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賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

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方針決定

 翌日から、俺達は動き出す。やることは極めてシンプル。魔物を見つけたら倒す。ただそれだけだ。


 魔物が集まる集積点というのはこの大陸にいくつも点在しているのだが、港町近くにもそうした場所がある。とはいえそう大規模なものではない。

 中には大陸の地図で見ても相当大きい場所も存在するが、基本的に小規模な場所が多い。そうした所には絶えず魔物が生まれるため、宴が行われる今では丁度いい演習になる。


「お、いたな」


 街道から逸れ森へ赴くと、魔物を発見。見た目虎みたいな魔物……ただし、色は青色。


「あれ、強いのでしょうか?」


 疑問を呈するソフィア。うーん、とりあえずシリーズ二作目には登場しなかったな。となるとソーシャルゲームの方で出てきた魔物なんだろうけど……詳しく知らないんだよな。


 ゲームの知識が使えるかな、とちょっと期待したのだが、どうもこの二十年で魔物が様変わりしているみたいだ。理由としては天使の戦いをきっかけにして、この大陸に存在する魔力にも影響が出たから……という感じだろう。


「とりあえず魔法の道具から警告はないから、戦ってみよう」


 バッジの光が白くなる。ということはこいつを倒せば武勲を得られるというわけだ。


「まずは俺から」


 宣言すると、虎もこちらに気付いて突進を仕掛けてくる。俺は右手から剣を生み出し、対抗すべく構えた。

 まあ、正直なところ構えなくともまったく問題にならないけど……真っ直ぐ突き進んでくる魔物に対し、俺は容赦なく剣を薙いだ。


 結果、魔物の頭を一撃で両断……うん、当然こうなるよな。


「次は私が」


 ソフィアが前に出る。似たような魔物が出現したので、彼女はそれを迎え撃つ。

 またも突撃してきたわけだが、彼女はそれを一太刀で撃破――ちなみに剣は魔王との戦いで使用していた霊鋼の剣。それで問題なく対処しており、この分なら神霊の剣は必要なさそうだな。


 で、最後にロミルダだが……彼女は容赦なかった。


「はっ!」


 そういう掛け声と共に放たれた紫色の光は、群れを成していた魔物達へと直撃する。

 ズガガガ、という近所迷惑な炸裂音が周囲に響く。魔物の中には断末魔のような声を上げるやつもいて……気付けば全滅していた。


「町の周辺にいる魔物なら、ルオンさん達には問題ないわけだ」


 リチャルが感想を述べる。


「この調子ならすぐにでも強力な魔物と戦えるようになると思うが……」

「ひとまず午前中は魔物と戦って、どの程度武勲が溜まるのかを確認しよう」


 俺の言葉に、ソフィアやロミルダは頷く。


「それじゃあ奥へ進もう」

「ルオン様、最深部まで行くんですか?」

「港町に近い場所である以上、最深部といっても大した魔物はいないだろ。それに、奥へ行って魔物の出現を止められるというわけでもないし」


 もし魔物の出現を止めたいなら強力な魔法で封じるしかないのだが、範囲も大きく現実ではかなり厳しい。


 それに、そういうことをすると大地に存在する魔力自体に歪みが出る。魔王が襲来し大陸崩壊の魔法を使おうとしたシェルジア大陸においても、大地に仕込まれた力を完全に消すのは難しいのと同じで、無理矢理抑えると弊害だって出てくる。

 よってこういうことをやる場合は色々と調査も必要なわけで……ま、俺達がどうにかできるような話ではないので、考えないことにしよう。


 で、俺達は遠慮無く奥へ進んでいくわけだが――魔物はバラエティも豊富。ゴブリンに始まり狼や猿、蛇に先ほどの虎みたいな魔物と、動物型も多い。

 人間型もいるにはいるが、まあ珍しい方……ゲームとこれが同じなのか判断つかないけど、俺達にとっては基本全部一撃なので大した差ではない。


「いやあ、爽快だな」


 片っ端から魔物を消し飛ばす俺達を見て、リチャルは興味深そうに呟いた。


「そういえばルオンさん、この大陸に存在する魔物……上位にいる存在は、どれだけ強いんだろうな?」

「……さあな。けどさすがに魔王より強いということはないだろ」


 この辺りは実際戦ってみないとわからないけど……ソーシャルゲームを基としているのなら、果てが無いような気もする。ただ、さすがに魔王級の能力を持っている魔物は、さすがに想像できないな。


 まあこの辺りはいずれわかること……考えながらも周辺にいる魔物を片っ端から倒していく。俺が剣で近くにいた蛇を倒せば、ソフィアが雷光を放ち狼を数頭まとめて貫く。さらにロミルダが紫色に輝く矢を放つことで、着弾点にいた魔物が複数消えていく。

 ……魔物の撃破数は、今のところロミルダがトップかな。俺やソフィアと違って容赦がないし。


 そして、朝から魔物討伐を始めたわけだが……昼前くらいに一度切り上げて町まで戻る。さて、とりあえず結果は――


「はい、現在このような数値です」


 受付の女性に数値が記載されている紙を渡される。ふむ。


「……まあまあかな」


 上位百人には遠く及ばないけど、数値的にはまあそれなりだ。


「魔物の質が高くなれば、獲得できる武勲も増えるわけだから……俺達の実力ならそういう力の大きい魔物を多量に狩る、というやり方もできそうだな」

「とはいえ、他の参加者だって魔物と毎日戦っていますよね」


 ソフィアが言う。うん、その通り。


 町にある掲示板は、集計期間が決まっているのか昨日と変わっていない。一定の期間を経て数値が加算され、新たな順位が公表されるのだろう。

 当然、上位の人間だって悠長にしているわけがなく、次回更新までに数値も上がっているだろう……高レベルの魔物と戦っているなら、当然俺達と差は開くばかりだ。


「それに、町で数値の集計を行わずひたすら魔物の巣に入り込んで戦い続けている、なんて人間だっているかもしれない……つまり、ふと掲示板を見たら突然知らない名前が出てくるなんて可能性もある」

「えっと、つまり?」


 首を傾げるロミルダに対し、俺は頭をかきながら述べる。


「もし上位……一位を狙うとしたら、色んな可能性を考慮し、誰も追随できないような圧倒的な武勲を得る方がいいって話」

「やり方はどうであれ、まずは掲示板に乗ることから始めないといけませんね」


 と、ソフィアは語る。俺は頷き、


「戦いの過程で天使と遭遇することができたらその場で話をして、とやり方を変えてもいい。ひとまず天使のお近づきになるためには、強力な魔物を討伐して目に留まることだ」

「ルオンさん、エーネさんからもらった紹介状は使わないのか?」


 ここでリチャルが声を上げた。


「お偉いさんに出会って話をつける、というのも一つの手段だが……」

「それを使うにしても、ある程度武勲を得た後の方が色々と効果的じゃないか?」

「ああ、確かに」


 彼も納得の表情。よって、


「最寄りの町まで今日中にいけるから、ひとまずそちらへ向かおう。で、大規模な魔物の巣がある場所へ赴き、魔物を狩る。天使と遭遇またはお偉いさんからお呼びが掛かった場合は、色々と話をする」

「決まりですね」


 ソフィアは言うと、町の外へ繋がる道を指差した。


「早速向かいましょうか」

「ああ。ロミルダは平気か?」

「大丈夫」

「リチャルは?」

「俺はそもそも何もしてないからな……何かできることを考えないといけないな」


 肩をすくめる彼は、苦笑した後に空を見上げた。


「ま、今までの戦いと比べればのびのびとしているから、いいんじゃないか?」


 ……そうリチャルは言うけれど、実際のところはどうなんだろうな。


 こうした魔物討伐は確かに人々のためになる。そこは間違いないが……こういう大規模な「祭り」とでも言うべき状況は、色々裏で立ち回るには十分すぎる出来事だ。

 ま、もし何かしら事件に遭遇したら、俺達が解決すればいい――そう心の中で決め、俺達は町を出た。


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