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賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

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検証結果

 目先の悪魔が消滅した直後、ソフィアは俺に首を向け礼を述べた。


「ありがとうございます」

「援護に入るのは当然だ。さて……」


 俺は森から出てくるレッサーデーモンに目を向ける。

 まだまだ出てくる。この戦いはしばらく続くようだと心の中で察した。


「テオルさん達が戻って来るまで持ちこたえろ!」


 用心棒の一人が声を上げる。それに他の面々が声を出して応じ、迫るレッサーデーモンを迎え撃つ。

 俺もまた、近づいてくるレッサーデーモンに対処。先ほどと同様『ホーリーショット』で部位破壊を行い、剣戟でトドメを刺す。このやり方も慣れてきた。動きに違和感だってないだろう。


 一方ソフィアはキャルンと組んで悪魔と戦っている。魔法で牽制しつつ近づいてきたところをキャルンと共に――とはいえ短剣を武器とするキャルンは決定打を与えるというよりはソフィアの援護を主体としており……初めて組むにしては、動けている。


 他の用心棒達はレッサーデーモンの動きにも慣れたようで、二度目以降の激突は最初と比べてもずいぶん洗練されていた。この調子ならもう大丈夫――と思っていた時、さらなるレッサーデーモンが。


「キリがないな……!」

「焦るな、無限に湧き続けるわけじゃない」


 俺は焦る用心棒達を言葉でなだめつつ、新たに魔法を放つ。足を撃ち抜き動きを止めた瞬間、ソフィアの魔法が悪魔の体を貫いた。

 用心棒達も気を奮い立たせ戦う……そうした光景を見ながら、俺はレッサーデーモンと戦い続けた。






 それから程なくして――悪魔の出現が止まる。掃討したのだろうと誰かが述べた時、テオルが戻ってきた。

 状況を説明すると、彼は申し訳ない顔をする。


「すみません、罠だと気付いていれば……」


 とはいえ彼らも相当激戦だったらしく、テオルだって負傷していた……相手の策がわかったとしても、おそらく引き返すことは難しかっただろう。


「中の敵は全て倒しました。首領は捕らえ、このまま町へ赴き兵士達に身柄を引き渡すことに」

「俺達は?」


 問い掛けると、テオルは洞窟前にいたキャルン達を一瞥し、


「先に戻っていてください。それと外にいた者達も先に」


 ――というわけで、俺達はキャルンなどと共に用心棒の拠点へと戻ることになった。その道中、キャルンが俺達に干渉してくる。


「強いね、あなた達」

「そうか?」

「悪魔相手に単独で戦える人はそういないし……ルオンさんは動きが的確で、ソフィアさんはすごく剣筋が綺麗だった」


 あの戦闘中、結構俺達のことは見ていたようだ。


「そうした力、どこで手に入れたの?」

「訓練の成果だよ」

「……訓練、か」


 頭をかきつつ何事か考え始めた様子のキャルン。それっきり話さなくなったため、俺は思考を切り替え今回の戦いのまとめを心の中で行うことにする。


 まず、俺やソフィアはゲームの主人公ではないが、イベントフラグを立てた場合きちんとそのイベントが発生する。そして変な行動をしなければイベント通りに話が進むというのは間違いなさそうだ。


 この二つがわかったことは非常に大きい。メインシナリオ以外のサブイベントに関してもゲームと同じような流れとなるため俺としても色々と予測が立てやすい……問題は、イベントフラグをいつどこで踏むかわからないということ。


 今回の件についてはキャルンと出会いそのまま流れで俺達は関わることになったわけだが……こういうことが今後頻発するのであれば、何か対策をしないといけないだろうか。といっても突発的に生じた場合どうしようもないわけだけど……うーん、遭遇するイベントによって判断するしかないか。


 ちなみに使い魔の報告によると、フィリやエイナはきちんと他のイベントをこなし仲間を加えている。その辺りのことも加味にしつつ、今後どう立ち回るか決めていくとしよう。


 色々と考えている間に俺達は拠点に到着。テオル達を待つことにする。現在の時刻は夕刻前といったところ。テオルが戻って来たら話をして、その後宿場町で休む……そんな算段を立てていた時、彼が戻ってきた。


「私の部屋に」


 そう言って俺とソフィアを砦の中へ案内する。最初話し合った部屋に到着と同時、テオルは俺達に礼を述べた。


「まずは礼を。あなた方の協力がなければ、大きな犠牲が生まれていたことでしょう」

「いえ、俺達はあくまで皆さんの支援を行っただけですから」


 手を振りつつ言及。テオルはそれに微笑を浮かべた。きっと「御謙遜を」とでも言いたいのだろう。

 しかし彼は、別の事を口にする。


「残党はまだいますが、首領を引き渡したことで盗賊団も自然と瓦解するでしょう。私達は以後周辺の警備を行いつつ、信頼回復に努めていきます」

「それがいい」

「さて、報酬を支払わなければなりませんが……それ以外に、一つ提案を」

「何か?」

「もし私達の力が必要であったならば、声を掛けてください」


 ゲーム上でもこのセリフを主人公達へ告げている。ひとまずゲーム通り仲間になってくれるらしい。

 しかし、俺達にとっては必要ない……思いつつ、俺は提言する。


「今後、魔王の影響により魔物が強くなるでしょう。魔物の撃破に注力し、力をつけてもらえれば……それが、魔王達を倒すことに繋がるはずです」

「魔王、ですか……魔族や魔王との戦いにどれだけ影響を与えることができるかはわかりませんが、魔物との戦いは最重要課題。今後、私達も強くなる必要があるのは確かですね」

「それと、もう一つ」

「何でしょうか?」

「もし魔王や魔族に挑む人物が現れ、テオルさん達の力が欲しいと考えていたならば、是非とも協力してあげてください」

「わかりました」


 承諾……これならたぶん、主人公達が訪れても受け入れてくれるだろう。


 というわけで、俺達は報酬を受け取り砦を後にする。これにてイベントは終了。色々と検証もできたし有意義だった。今日は宿場町に戻って休むことにしよう。


 砦を出た時、俺は一つ思い出す。ソフィアに質問したいことがあった。


「ソフィア」

「はい」

「キャルンと会話していた時、何か感じたのか?」


 問い掛けに対し、ソフィアは少しばかり驚いた様子。


「……気付いていたのですか」

「もしかして、というくらいの気持ちで質問したんだが……図星みたいだな」

「はい。その、上手くは言えないのですが」


 と、ソフィアはどこか困った顔つきで述べる。


「キャルンさんが今後、魔族との戦いに参加していくのでは……そう思いまして」

「彼女が? ちなみにテオルさんは?」

「彼もまた、同じように……ですが、キャルンさんの方が私としては強い印象を受けました」


 これが「何か」の正体だろうか……? いや、そう結論付けるのは早計か。


 しかし、その「何か」を感じ取ることができるのは理由があるのか? ソフィアが賢者の血筋だから? 例えば人の潜在能力を見極める能力とかが無意識の内にあって……けど、そうした能力だと仮定したら、キャルンの能力に言及することはあっても魔族との戦いに加わるなんて具体的な予測はしないだろう。


 うーん、ソフィア自身説明し難い様子なので、何かしらあるということだけ記憶しておくか。

 頭の中で結論を出しつつ、俺はソフィアと共に町へと向かう……明日から旅を再開する。今日はそれに備えゆっくり休もうと心の底から思った。


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