表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者の剣  作者: 陽山純樹
異世界への転生
4/1082

魔王を倒すための条件

 拠点にあらゆる設備が整った時、気付けば高レベルクラスの魔物さえも一人で戦えるようになっていた。


 毎日戦い続け、なおかつそれがさらに丸一年経っていたというのも要因かもしれない……正直この段階になると強くなるのが楽しくて最早イベントで死なないようにするという目的はどこかへやってしまっていた。というか資材を集めるべく金稼ぎをし始めた時点で死なないというのはわかっていた。けど手段が目的と化し、俺はひたすら剣や魔法を使い魔物と戦うようになっていた。


 やがて、手に入れた素材を使ってアイテムを開発し始める。この時点で俺は十分成長し親からも実力を認められ、故郷以外の町も数日かけて訪れるようなことだってしていた。そこで情報を集めてみたりもしたが、まだ主人公達が活躍する段階には至っておらず、ゲームのシナリオはスタートしていない。ならばそれまでにもっと強くなっておこうと思いつつ、さらに魔物を狩り続けた。


 このレベルなら、五大魔族とかも相手にできるし、果ては魔王まで……と思ったのだが、これには壁が存在していた。


「うーん、魔王との戦いが問題だよな」


 洞窟内で作業を中断し、思考を始める。


 幹部クラスの五大魔族は、現段階で姿形も見受けられない。なおかつゲームでは特定のイベントを発生させないと魔族のいる場所に侵入できないようになっている。だから勝てるといっても今すぐ戦うことはできないし……何より、理由があって俺が単独で倒すのはまずい。

 ラスボスである魔王についてなのだが、実はこいつを倒すためにはある血筋でなければならない。それは過去魔王を封印したとされる賢者。五人の主人公は縁がないのだが、全員が賢者の末裔という共通点を持っている。


 魔王はあらゆる攻撃を防ぐ結界を持っているのだが、それを破壊できるのが賢者の血を受け継ぐ存在――結界を破る条件は、賢者の力を悪用している五大魔族から血筋である主人公が賢者の力を取り戻すこと。この事実はゲーム終盤になり判明するのだが、とにかくその力がなければ魔王には勝てない。

 ルオンについては当然ながらそんな血筋であるはずもなく、魔王を倒すことができない。五大魔族の一つでも独力で倒してしまうと大陸滅亡エンドに直行ということになる。だから魔王討伐については主人公の誰かにやってもらわなければならない。


「主人公に同行して、動くというのも一つの手だけど……いや、これも問題があるか」


 どの主人公がその役目を担うのかまったくわからないのが問題。そもそもシナリオ通りに事が進むのかも不明だが……仮にそうだとしても、バラバラに行動する五人の人間を同時に面倒見ることはできないし……誰かを無理矢理誘導して戦わせるか? いや、それをしたとして、別の主人公が他の五大魔族を倒してしまうのもまずい。

 ゲームでは五大魔族を主人公が一人で倒すパターンと、五人が一体ずつ倒すというパターンがある。ただ後者のシナリオは発生させたくない。なぜなら魔王が強くなる上、さらに魔王が大陸に向け強大な魔法を放ち、多くの都市や町を崩壊させる……ただでさえ魔族が侵攻し戦乱が広がる大陸。そこに追い打ちをかけるとなると……ゲーム上の崩壊具合を知っている俺からすると、やりたくないな。


 俺が力を示し主人公達全員の陣頭に立つという手もありかと一瞬考えたが……それもまたリスクが高いと思った。強引に行動するとシナリオが崩壊し、魔王達の動きもまったく読めなくなる。確かに主人公達を強くするという手ではベストだと思うが、どうなるかまったく予想できない。場合によっては魔王が強大な魔法を行使するかもしれない……不安が残る。


 やり直しはきかないためシナリオに沿って進行するならその方がいい……というわけで、シナリオが始まり主人公達がどう動くかを観察しつつ、適宜対応していくという選択をとることにした。もしシナリオが始まる気配がなければ、その時どうするか考えるとしよう。


 あとは、俺がどれだけ干渉するかだけど……フリーシナリオというゲームの性質上多少なりとも融通がきくとは思うけど、俺がいなくても進むならその方がいい。とはいえ何かトラブルがあった時、即対応できるようにはしておくべきだろう。

 それに、あんまり表に出ると別の意味でまずい気がする。エンディングで主人公達は例外なく王となったりしている……俺が戦いに加われば王とまではいかなくとも、何か重要な役職とかに就けと言われるかもしれない……そういうのは、勘弁願いたい。


 俺はあくまでゲーム上の知識でレベルを上げたりしている。とてもじゃないが政治にかかわる能力なんてないし、できるとも思えない。よって、あくまで単なるNPCとして、裏でひっそり活動し主人公達に魔王を倒してもらうというのがこれからの基本方針となるだろう……まあ、序盤は後味の悪いイベントとかがあるので、それくらいは回避したいなと思った。


 シナリオを大筋変えるわけではないので、犠牲者がでるのは当然……本来ならそれらも救うべきなのかもしれないが、正直そこまで手を回していると俺が英雄として祭り上げられることになるだろう。当然俺は魔王を倒せないので大陸滅亡エンド――


「それは駄目だな……仕方がないか」


 少々薄情ではあるが、シナリオに介入するのは後味の悪いイベントを良い方向にするだけに留めることにする。どのイベントに関わるかや、どう行動するかは今後決めよう。

 ともかくシナリオが始まるとレベルアップする余裕もない。だから俺としてはそれまでにしっかりと準備する必要がある……現時点でもまあ既に大丈夫だろうというレベルなのだが、いざという時のために無茶できるくらいのレベルが欲しいところだった。


 そして今度は仲間についてどうするか考える。普通の冒険者を仲間にして役に立つ可能性は低そうなので却下。ならゲームで仲間になるキャラだろうか……いや、一人で動き回る方がいいだろうという結論に達し、単独で動くことにする。


 ならばやることとしては……ひとまず、イベントをこなす内にアイテムが尽きないようにすることくらいだろうか。それに合わせさらにレベルを上げていけば完璧だろう。

 俺はゲーム上で作成できたアイテムを作れる素材に関しては集められるだけ集めることにした。そうなるとラストダンジョンが出現する近くとかに行かないといけないのだが……まあ、様子を見に行ってどうするか考えよう。


 方針は決定したので、俺はそこから素材探しを始める……問題はどこまで準備すればいいのかだが、シナリオが始まるまで頑張ればいいや……そんな風に思いつつ、俺は拠点から移動を開始した。



 * * *



 そこから一年は、完全にアイテム収集廃人と化して魔物を狩りまくった。


 結果、覚えられるだけの魔法や技……さらに、ゲーム終盤でしか手に入らないような鉱石や金属なども入手。本来確率は相当低いレアアイテムなのだが……レアアイテムをドロップしやすくなる護符なんかを装備していたためか、割と大量に手に入っていたりもした。

 で、本編も始まっていない大陸の現状なのだが……とりあえず人がいない所を魔物が徐々に侵食しているような状況。俺が魔物を倒しまくったために五大魔族なんかが出現しないのかと思ったりもしたのだが、それもない。


 ここで、俺は一つ推測する……魔王が侵攻してきたというのは事実なのだろうが、まだ魔王達はこの大陸に来ていないのではないか。おそらく他の大陸に侵攻中であり、この大陸には色々と仕掛けを施しているだけで、俺の事を気にする魔族がいない。

 それでも魔物を倒しまくっていれば気付かれるのでは……などと思っていたのだが、どうもこの魔物達、大気中の魔力を吸い込み生み出されるらしい。そうした術式が人のいない場所に仕掛けてあり、それが徐々に広がっている。ただ強さは一定ではなく、環境や人間の有無などによって変化している。


 その術式を破壊すれば、魔物を止められるかもしれないと思ったのだが……魔物を倒すだけなら問題ないようだが、さすがにそれを破壊すると気付かれるかもしれない。下手をすると魔王がやって来て蹂躙を始めるかもしれない。そうなってしまうと賢者の血を持つ者が表に出現していない以上、バッドエンド確定だ。だから俺は術式は破壊せず、魔物を倒すだけに留めた。


 そうしてあらゆる物が作り出せるくらいにアイテムが集まった時……はっきり言って、やり過ぎたと思った。金は掃いて捨てるほどあるし、ついでに言えばレベル的には……あくまで感覚的なものだが、上級魔法を二度三度使えば結界のない魔王を倒せるのではないかという境地に達した。最早俺はバグのような存在だと言いきってもいい。


 序盤限定とはいえプレイヤーキャラだったためなのか、他に要因があるのか知らないが、ともかく人間の身であっても魔王に勝てるくらいの能力を保持することは可能なようだ。


 もしレベル的なものが外見から悟られてしまうと俺はおちおち外にも出歩けなくなってしまうのだが……幸いそういうことには至っていない。とはいえさすがにここまでアイテムや金を溜め込んだ拠点をこれ以上放置しておくのもまずいと思ったので、俺は誰もこないことがわかっているにもかかわらず拠点を改装したりした。


 で、俺は有り余る素材を使い最強の武器作成にとりかかる……なんだかちょっと楽しくなりつつ、俺は大量のアイテムを駆使して生成を始めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ