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賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

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不思議な洞窟

 前回と同様、リチャルを町へと残し俺とソフィアとロミルダの三人で渓谷へ向かう。しかし――


「まさかこういう形で会うことになるとは」

「まったくですね」


 俺の言葉にソフィアは同意――理由は、今回引き受けた依頼内容にある。

 洞窟に入り込み戻ってこない戦士を助ける……その人物が俺達シェルジア大陸出身者かつ、ゲームの主人公でもあったアルトだった。


「魔王との戦いにおいて、ずいぶんと貢献されていました。最上級の魔物と遭遇することがなければ特に問題は出ないように思えますが」

「アルトなら引き際知ってそうだしなあ……いや、あえて挑むなんて可能性もゼロじゃないから怖い」


 もし最上級の魔物と出会っていたら……ともあれ、ひとまず洞窟へ赴きどういう状況なのかを確認しよう。

 そしてアルトに同行する仲間だが、どうやらイグノスとキャルンの二人らしい。魔王との戦いが終わって以後も、彼らは共に組んで活動しているというわけだ。


 俺達は彼らの様子を見に……そして、場合によっては助けるために渓谷へと入り込んだ。どの洞窟なのかは、話を持ってきた戦士ロナから聞いている――どうやらアルト達は強い魔物がいる場所を狙って戦っていたようで、どこへ行くかなどは色んな戦士達の情報から決めていたらしい。それについて依頼してきたロナは知っていたので、俺達はアルトが潜る洞窟について調べることができる。


 渓谷に入ると、俺達は真っ直ぐ当該の洞窟へ向かう。場所は渓谷でも奥の方に存在しており、そこへ進むだけでも一苦労だ。


「どのような魔物がいるのでしょうか」


 ソフィアが呟く。俺は少し考え、


「巨獣のような大きさかどうかはわからないが……洞窟の規模が大きければ、似たような魔物かもしれないな」

「ああいった魔物ならばまだやりやすいですが……小型で素早い相手だとしたら厄介ですね」


 まあ確かに。俺は頷きつつ、ひたすら歩を進める。


 ロミルダも根を上げることなく、障害も無く進んでいく……道中で魔物と遭遇するようなこともあったが、全て瞬殺。うん、やはり普通の魔物なら楽勝だ。


 渓谷に入り込んでいる戦士達と遭遇することもあったが、トラブルになるようなこともなく俺達は進む。掲示板に載った俺達のことを把握しているかは不明だが、一撃で敵を倒していく様を見て、宴の参加者達は俺達をどうこうするつもりはなさそうだった。


 やがて奥へ近づくにつれ、渓谷内に存在する魔力も濃くなっていく。そうした中で、俺達は目的の洞窟に辿り着いた。


「ここだな」

「見た目は何の変哲のない空洞ですが……」


 ソフィアが言う。確かに外観は、ぽっかりと大きな口が開いた洞窟といった案配で、外観から最上級の魔物がいそうにない。


「ひとまずアルトを探そう」


 俺が提案する。


「洞窟内を探索して……もし見つけたら外に出るよう言おう。魔物については後回しでもいいから、とにかくアルト達の姿を見つけよう」

「そうですね」


 洞窟の中へ。入口付近は空気がヒンヤリとしている事以外に感じるものはない。

 というか、魔物の気配もないな……アルト達が倒したのか?


「もし洞窟内にまだいるとしたら、どういう状況でしょうか」


 ソフィアがやや不安げに呟く。俺は少し考え、


「どこか隠れられるスペースにいるか、かな。さすがに一日中戦えるわけではないだろうし」


 ……外に出ていれば情報があってもおかしくないのだが、それがないのを考えるとやっぱり洞窟内にいると考えるのが自然か。


「今日はアルト達を見つけることと、あとできれば洞窟の構造を把握しておきたいな……」

 と、言ったところで俺は立ち止まった。ソフィアやロミルダも相次いで止まり、

「どうしましたか?」

「いや……」


 何か違和感がある。洞窟なので魔物が発する瘴気がこもり、それが滞留している……と一瞬考えたのだが、どうも違う。

 そう……何者かが、この洞窟に入った俺達をどこからか眺めているような感覚。


「ソフィア、何か変な感じがしないか?」

「変……ですか? 私の方は特に……」


 周囲を見回すソフィア。ロミルダに視線を送ってみると、同じような反応。


「ガルク、どうだ?」

『何か特別なものは感じないな。瘴気が充満しているのは間違いないが』


 俺しか感じない……いや、ただの勘違いってことなのか?

 疑問だったが、ひとまず先へ進むことにして……やがて、広い空間に出た。


「道が分かれてますね」


 ソフィアの言うとおり、道が四本に……いや、それだけじゃない。

 明かりの光量を増す。すると、


「……広大ですね」


 ソフィアが感想を漏らした。


 道が分かれているだけでなく、広大な空間に多数の道が存在し、なおかつ奥へ行くごとに下へ下へと向かっている。この空間内をくまなく探すのは骨だが……ふむ、どうしようか。


「ルオン様、呼び掛けてみますか?」

「うーん……そうするか。魔物が声に気付いてこっちに来ても倒せばいいだけだし」


 しかし、ここで一つ気になることが。俺はレスベイルを生み出して周囲をまず探ってみるが……そもそも魔物が全然いない。


「ここまで一度も遭遇していないのが気になるな……アルト達が倒したという可能性もあるけど、瘴気が存在しているから新たに生み出されてもおかしくないんだけど」


 疑問は色々とあるが……とりあえず進むか。とはいえ道なりに歩くのも非常に面倒。よって、魔法を使い空を移動することに。

 で、その途中で立ち止まって呼び掛けてみる。


「おーい! アルトー!」


 が、反応無し。このフロアにはいないということか?

 何度どか移動して同じように呼び掛けてみるが、駄目だ。別のフロアか何かに繋がる通路を発見したので、そっちに行ったのか?


「進みましょうか」

「ああ……先へ進んで同じように呼び掛けるしか――」


 そこまで言った時だった。突如、ゴゴゴ、という地鳴りのような音が響き、ほんの少しだけ洞窟内が揺れる。


「……地震?」

「唸り声のようにも聞こえましたが」


 俺の呟きにソフィアは律儀に答えた。


「この洞窟内にいる最上級の魔物、でしょうか」

「……その可能性はあるな。ふむ、こういう魔物がいない場所でアルト達がいつまでも留まっている可能性は低そうだし、魔物のいる場所へ向かおう」


 とはいえ、さっきの声がどこからなのかイマイチわからない……と、ロミルダが一定方向を指差した。


「あっちだと思う」

「わかるのか?」

「なんとなく……」


 他に指標もないし、ロミルダの言葉に従ってみよう。俺達はそちらへ行くと、ぽっかりと空いた通路に出くわした。

 なんとなく耳を澄ませてみる……と、今度はドン、と重い音が響いた。この道からだ。


「今度は声じゃないな。移動でもしているのか?」

「そんな気がします」


 ソフィアも同意……よし、と心の中で呟き、俺は意を決し中へと踏み込む。

 少し歩くと、またも音。俺達が来たから、という雰囲気でもなさそうなんだが……もしかして、誰かが戦っているのか?


「少し急いだ方がいいかもしれないな」


 呟いた矢先、再び振動……確実に近づいているな。

 俺達は自然と早足となり、周囲を警戒しながらも通路を突き進んでいく。すると振動と音がドンドン近づいていく。


 通路は長く、音が近づくにつれ詳細がわかっていく……どうやら魔物が戦っているらしい。相手にしているのは、やはりアルト達だろうか?

 その時、一際大きい振動が洞窟内に生じた。魔法か何かだろうか……推測しながらひたすら突き進んでいると、とうとう魔物がいる場所に到達した。


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