、いくつか確認したいことがある。今回呼んだのは、それを検証するのも含まれている」

「それは?」


 問い返すソフィアに対し、デヴァルスは上を指差した。


「検証する場合外に出なければ……といっても草原ではなく、この城の上に演習場がある。そこで、少し調べさせてもらおう」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 三作目『エンジェリックアーク』 ってあるけど、『エンジェリックアーク』は二作目だったような。 三作目が魔族の話と前に語ってたような…。
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